書店でブックアドバイザーとして働く波山個間子(はやまこまこ←人名です)さん。読書の量と本の知識なら「青ひげブックス」随一という女性です。
書店員 波山個間子 (1) (it COMICS)
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2017年2月発行
お客さんに本の解説をして、感極まって泣いたりしていますが、その作品が向田邦子さんのエッセイです。
来店した女性が「探してもらいたい小説があるんだけど」と男性書店員に問いかけます。その女性いわく、タイトルがわからない、作者も忘れてしまった。以下、女性の説明です。
ずっと昔に息子が小学校の高学年か
中学生くらいのときに
勉強を見てやって国語の本に載ってたから
もう二十年も前に読んだものなんだけど
手紙にね
マルとかバツとか書く話なの
あとの内容はほとんど記憶になくて
ほかに覚えていらっしゃることはありませんか?と訊かれて
戦争の時代のお話なのよ
昨日息子と話してて
お母さんは教科書読んで
ときどき泣いてたって言われて
急に思い出して
その話読んで
私泣いちゃったのよ
二十年前
涙もろいの 私
また読みたいなって
新入りの男性書店員は、翌日出勤してきた波山さんに訊いてみます。「もしかしたら お客さんの勘違いということはないでしょうか?」と言いつつ探し当てたのは『眠る盃』収録の「字のない葉書」。
新装版 眠る盃 (講談社文庫)
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勘違いというのは、「手紙」ではなく「葉書」、「小説」ではなく「エッセイ」という点です。質問者にとってはそこはまったく重要ではないですね。案内する側にとってはかなり重要なのですが。
来店した女性に波山さんから、内容を説明します。
「字のない葉書」のストーリーは4ページに渡り描かれています。
説明した後、波山さんも涙をこぼしてしまい…
新入り君はびっくりします。波山さんが泣いたことではなく、あれだけの情報でよく正解がわかったことに。さらに「たった数ページで人を感動させる作者…向田邦子って凄いなと思いました」と言うのでした。
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