【2018/3/1段階】マンガ描写に対するモンゴル外務省抗議への我が国等の対応について(追記有) | 「月松橋」活動報告

「月松橋」活動報告

同人団体「月松橋」です。

・事の経緯

小学館「コロコロコミック」(公式HP)が2018年2月23日、【コロコロコミック3月号掲載『やりすぎ!!!イタズラくん』の一部表現に関するお詫び】との題名で謝罪文を発表しました。

2月15日に発売された「コロコロコミック」3月号掲載の漫画『やりすぎ!!! イタズラくん』において、作中のキャラクターがチンギス・ハーンの顔に男性器を模した落書きをする描写をした件について、「モンゴル国国民の皆様をはじめチンギス・ハーンを敬愛する全ての方々」に謝罪する、との内容でした(実際の謝罪文のスクリーンショットを含む記事はこちら)。

小学館のこの対応を受け、複数の書店が当該号の販売を停止する措置を講じるなどの混乱が、本稿執筆時点(2018年3月1日)でも続いています。

 

この件を私は、非常に大きな問題として捉えております。その理由と、この問題に対して取るべきと思われる対応について、以下説明致します。

 

・問題①:日本人の権利を外圧から守れていないのでは?

現在「モンゴル外務省(※)からの抗議を、日本国外務省が小学館に取り次いだ」との複数報道がなされており、twitter上では大きな騒ぎとなっています。本項では、何故これが問題視されているかの説明を行います。

朝日新聞報道では「来日中のモンゴル外相」らから産経新聞報道では「モンゴル大使館」からの抗議として報道されており若干の相違がございますが、いずれにせよ「モンゴル外務省の人物からの抗議」と見て確実でしょう。

 

まず前提として、「国際問題」と言うものは常に起き得ます。日本国もしくは日本人が、他国もしくは他国の人との間のトラブルに巻き込まれることは常に考えられます。外務省は、このようなトラブルが起きた時に、日本国もしくは日本人の権利を守るために行動することを本来の業務としております。

民事裁判では当事者の意見を主張し、当事者の権利を守るのは弁護士の役目です(注:弁護士を立てずに当事者自らが主張を行うケースもあります)。民事裁判における弁護士の役目を、国際問題においては外務省が担うと考えれば大体合っているはずです。

 

今回のチンギス・ハーン落書き描写について、モンゴル人の方々には「不快だ」「傷付いた」等の抗議を行う権利はあります。また、日本国外務省に抗議を申し入れることで、その国民の意見を代弁することは、モンゴル外務省が行うべき仕事であるのは事実です(その抗議の中身がまっとうなものかどうかは今回議論から省きますが、どんな内容であれ主張する権利があることは間違いありません)。

しかし、それと全く同様に日本人も「私達には表現の自由がある」「好きにマンガを描き好きにマンガを読む自由がある」と反論する権利を有します。そして、日本国外務省には、日本人の代表として、日本人が持つ「表現の自由」の権利を主張する役目があるはずです。

 

モンゴル外務省の抗議に反論もせず、黙殺もせず、それどころか「モンゴル外務省の代わりにモンゴル外務省の言葉を小学館に伝えた」だけの今回の日本国外務省の対応はあまりにも論外だと考えざるを得ません。

先述の民事裁判の例えで言うなら、被告担当の弁護士が「原告の弁護士が『1億円賠償しろ』って言ってきたから伝えとくね!」とだけ被告に伝えて、原告に対する反論は何もしないようなものではないでしょうか。弁護するのが仕事だったのではないのですか。

しかも、もしこれが民事裁判であれば弁護士を替えればなんとかなる話ですが、国際問題において外務省の代わりとなる立場の機関は存在しません。外務省が日本人の権利を主張しないなら、誰も日本人を諸外国の外圧から守ることはできないのです。

 

モンゴル外務省に反論等をしないばかりか、相手の言い分をそのまま伝えてしまった今回の外務省対応。

一体何のために私達は税金を払い、この機関の維持運用に協力しているのでしょうか。今回の対応を見る限りにおいて、私はその意味を見失いかけております。

 

・問題②:読者である子どもの気持ちを聞いた決定になっていないのでは?

こちらは問題①と異なり、私の観測範囲内ではまだ見当たらない論点です。そのため、本項で述べる問題意識は今のところ私一人のそれであることにご留意願います。

 

報道によれば小学館は、モンゴル外務省から日本国外務省への抗議が行われたその日のうちに謝罪を行ったとのことです。抗議から謝罪までの時間があまりにも短いことから、マンガの作者の意見はまだしも、マンガの読者の意見を聞いて対応を決定するということは一切なかったと考えるのが自然です。

マンガを支えているのは、お金を出してそれを購入する読者です。そしてマンガが圧力に屈した時、好きな作品を読むことが困難になる等、最も悪影響を受けるのも読者です。その読者の意見を一切聞くことすらなく、取引相手ですらない第三者からの圧力に屈するということが果たして正しいのかどうか。私は大いに疑問です。

 

また今回、コロコロコミックとその掲載作品が圧力に屈したことについて、その作品の読者が子どもである点に非常に留意すべきと思っています。

今回「モンゴル外務省⇒日本国外務省⇒小学館(&その余波を受けた書店)」と話が推移したのは、言ってしまえば全て「大人の世界の話」です。「大人の都合」です。

コロコロコミックを読んでいる子ども達の気持ちを一切聞かないまま、「大人の都合」でコロコロコミックの内容について謝罪させ、あまつさえ少なくない書店からコロコロコミックを取り下げてしまったことを、私達大人はどうやって説明すればいいのでしょうか?

 

「大人」の一人として、返す返すもコロコロコミックの読者の皆様には申し訳ないことをしたと思います。

 

・青健法が通れば、この様な行為はむしろ「法に適う」として奨励される?

以上述べた通り、今回の出来事に対して私は「日本人の権利が外圧に侵されることを受け入れたのでは?」「子どもの気持ちを全く聞かないまま、子どものマンガに関する決定をしたのでは?」と言う2つの大きな問題があると感じ、これを問いたいと思っています。

しかし、「そんなの全く問題ないよ」「むしろ奨励されるべきことだよ」といわしめる根拠となりえる法律が、今まさに成立させられようとしている最中です。その法律こそ、先日弊ブログでも取り上げました、青少年健全育成基本法(青健法)です。

青健法には、

・子どもの意見を聞かずに

・親を始めとする大人たちが勝手に

・外圧を自ら受け入れながら

・「青少年の健全な育成」にふさわしくないものの規制を進める

と言う内容があります。この法律が成立した世界では、「学校のテストに男性器の落書きをする」という内容の今回のマンガを、誰かが「この漫画は健全育成に不適切」と主張すれば、その瞬間このマンガの規制は法律上奨励されることになってしまいます。

 

ただし、この青健法は成立はおろか、提出すらまだされておりません(2018年3月1日現在)。

根拠となる法律すらないのに「子どもの意見を聞かず」「大人の都合だけで」「外圧を受けれて」「マンガを屈させた」ことは、極めて異常だと私は考えます。

 

・現在取るべきと思われる対応

本件について、現在最も優先度が高いのは、「外圧を受け入れた」「子どもの意見を聞かない」決定の端緒を開くことになった不適切な対応を取った日本国外務省に対するアクションと思われます。

まず「この対応は問題だ!」と思った個々人が、自分の言葉で外務省に意見を送ることが重要です。

この問題意識に共感して下さる方のご協力を、伏してお願い申し上げます。

 

 

※外務省連絡先一覧

・外務省公式ホームページ 【受付時間・問い合わせ先・住所】 

・外務省公式ホームページ 【御意見・御感想(メールフォーム)】

 

もう一つ有効と思われるのが、国会議員を使う手です。

外務省が日本国政府の部署であるのに対し、国会議員は国会の人間です。三権分立を採用している我が国において、国会議員(=立法の人間)は公務員(=行政の人間)に対して同等の立ち位置を持ちます。

かつて警察(=行政の人間)が「不適切な疑いのある」捜査を行った際、国会議員(=立法の人間)がそれについて問いただした結果、警察の対応が改まったという前例もあります。

 

ひとりでも国会議員が外務省に説明を求めて下されば、状況を大きく動かすことが出来る可能性は十分にあります。

もし、国会議員等と懇意の方がいらしましたら、本件について外務省に問い合わせるよう、可能な限り要望して頂けますと幸いです。

 

もしコロコロコミックや小学館に対する意思表示を行う場合、最も効果が大きいのは「アンケートハガキ」であると考えられます。

コロコロコミックには、読者アンケート用のハガキが付属しています。このハガキを使って意見を送れば、「この意見はお金を出してコロコロコミックを買った読者からの意見だ」と言うことが相手にも伝わります。

「外務省にめげずに頑張って下さい」でも「謝罪して欲しくはなかったです」でもなんでも良いと思います。

今、コロコロコミックや小学館に対して感じていることを、ハガキで伝えてみて下さい。

 

 

その上で、「現在このような問題が起きている」と言うことを、お近くの方に知って頂くためのご協力をお願い申し上げます。

当記事の拡散・紹介・感想発信等、大歓迎です。

 

何卒宜しくお願いします。

 

※2018/3/6追記

3月6日、小学館は公式サイトにて『コロコロコミック』3月号の販売中止」「書店への速やかな返品依頼」「返品を希望する読者への返金対応」の措置を講ずることを発表しました。

本騒動が、私の考えうる限り最悪の結末に終わってしまったことを、大変遺憾に思います。