「杉の柩」/推理小説 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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ミステリーと言えば、やっぱり女王・クリスティクリスティの中でも、私は「灰色の脳細胞」を持つポアロシリーズが好き。今全て手元にあるわけではないけれど、大方のものは図書館で借りて読んだはず。映像化されたものでは、デヴィット・スーシェがぴったりだと思う。まるで本から飛び出したような姿だった(あの口ひげ、あの頭、あの口癖と尊大な仕草!)。

今日はその中のこちら。

アガサ・クリスティ 「杉の柩」 ハヤカワ・ミステリ文庫

ポアロシリーズにも多くの作品があり、この本の中では他のものに比べ、ポアロはそれ程活躍しない(というか、裏で調査を行っている。そして、後半の畳み込む展開は素晴らしいと思う)。そうではあるのだけれど、私はここに出てくる、激しい情熱を胸に秘めた誇り高い「エリノア」が好き。ミステリーなのだけど、最後は彼女にとって良い発見をして、幸せになって良かったなーとしみじみ思う。

Amazonから引っ張った粗筋はこう。
婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりをし、婚約は解消された。激しい憎悪がエリノアの心に湧き上がり、やがて彼女の作った食事を食べたメアリイが死んだ。犯人は私ではない!エリノアは否定するが…嫉妬に揺れる女心をポアロの調査が解き明かす。

以下、引用。
ポアロは、感受性の強そうな、知的な面ざし、広い白い額、美しい鼻と耳の型とを目におさめた。美しい線だった。誇り高い、感じやすい人。教養も深く、自制心も強く―まだ何かある―ひそんだ情熱だ。
「わかりますよ。ちっとも気になさることはない。悪夢にとりつかれているような時には、何か平凡なものだけが頼りの綱なんですから。ともかく、平凡てことは一番いいことなんですよ。私はいつもそう思ってますがね」
「過去と未来との間に大きな溝ができることが時にはあるものです。死の陰の谷をさまよったあげく、ふたたび日の光のもとに戻ってきた時には、モン・シェル、新しい生活が始まるのです。過去とはなんのかかわりもない」


ついでにクリスティ、もう一作品。
「ゼロ時間へ」

こちらはポアロミス・マープルも出てこないけど、好きな作品(ポアロシリーズに出てきたバトル警視は出てくる)。

Amazonからの引用。
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった―人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作

引き込まれる冒頭部。
「私はね、よくできている探偵小説がすきなのだ。だがね、どれも出だしがいけない!みんな殺人ではじまっておるのだ。しかし殺人というものは終局なのだよ。物語は、ずっとまえからはじまっているのだ。ときによっては、何年もまえからね。ある人々を、ある日、ある時、ある場所へとみちびいてくる、その要因と出来事とで、物語ははじまっているのだ。」
「あらゆるものが、ある一点にむかって集中しているのだ・・・・・・そして、その<時>がやってくると―爆発するのだ!ゼロ時間!そうだ、ありとあらゆるものが、このゼロ時間の一点に集中されている・・・・・・」


著者: アガサ・クリスティー, 恩地 三保子
タイトル: 杉の柩
著者: アガサ・クリスティー, 田村 隆一
タイトル: ゼロ時間へ


しかし私はクリスティーを読み直す度に、新しく楽しめてしまいます。決して新しい発見が!、とかそういうことではなく、犯人を忘れてしまうのですね。いいことなのか、悪いことなのか・・・(きっと悪いことだろうけど)。でも、巧妙な伏線の張り方など見事だなー、といつも思います。そしてほんのちょっぴり入っているロマンスも結構好きだったりします。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、御連絡下さい。