差別とB級グルメのお話 | 続・猫と饒舌の日記

続・猫と饒舌の日記

文筆家・古谷経衡のオフィシャルブログです。
2017年3月より再開
2015年9月一旦休止
公式サイトは http://furuyatsunehira.com/


【レギュラー情報】
TOKYO FM(FM80.0)タイムライン 毎月第2/第4火曜日夜19:00-19:50担当

首都圏および、ラジコで全国どこからでも聴取可能です。
TOKYO FMタイムライン公式サイト

→4月の放送 4月14日火曜日(夜19:00-)、4月28日火曜日(夜19:00-)
→5月の放送 5月12日火曜日(夜19:00-)、5月28日火曜日(夜19:00-)

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・(新刊発売情報所謂「イスラム国」からユーチューバーまでを鋭く切り、ネット社会に一石を投じる内容です。ネットの「炎上」は徹底的に無視せよ!2015年2月26日全国書店にて発売!

アマゾンランキング「情報社会」「ビジネスとIT」カテゴリーランキング1位獲得!


★書評頂戴しました→ビジネスブックマラソン
・読書メーターにおける本書の書評一覧

・『インターネットは、永遠にリアル社会を超えられない』
ディスカヴァー・トゥエンティーワン(2015年2月)


・キンドル版も発売されています(20%off)
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【イベント情報】5月2日土曜日 「憲法」を考える トークイベント


5月2日・土曜日”「憲法」についてのパネルディスカッション”に出演します。
出演者はDJのショーンK氏、憲法学者の小林節氏、学生団体アイボートの齊藤氏、そして私です。

場所・井の頭恩賜公園特設ステージ。入場無料。14時からです。(主催・東京JC)
詳細はこちら 2015東京ブロック協議会

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【イベント情報】5月15日金曜日19:30-21:00、第 29 回 Discover Book Bar ~ インターネットは永遠にリアル社会を超えられない ~

2015年5月15日金曜日 19:30-21:00

毎月恒例のイベント、Discover Book Bar。
ディスカヴァーのすべての本がそろうライブラリーで、ドリンクを片手にゲストの話を聞き、参加者の皆さん同士で交流するイベントです。お友達をさそって、おひとりでぶらりと、どうぞお気軽にお立ち寄りください。

5 月のテーマは「インターネットは永遠にリアル社会を超えられない」。ゲストに著者の古谷経衡さんをお迎えし、ネット選挙、ネット保守(ネトウヨ)、ツイッ ター、ユーチューバーから、アニメ「攻殻機動隊」「ソードアート・オンライン」「涼宮ハルヒ」、映画「電車男」「アバター」「Facebook」「インセ プション」まで、ネットとリアル社会の限界と可能性についてたっぷり語っていただきます。

19:00 開場(ゲストトーク開始まで参加者同士の交流タイムになります)
19:30-20:30 古谷経衡さんゲストトーク
20:30-21:00 自由時間(話したり、本を読んだり、お酒を飲んだり自由な時間です

詳細→詳細はこちら
フェイスブックページはこちら
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【収録情報】現在販売中の「正義の嘘」(産経新聞出版)に、私と花田紀凱氏(月刊誌WILL編集長)の対談が収録されております。ぜひお買い求めください。
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さいぼし*出典 こちらのブログさんから

 さいぼし、という食べ物を知っていますか?馬肉を燻製させたものです。油が少なく、独特の触感です。元々、大阪南部の南河内の特産として知られています。


 今日は、ちょっとナイーブな話題ですが、私は大学時代に被差別部落史を勉強していました。江戸時代に不可触賤民とされた人々(穢多”えた”など、地域によっては”かわた”等とも言った)のなかには、江戸時代の最速の交通手段である「馬」を管理する人々が居ました。


 馬が死ぬと、馬の死体を処理するのが、彼らです。その馬の死体の処理の際に、勿体無いからと、貴重なタンパク源になるため、馬肉の燻製の製法を開発します。これが、「さいぼし」の原型です。


 私はこういった部落史を勉強する中でこの「さいぼし」を知り、わざわざ京都から大阪の松原市などへでかけ、さいぼしを買い求めました。いまや「さいぼし」は全国に広がりつつある「B級グルメ」ですが、私が大学生の当時(2001年頃)は、まだローカル色が強く、珍しいものでした。


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 そこで私は、当時付き合っていた彼女の実家に、手土産にと、この「さいぼし」を持っていったのです。彼女の母に「さいぼし」を手渡す際に、良かれと思ってその歴史を少し話して差し上げました。すると母親の顔色が「サッ」と変わり、


「そんな、エタ(被差別部落民への蔑称)の食いもんを、うちに持ってこないでくださいますか。そんなもん、うちの冷蔵庫に入れられませんわ」


 と言われ、受け取りを拒否されました。私は、はな衝撃を受けました。言わずもがな、それはこの母親が「エタ」などという蔑称を堂々と使い、むき出しの差別意識を隠さなかったからです。衝撃の後には、怒りが襲ってきました。

 受取拒否がそもそも失礼な話ですし、そのような態度こそが差別を生んでいるんだと、説教をしてやろうと思いましたが、やめました。単なる馬肉の燻製を、「グルメ」として楽しむことも理解できず、歴史を知りもしないで短絡な差別感情と結びつけるこの母親の教養の無さに、私ははなはだ幻滅したのです。


 しかも「エタはヨツ(4)と言ってな、人間の五本指が一本足りないからそう言ったんや」とまで言います。あまりにも醜悪な差別感情に吐き気がしました。

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 この時に、この彼女とも別れるのが良かったのですが、その後だらだらと関係が続きました。この母親とは、後日関係を一応修復しましたが、やはり最終的には決定的な破裂を迎えました。因みにこの母親は、本を読んだり、映画を見たり、ネットをしたりする習慣が全くないタイプの、ただただ無知な中年であったことを付け加えておきます。

 それはともかく、「さいぼし」の歴史的背景は、過去に消え去ろうとしています。いまや全国に広がった「さいぼし」は、歴史的背景から離れて、単純なグルメとして取り上げられるようになりました。そのことは私は大変嬉しいと思います。

 しかし私は、いまでも「さいぼし」を食べるたびに、あの時の元カノの母親の、差別意識に歪んだ醜悪な表情を思い浮かべます。私は被差別部落史を勉強していただけで、被差別部落とは全く関係のない場所で育ちましたが、まるで私自身が、蔑視されているような、そんな感覚を受けました。

 この時以来、私は、何かを差別するということが、いかに非道で反知性的なことか、痛感しました。私の青年期の原点の一つのようなお話です。お目汚し、失礼しました。


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