夕方、

駅前に買物に出た。


帰り、歩いていると、

後ろから、

なにやら男性の声で

歌声が聴こえてきた。

「今~、私の~、、願いごとが~音譜

叶うならば~音譜

もの凄いでっかい声で、

なにか「節」のようなものも

つけている。


30代後半のサラリーマンと

思しき男性。

大声で歌いながら、

自転車で、

俺を追い抜いていった。


あれ ?

何の曲だっけ ?

ああ、

『翼をください』か。


なんだか、

もの凄く魂が入っていて、

その人の心の奥底から

湧き上がってくるような歌声だった。


「この大空を、翼を付けて、

飛んでいきたいな~音譜

という部分は、

ドップラー効果によって

男性が進んで行った道の

はるか彼方で聴こえた。

そして、

その道の先は下り坂なのだった。