■夜になるまえに Before Night Falls ハビエル・バルデム主演 | ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

映画 [新作・旧作・TRAILER] を中心に、ツボにはまり、ボヤキもチラホラの果てしない
日記になるか、カッカッしながらも、とほほの日記になるか・・・
ツボとボヤキで「ツボヤキ」日記。では参ります!


■Before Night Falls 夜になるまえに

●革命。キューバ革命を前後した時代背景の中で一人の詩人を描いた映画「夜になるまえに」は、まもなく公開「海を飛ぶ夢」(ザ・シー・インサイド)のハヴィエル・バルデム(ハビエル・バルデム)31歳当時の主演作。映画「バスキア」を監督デヴューしたジュリアン・シュナベールの2000年の作品。
自然の情景、森に流れる川の水しぶき、うねり成す波の寄せる海・・・。映画「夜になるまえに」は、1943年キューバの貧しい村で生まれたレイナルド・アレナスの幼少期から始まる。緑深い豊かな自然の中で育った少年の暮らし振り。少年の感受性は、詩を書くことで目覚めていくが、彼の育った時代は、常にキューバの政治動乱と背中合わせ。10代も浅い時期に、一人歩き始めた少年アレナスの行く先は、革命活動バティスタの下。それが功をそうし、共産主義革命政権成立後のカストロ政府の教育プログラムの一環として農業会計士、さらにハバナ大学で学び、国立図書館の仕事を得ながら、ゲイの仲間に囲まれた楽しげな青春時代・・・アレナスは、20歳の頃に小説を書き、出版に至る。
しかし、やがて共産政権は、芸術家やホモセクシュアルを反乱分子の根源と捉え、強制収容所に収監。言論や思想統制が成されていく中、小説の出版どころかアレナス自身も危うくなる。彼の小説の信奉者によって、彼の原稿は密かにフランスに持ち出され、かの地で出版するしか術はないが、結果、新作「めくるめく世界」は賞を受賞。そんな時、アレナスの持物を盗んだ少年たちの虚偽による濡れ衣で、いとも簡単に逮捕。森に潜伏しながら逃亡するもあえなく収監。彼は、二度とキューバで物を書くことは出来なかった。




レイナルド・アレナスの本は未読のまま、映画のみを見ているので主人公としての描かれ方が如何なものかは確かではない。ただし、カストロ政権下、キューバを逃れたい人々がどうやってフロリダまで到達したのか、漁船に乗って、或いは筏を作り、ゴムタイヤで運良く海流に乗れれば、また気球に乗ってのキューバ脱出といった脱出方法の話は、ゲバラ関連の本で読んだものの、映像で見るとその生々しさと真実味が伝わる。そうやって相当数のキューバ人が南海に消えていったのだ。
悲惨な現実と同時に、ここには当時のキューバの様子が再現されている。独裁政権下にあっても、ゲイ仲間の楽しげな楽園的描写、観光客相手に稼ぐ連中や隠れ家でダンスに興じる様子等、キューバのリズミカルな音楽を背景に彼等のバイタリティ溢れた明るさやエネルギッシュな様子がある。

アレナスの遺した詩の持つフレーズが流れる。自然の中に解放された人独りの孤独感、焦燥感、苦悩、それでも天上を見上げるアーチストの希望も探し出せる映画。
コインを差し出す記憶の彼方の父親、我が子の扱いに迷った母親の姿はロケットの中。弾圧は砂糖きび畑を焼き、窓から飛び降りる女。汚れた猥雑な刑務所の暗闇の中、石鹸の玉が宝石のようにリズミカルに舞う。彼の原稿をアヌスに隠し運ぶ女装のボンボン。




1980年、キューバを離れたアレナスはニューヨークで亡命作家となり、エイズでその生涯を閉じるまで意欲的な作家活動を続けた。アレナスを演じたハヴィエル・バルデムは、圧倒的な存在感で向こう側にいる。
この映画、現政権への異議申し立てをあからさまにしているわけではない。カストロを真っ向から批判しているわけでもなく、キューバ革命の全貌を描いた映画ではない。然しながら至る所にゲバラの肖像を見ることだろう。当時のフィルムも重なる。当時、アレナスが受けた迫害や政権側の人間を描いたのも事実で、結果、国を追われたキューバ人作家の姿に、見る側が思いを馳せる意味には十分に繋がる映画だ。そこでキューバも黙ってはいなかった。事実、アレナス自身が、ニューヨークにおいて最後まで反カストロ運動を推進し続けた作家だった。この後、アレナスを演じたハヴィエル・バルデムはキューバへの入国禁止人物となった模様。

僅かな場面で印象的な役割を果たし、まさにキューバに溶け込んでいたショーン・ペン。アレナスを描いた映画としては、やや突出した存在で如何なものかと戸惑わせるジョニー・デップは、女装ボンボンと強面の将校の二役をこなした。いや、巧いし、いいんですが本筋から見るとやや浮くかなぁ。存在感あり過ぎだって(苦笑)。
アレナスを最後まで看取ったオリヴィエ・マリティネス演じるラサロが手にしたアイ・ラブ・ニューヨークの袋に、アメリカでのエイズ発生におののく時代が重なる。あの時代、次々にアーチストが去っていった。

2000年ヴェネチア国際映画祭男優賞、審査員グランプリ賞、全米批評家協会賞主演男優賞、インディペンデント・スピリット賞主演男優賞受賞。(2000年/製作国アメリカ/アメリカ公開/日本公開2001年)









▲キューバ当時のアレナス(左2番目)


▲クリック

New York Times Trailer
▲やや大きめの画面デス



▲QuickTimeでTrailer見れます
「慟哭の感動。いい涙を流してください!」
・・・いらんゾ、そんなコピーは

Official site
オフィシャルでもTRAILERはご覧になれます。


●Directer: Julian Schnabel ジュリアン・シュナベール
●Screenwriter: Cunningham O'Keefe カニンガム・オキーフ Lazaro Comez Carriles ラサロ・ゴメス・カリレス Julian Schnabel ジュリアン・シュナベール
●Cast:Javier Bardem ハヴィエル・バルデム Olivier Martinez オリヴィエ・マルティネス Andrea di Stefano アンドレア・ディ・ステファノ Johnny Depp ジョニー・デップ Sean Penn ショーン・ペン、Michael Wincott マイケル・ウィンコット

 

タイトル: 夜になるまえに

 

タイトル: Before Night Falls

 

アーティスト: Original Soundtrack

タイトル: Before Night Falls

 

アーティスト: サントラ, ワヤベーロ, トリオ・マタモロス,

オルケスタ・アラゴーン, エルネスト・レクオーナ, ベボ・

バルデース, ベニー・モレー

タイトル: 夜になるまえに ― オリジナル・サウンドトラック