八重歯のめざまし天使 杉崎美香
木管楽器のような芯の詰まったリリコ・スピントの低音美声に小柄で安定感の
あるボディ、八重歯が特徴的なキュートなルックスで、アナヲタの支持を集め
つづけている今世紀アナウンス界最高峰に立つDIVA。2001年信越放送入社
から2年半が経った日に突如として東京進出、早朝の帯番組「めざにゅ~」の
メイン司会に抜擢されたとき、「杉崎とは誰だ!」と東京のアナヲタに衝撃が走
ったが、見事に杉崎は期待に応え同番組を押しも押されぬフジの名物番組へと
成長させた。
信越放送時代の杉崎はラジオ・夕方のワイド番組などでラーメンリポーター
を務めるなど細々と活動していた。新人のころ、三島さやか、坂橋克明、
舩戸導洋など信越きっての精鋭アナウンス陣に鍛えられ、杉崎の最大の
武器である発声は、同期の生田明子(こちらもアナウンス界を代表する美声
アナ)と共に励んだ放送局の屋上での血の滲むような発声練習の賜物だと
いう話が残っている。
キャンペーンソング「元気だDANCE!」を生田や先輩アナの中澤とともにシン
グル発売するなどローカルな人気を長野で確立した杉崎だが、彼女にとって
長野は狭かったのだろうか。県外者に冷たいと言われる長野では自分の実力
が発揮できないと踏んだのか、2003年の初秋、突然の退社へと至る。それと
同時に「めざにゅ~」への出演が決定した。杉崎の東京進出に関しては色々な
憶測が飛び交っているが、信州在住の高名な放送作家の応援があったという説
がネット上では有力である。信越放送での最期のテレビ出演では、局側の冷や
やかな扱いにも涙を見せず気丈に務めを果たしたとのこと。ただ共演者の
中澤佳子アナは号泣し、山崎昭夫アナは最期の一言で「どこかで杉崎さんを見
かけたら応援してください」と優しい言葉をかけたという。
初期のめざにゅ~では、信越晩期の気苦労がたたったのか頬がこけ、少しお疲れ
気味のスタートではあったが「これからお休みになる方も、そしてお目覚めの方も
時刻は4時になりました」の放送史上最高傑作といわれるフレーズを生み出し
一躍、アナヲタの注目を浴びることとなった。持ち前の美声と真摯な司会ぶり
に加え、当時の新人アナ戸部洋子の絶妙なアシスト、同じく新人アナの
石本沙織とのコンビネーションも順調で、徐々に視聴率も上がっていった。
04年の初頭には早くも雑誌等の取材を受ける。その後は、有名な芸能人との
共演、ラジオ出演等、人気アナとしての地位を築いていくことになる。
(めざにゅ~公式HP内にある「東京初体験日記」「みかんのじかん」を読めば
その過程を具に追うことができる。)
また戸部・石本をはじめ、高橋真麻・遠藤玲子・松尾翠・生野陽子といったフジ
テレビアナを同番組で育てた伯楽ぶりもアナヲタに高い評価を得ている。
杉崎ファンにとって忘れられない出来事は05年の多摩警察署の一日署長を
務めた件と、フォトエッセイ発売(とそれに付随して行われる予定だった握手会
が1人のファンの犯罪予告によって中止になった)の件。一日署長を務めた日
は杉崎を一目見たいと集まった数百人のファンが多摩警察署に集まり杉崎自ら
がサブレを配ったり、ファンと握手をするなど異例の夢のようなイベントだったそう
だ。フォトエッセイ発売に関しては当初、杉崎も戸惑っていた面もあったが、
幼いころの写真や基本的なモノの見方など杉崎の知らなかった面が窺い知れる
こととなりそれなりに意義があったと思う。ただ握手会が中止になった件は非常に
残念であった。犯罪予告を行った大学生の男は後に逮捕された。
(この件は杉崎人気を物語るエピソードとして語り継がれることにはなるかもしれ
ない)。
08年春に「めざにゅ~」のMCの半分の時間を、松尾翠に譲る形にはなったが、
少女時代から夢であったラジオMCを務めるなど今現在も多忙な毎日を送って
いる。
杉崎の魅力は、前述した通り史上稀に見る破壊力十分のスーパーボイスと
キュートなルックスにあるが、ファンの私から見て彼女は特にトークがキレる
わけでもなく面白いことを言う人でもない。ミスをすると目が泳ぎテンパることも
あるし、決して「パーフェクト」な人ではない、しかし彼女の物事に真っ直ぐ向か
っていく姿勢やはっきりと自分を表現できる所に、私は惹かれるし、なんといって
もここまでの地位を築き上げたアナウンス人生のドラマ性が見事。
今やアナウンス界の重鎮といえる存在にまで成功への階段を駆け上った
杉崎美香。今後もしばらくは杉崎がアナウンス界の中核的存在を担い続ける
ことは間違いない。