「分身」/あなたの顔は誰のもの? | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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東野 圭吾「分身」

鞠子と双葉の二つの章に分かれて、物語は進む。

鞠子の一人称は「私」。彼女は北海道に住む、どちらかというと大人しい女性。幼い頃、母に理由なく疎まれた記憶が残ったまま、中学校から家を離れ、寄宿生活を送る。更に、その母は彼女が休暇で帰宅した際に、自宅の火事により焼け死んでしまう。なぜ母は彼女の成長とともに、悲しい顔を見せるようになったのか、父と鞠子は助かったものの、なぜ母は焼け死ぬことになってしまったのか?

双葉の一人称は「あたし」。彼女は東京に住む、鞠子に比べて随分活発な女性。双葉は、父の顔を知らず母一人の手で育てられた。バンド活動をする双葉であるが、なぜか母は彼女のテレビ出演を強く禁じる。約束を重く考えなかった双葉は、テレビ出演を果たすが、その直後に母はひき逃げされ、亡くなってしまう。

鞠子は、父の過去の東京での研究に、母の死や自分の出生の秘密が隠されているとにらみ、東京で調査を始める。母を殺された双葉の周囲にも怪しい男たちが現れ、彼女もまた否応なく事件に巻き込まれる。交錯する二人の動き。

鞠子と双葉、年齢も一歳違い、これまで北海道と東京で育ち、共通点もなかった二人。ところが、この二人の顔、姿かたちは全く同じものであった。

一体これはなぜなのか?また、過去、鞠子の父が過去関わった研究とは何か。
周囲に現れた怪しい男たちの正体とは?
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ネタそのものは、ここまで書いた部分で、想像されるものから、あまり逸脱しない。また周囲の人物、主人公二人の心の動きなども、類型的に感じてしまう。特にこれといって、新しい物の見方、斬新な考え方も見られないように思う。

クローン物に対する嫌悪感もあると思うのだけれど、東野圭吾さんの手によるものでは、「殺人の門」も人の悪意が前面に押し出され、読後感が決して良いものではなかった。世間では高評価の東野さん、なぜ楽しく読めないのか、自分でもちょっと不思議ではある。

友人に東野さんの「秘密」がいいよ、と勧められたので、後一冊は読んでみたいと思うのだけれど、どうもあまり面白く読めない作家さんです。また、その理由も上手く言語化出来ない。

 
東野 圭吾
分身
 ← 既に文庫化されているようです

 
東野 圭吾
殺人の門