霧に棲む悪魔[第7週]|戸次重幸はチェロを弾けない | テレビドラマに夢中!

霧に棲む悪魔[第7週]|戸次重幸はチェロを弾けない

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2009年2011年4月11日 -
平日13:30 - 14:00(30分)
放送期間 2011年4月11日 -
制作局 東海テレビ 国際放映
企画:西本淳一(東海テレビ)
原案:「白衣の女」ウィルキー・コリンズ
脚本:金谷祐子
音楽:羽岡佳
広報:渡辺秀彦(東海テレビ)、山本章子(東海テレビ)
演出:松田礼人 (ドリマックス)、木内健人(5年D組)
プロデューサー:風岡大 (東海テレビ)、河角直樹(国際放映)
制作:東海テレビ、国際放映
主題歌:倉木麻衣「もう一度」(NORTHERN MUSIC)

* cast
龍村圭以 - 入山法子
白い服の女 - 入山法子(2役)
北川弓月 - 姜暢雄
日浦晴香 - 京野ことみ
御田園陽一 - 戸次重幸
龍村玄洋 - 榎木孝明
蓮見依子 - 中田喜子
影山仁 - 大沢樹生
木島誠吾 - 鶴田忍
荻野克次 - 逢坂じゅん
萩野美知子-広岡由里子
対馬諭吉 - 斉藤暁
安原浅子 - 岡まゆみ
平木麻里 - 田島ゆみか
矢島健一


テレビドラマに夢中!-霧に棲む悪魔

【月】 玄洋は陽一に「ゴシュは死んだ」の謎を解いたと告げる。異物混入事件で陽一に借りのある克次は悩み続けていた。その夜、晴香の部屋に弓月が現れ、ふたりは圭以の死の謎を追うことになる。【火】 白い女の病院だった研修所の企業は、陽一の会社と業務のつながりがあった。また白い女の母親がいた寺には影山が手を回していた。晴香は弓月と連絡を取り合うために携帯電話を買う。弓月は圭以の死亡を確認した医師を調べるため、陽一のマンションを訪ねて死の間際の様子を聞き出す。【水】 圭以の死亡診断を書いた桑原医師によれば、最初駆けつけたとき、圭以は意識をなくしていたが、脈もあり、心臓も動いていた。陽一に止められ、救急搬送はせず注射を打って様子をみることにした。しかし朝方再び呼ばれた時には心肺はすでに停止、外傷もなかった。一方、晴香は木島弁護士と宮下に借金の肩代わりを頼みこみ、なんとか検討してもらえることに。晴香は色仕掛けで影山の裏切りを促すが、拒まれた。玄洋は陽一の秘密を教えるから今夜部屋に来るようにと晴香に命じる。深夜階段をのぼる晴香を影山が見送る…。【木】 玄洋は晴香に薬を飲ませて手篭めにしようとする。その時、晴香の携帯が鳴り、弓月が部屋に飛び込んできた。玄洋は陽一の秘密を教えるから晴香は置いて行けと言うが、弓月は晴香を連れて屋敷を出て、自分の部屋に連れていった。翌日、玄洋は訪ねてきた陽一の手相を見て、豊臣秀吉や徳川家康、石川五右衛門と同じ百握りの相だと指摘する。陽一は玄洋の部屋に隠しカメラを取り付けた。一方、弓月と晴香は偶然、安原霧子の主治医・森田がテレビに映っているのを発見する…【金】 森田はとある病院の院長だった。弓月と晴香は院内の地図を作り、森田の行動スケジュールまで調べ上げ、森田のいない金曜の昼に潜入する。看護スタッフに化けた弓月は知り合ったナースの手引きでついに白い女の邂逅する。






中田喜子演じる蓮見依子というのは何者として登場したのだったか。
レストラン「ロータス」のオーナーで富裕層と付き合いがあるのはわかるが、
10億という金を戸次重幸に貸すほどの金持ちであるにもかかわらず、
その身分が明らかではなく、龍村家とのかかわりもよくわからない。
当初、入山法子にも戸次にも、
10億を知人が用立てる口利きをするだけと言っていたはずである。
なぜそれが気になるかというと、
戸次が蓮見依子の息子なのではないかという気がしてきたからである。

榎木孝明は、「ゴシュは死んだ」という言葉の意味を知っていることを示すため、
ティーカップのもち手をぐるりと左側に回してみせるた。
すると戸次は顔色を失って暴れ始め、榎木のノートPCを粉々にしてしまった。
ティーカップの動作はフランス語の左(gauche)のことを意味するのだろう。
宮沢賢治の童話の主人公「ゴーシュ」は左利きではないが、
その名はgaucheの「不器用」という意味から取られたと言われている。
つまり榎木が言いたいのは「セロ弾きのゴーシュ」のことであった。
戸次は、かつて姜暢雄と朝までワインを飲み交わした際に、
チェロ演奏家になる夢を諦めたいきさつを語っていた。
16年前の大火災によって背中を痛めたためである、
ゴシュは死んだとは、この火災でチェロ弾きの御田園陽一が死んだということを意味しているのだろう。
(ちなみに、この「大火災」は、当初、阪神大震災のことだったが、設定変更されている)
御田園陽一は死んでいた、つまり戸次重幸は贋者である。
(本物の御田園陽一が左利きだったかどうかはわからないが、
 左利き用のチェロというものは、特注しないかぎりないらしい)
そこで戸次が誰なのかということになり、
冒頭に書いた、中田喜子の息子なのではないかという予想が生じるのである。
また、安原霧子が「ゴシュは死んだ」という言葉をどこで聞いたのかという問題もある。
霧子の母親が龍村家で家政婦をしていたのは20年以上も前とされており、
火災よりも前なのである。

この物語には二つのボディロンダリングがあると思う。
ひとつは戸次重幸だが、もうひとつは入山法子によるものである。
龍村圭以は死んだとされているが、
病院で怯えている白い女は安原霧子ではないはずである。

さて、榎木孝明はタンポポ茶まで用意したが、
再び京野ことみを手篭めにすることに失敗してしまった。
タンポポ茶は卵胞刺激ホルモンの分泌をよくする効果があるらしいが、
榎木はさらにこれにしびれ薬のようなものを調合して、京野の自由を奪っていたが、
現れた弓月に京野をさらわれてしまった。
京野ことみの強姦に失敗するのはこれで二度目であり、
榎木は大沢樹生に対した際と同様に、
ハプスブルクのサーベルを取り出したが、役に立たなかった。
榎木が龍村の血にこだわるのは、
龍村ファームの土地に隠された秘密が関係していると思われる。

姜暢雄がきさらぎ病院・分室と思っていた建物は、精密機器メーカーの研修施設だった。
この会社が太陽光発電事業にかかわっていることから、姜は戸次重幸を連想する。
戸次は世界最大の太陽光発電事業に出資しており、
10億円というのもそれに必要な金だった。
戸次と入山法子の新婚旅行先はアラブだったのも、この契約に関係していた。
現実でも、アラブ首長国連邦が太陽光発電所を建設しているが、
日本でこうした話題に関係があるのは日立など大企業であって、
戸次の会社のようなネット企業が太陽光発電にどう関わっているのかは謎である。
そもそも戸次の会社は一度も映らないし、
深夜まで帰ってこないわりに何の仕事をしているのか、どうもぴんとこないのである。

☆「霧に棲む悪魔」の原作「白衣の女」(ウィルキー・コリンズ、岩波文庫)
上巻(¥798)・中巻(¥903)・下巻(¥903)

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他の回の「霧に棲む悪魔」
第6週|時代錯誤の一大ロマン
第5週|誰と誰が味方で敵?
第4週|姜暢雄さえ出てこなければ面白くなる
第3週|昼ドラのサービス精神
第2週|姜暢雄がブキミ過ぎる
第1週|京野ことみだけが救い

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