名古屋上町(うわまち)言葉という絶滅寸前の言葉があります。 

いやもうすでに絶滅したかもしれません。
元々名古屋城内の御殿言葉で、武家や豪商で使われていました 。
後にちょっとバージョン違いで芸者さんなんかも使ったようです。

 

名古屋上町言葉は、

京都の「京言葉」と大阪の「船場言葉」に並ぶ日本三大美方言なんですよ。

「いらっしゃい」を正調名古屋上町言葉で言いますと 
「ようおいであそばしてちょうだいましたなも」になります。 
「遊ばす」プラス「頂戴」ですわよ 。

「待って」は 
「お待ち遊ばして頂戴ませなも」です 。
やったら長い、フランス語みたい 。




「こいさん、 頼むわ。―――」 
鏡の中で、 廊下からうしろへ這入つて来た妙子を見ると、 自分で襟を塗りかけてゐた刷毛を渡して、 其方は見ずに、 眼の前に映つている長襦袢姿の、 抜き衣紋の顔を他人のように見据ゑながら、 
 「雪子ちやん下で何してる」 
と、 幸子はきいた。 
 「悦ちやんのピアノ見たげてるらしい」 
―――なるほど、 階下で練習曲の音がしてゐるのは、 雪子が先に身支度をしてしまつたところで悦子に摑まつて、 稽古を見てやつてゐるのであらう…… 
  「そやつた、 あたし 『B足らん』 やねん。 こいさん下へ行つて、 注射器消毒するやうに云うといてんか」 
ピアノの音が止んだと見て、 妙子は写真を抽出に戻して、 階段の降り口まで出て行つたが、 降りずにそこから階下を覗いて、 
  「ちよつと、 誰か」 
と、 聲高 (こわだか) に呼んだ。 
  「―――御寮人 (ごれうん) さん注射しやはるで。―――注射器消毒しといてや」…… 

                       谷崎潤一郎 『細雪』 上巻 一 


冒頭のシーンを名古屋上町言葉で再現すると大体こんなかな。

「幸さま、お願いするわぇも」 
「雪さま下で何しておいであすばす」 
「悦さまのピアノ見ておいであすばすようだわなも」 
「そうだわなも、わたし『B足らん』でござあますでなも、あんたさま下へ行ってちょうだいして注射器を消毒してて言ってくださりませんかなも」 
「ちょっと、誰かおいであそばせんかなも」 
「親奥様お注射しあすばすでなも。注射器消毒してちょうだいあすばせ」 

そもそも名古屋の上流で使われてた言葉が後のざあます、あそばせ言葉になったってわかりますね 。

ただ今世間で「名古屋弁」と言われているものは下町の下町、 
ごくごく下層の人々が使った「長屋弁」ですのよ 。
このこと、よぉっく覚えておいて頂戴遊ばせね。

ついでに名古屋下町長屋弁でも 
「あんた、ちょっと頼むわ」 
「雪ちゃん下で何しとる」 
「悦ちゃんのピアノ見とるみたいだがね」 
「そうだわ、あたし『B足らん』だで。あんた下へ行って注射器消毒してって言ってこやあ」 
「ちょっと、だれかおらんかね」 
「奥さん注射するで注射器消毒しやあ」 

上町では言葉を重ねて、下町ははしょって、ですね。 

 

 

茶の湯Style 紅雲庵カフェでは

綺麗な上町言葉は使えませんが長屋弁も使いません。

ごく一般的な言葉でお話しますのでご安心ください。

 

茶の湯Style 紅雲庵カフェ

五月の茶の湯Style 紅雲庵カフェでは端午の節句のいわれや祝いの食べ物、

しつらえ等についてお話しようと思っています。

いままで茶の湯に縁が無かった方、お稽古中断中の方、和のあれこれに興味がある方、

ぜひお出掛けください。


 

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広く和の素敵なモノやコトを茶の湯を通してお伝えします。

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