Q.ゲームソフトは著作物の種類でいうと何の著作物にあたるのでしょうか?「ゲームの著作物」というものはあるのでしょうか?


A.著作権法上「ゲームの著作物」というものはなく、ゲームソフトほとんどが「映画の著作物」に該当します。







【著作物の種類】


今回から、ちょこっとゲーム関連の著作物について書いてみたいと思います。



プレイステーションやWiiをはじめ、古くはファミコンなど様々メーカー・機種から発売されたテレビゲームソフトがございますが、じゃあこれらのゲームソフトの著作権ってどのように保護されているのかということについて、今回は書いてみたいと思います。



まず、著作権というものは著作物を保護するための権利ですので、著作権で保護するには対象物が「著作物」でなければならないのです。



で、この著作物は著作権法で種類が定めらております(著作権法10条)


音楽の著作物、言語の著作物、美術の著作物、映画の著作物、プログラムの著作物・・・・


等と種類があるのですが、「ゲームの著作物」というものは著作権法上、定義されておりません。そこで、じゃあ何の著作物に該当するのかという問題が生じます。







【ゲームは何の著作物にあたるのか~パックマン事件~】



ゲームが何の著作物に該当するのかということについて、最初の裁判例である「パックマン事件」の判決をはじめに紹介したいと思います。



このパックマン事件とは、昔懐かし「パックマン」というゲーム機の製造販売元であるナムコが、ナムコに無断でパックマンの複製物を喫茶店に提供し、客に利用させた被告を訴えたものです

(東京地判昭59・9・28)


東京地方裁判所は、以下のように判示したうえで、パックマンを映画の著作物と認めました。



・パックマンは、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されている


物に固定されている・・・ROMの中に電気信号として取り出せる形で収納されていることにより固定されているといえる


・パックマンは、著作者の精神的活動に基づいて、その知的文化的精神活動の所産として産み出されたものであり、著作物性を有すると認めることができる




平たく言うと、「対象のゲームソフトのプレイ画面が映画のような表現方法であり、プログラム等がROMに収録されていて(カセットやDVDなど)、著作物性があれば映画の著作物と言える」という感じでしょうか。ちょっと平たくし過ぎかもしれませんが・・・



このパックマン事件の判決以降、テレビゲーム及びビデオゲームは映画の著作物であるという判決が定着していきました。



他にも、以下のような理由でテレビゲームソフトを映画の著作物であるとした判決もございます。(ネオジオ事件 大阪高平10・12・21)



「テレビゲームソフトウェアに蓄積された情報に従ってゲーム機により受像機に映し出される映像の動的変化又はこれと音声によって表現されるものは、そのそれぞれがいずれも映画の著作物として認められるための要件を満たしており、映画の著作物に該当する」



上記のように、基本的にはゲームソフトは映画の著作物であると裁判で判示されるケースがほとんどですが、中にはそうでないものもあったりして・・・それは次回に取り上げますが。







【映画の著作物とそうでない著作物との違い】


違いを以下にあげます。



・保護期間

映画の著作物は公表後70年間は著作権が存続するのに対し、その他の著作物は著作者の死後50年間が著作権の存続期間となっております。


・映画の著作物には頒布権がある

映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利



保護期間がその他の著作物とは異なるという点がやはり大きいですね。


次回は、「三国志Ⅲ事件 」を題材に映画の著作物には該当しないとされたゲームソフトを取り上げてみたいと思います。



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