堂山物語 第25話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第25話

中学時代の忘れられないヒトで近所のヤクザのヒトがいる。


僕の一つ上のイキったナガトさんに説教する為に

ヤマダ先生がつれてきたヤクザの親分の組のヒト。


出会いは僕らが溜まり場にしていた公園だった。


たぶん一緒にいたのは僕とヒデとノブだったと思う。


それこそ名犬ジョリーのようなデッカイ犬を連れて

現れたのがカシラのおっちゃん。(犬の名前は五郎)


おっちゃんの周りのおっちゃん達が

「カシラ!カシラ!」

と呼ぶので「カシラのおっちゃん」


今でこそ「カシラ」とは極道の組織での

「若頭」という組長に次ぐナンバー2のヒトの事とわかる。



カシラのおっちゃんはその公園の前のパン屋さんで

散歩の休憩時間にと五郎のサラミを買っていた。


僕らは、金もなくやる事もなく意味も無く公園に溜まっている。


こうして僕らとカシラのおっちゃんは何時からしか仲良くなっていく。




おっちゃんは学校の先生とは違う意味で色々面倒を見てくれた。



僕らがイタズラで市民会館の池から

パクってきたアヒルの処理に困った時…

組事務所のペットとして心よく迎えいれてくれた。

(たしか名前はゴエモン。なのに卵は産んだ…)



そういえば犬の五郎も五郎なのにメスだった。



お腹をすかした僕達に近所のうどん屋でカツ丼を食わしてくれた。

僕は、このカツ丼の味は今なお忘れる事が出来ない。



バナナの皮で人間は本当に滑るのかという実験にも付き合ってくれた。

結果は、おっちゃんが踏んづけて滑った身の方が滑るという事を知る。



生まれてはじめてのパチンコに一緒に行ってくれた。

西陣の春夏秋冬という台で4連チャンして、おっちゃんまで興奮する。



とりあえず楽しかった。


おっちゃんといればわくわくした。







そのカシラのおっちゃんが教えてくれた事が



「1日1日を精一杯生きること」



普通の人間は明日死ぬとは思っていない。

数十年なり生きるつもりでみんないる。



極道の世界はそれこそ明日に鉛弾の標的になるかもしれない。

明日、明後日と人間が生きてる保障なんか何処にも無い。



「だから今日を精一杯生きよう」



おっちゃんはいつも僕らに言ってくれた。













そして、おっちゃんは数日後に組の内部抗争で射殺される。



「だから今日を精一杯生きよう」

おっちゃんが命を懸けて教えてくれた言葉。




おっちゃんの事件は

僕に命というものを

考えさせられた事件だった。




今でも、おっちゃんに食わしてもらった、あのカツ丼を食べると

カシラのおっちゃんが言ってくれるような気がする。

「だから今日を精一杯生きよう」

でも僕は今、精一杯生きてるのだろうか?

カシラのおっちゃんは凄い事を教えてくれたのかもしれない。


おっちゃんが所属した組があった組事務所ビルは

現在、売り物件になっているが

おっちゃんとの思い出は忘れることは絶対にない。


続く