【2018/2/21版】山田太郎氏による青少年健全育成基本法の条文解説 | 「月松橋」活動報告

「月松橋」活動報告

同人団体「月松橋」です。

「月松橋」代表である私、温泉半熟卵は、いわゆる「表現の自由」を守るための活動に参加しております。

そんな私が現在、最も危惧しているのが、「青少年健全育成基本法」(青健法)と呼ばれる法案についてです。もしこの法案が通れば、商業のマンガ・ゲーム・アニメ作家はもちろん、私の様な同人作家も、今までの様に自由に表現を行うことはもはや出来なくなる可能性が非常に高いです。またそれ以上に、この法案は、「子どもを大人(国)の思い通りに育てようとする」「そのために非行・貧困・引きこもりの若者を助けるための法案を犠牲にする」という意味でも大問題です。

 

2018年2月21日の、山田太郎前参議院議員らによるこの法案の問題点解説の要点を文字起こししました。

解説の最後でも述べられている通り、「『こういう問題がある』ということを、まず知って貰う」ことがとても重要です。この問題の把握・拡散にご協力下さい。

 

《文字起こしする動画》

 

【第293回】マンガ・アニメ・ゲームを規制する青健法が今国会に提出!?【前参議院議員山田太郎のさんちゃんねる】 

ニコ生版※タイムシフト公開期間終了  (この動画の28:14頃から文字起こし)

youtube版 (この動画の26:13頃から文字起こし)

 

《動画登場人物紹介》

 

【山田太郎氏(山田氏)】

「表現の自由を守る会」代表。前参議院議員。2012年12月~2016年7月までの議員任期の中で、政治による「表現規制」の試みを幾度となく打ち砕き、マンガ・ゲーム・アニメの文化を守ること等に多大な貢献をされた方(具体的な功績はこちら参照)。2016年参院選では29万人以上の有権者からの支持を受けるも落選。以後、いち民間人として「表現の自由」に関する問題の情報発信を続けている。

 

【坂井崇俊氏(坂井氏)】

山田氏が議員だった頃、山田氏の議員秘書を務めた人物。山田氏落選後も「表現の自由を守る会」の活動に関わる。表現の自由を守る有志団体の一つ「AFEE」の編集長も務めている。

 

【遊佐めぐみ氏(ゆさめぐ)】

以前から山田氏の番組にアシスタントMCの役回りで出演している20代の女性声優。

 

―文字起こしここから―

 

・2018年2月、「青健法」成立に向け再始動

【山田氏】「じゃあちょっと坂井さん、その(青健法の)事実関係を伝えて下さい」

【坂井氏】「ええっと、(中略)二週間くらい前かな、自民党の政調会の、まあ青少年部会(注:正確には「青少年健全育成推進調査会」)かな、の中でまあこの(青健法の)件が議論されて、えー、まあ一応小野田さんとかみたにさん(注:自民党の小野田紀美参議院議員とみたに英弘衆議院議員のこと。こちら参照)からはまあちょこちょこっと報告があったんですけれども、まあ基本的にはそのまあ『(青健法の)議論は終わってるんでこのまま出すんじゃないか』と。で、あの自民党の機関紙(注:「自由民主」2/20号。こちら参照)でも、えーまあ今国会(6/20まで)にぜひ出したい(注:実際の記事には「今国会での成立を目指す」とあります)みたいな話でまあ出てたよというところの情報までですね」(中略)

 

・青健法は、子どもの権利をなくす法律

【山田氏】「で、根本的に、まずですね今日はもう一度、何回か実は過去やってんですが、『青健法ってなんなの?』『青少年健全育成基本法ってなんなのか』ということと、どこが、その青健法で、えー問題なのかということに関してですね、今日はちょっとじっくりやりたいなという風に思っています。で、まあ何度も出してるんですが、多分このまままとまっていくという風に思う、で、えーもので、これは何かっていうとですね、えー『子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案:新旧対照表』(※1)、というのがありまして、えーちょっと今日はこれをですね、使いながら皆さんとですね、条文解説というかですね、何が問題なのかポイントなのかってことをえーまあ探っていきたいと思ってます

 

※1:青健法(正式名称:「子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案」)は、2014年にも国会に提出されています(その後国会閉会に伴い審議前に廃案)。「子ども・若者育成支援推進法の一部を改正する法律案:新旧対照表」は、この時に参議院法制局が公開した資料です。

山田氏は2014年にも、同じ資料を使って青健法の詳しい解説を行っています(こちら参照。詳しくは後述)。今回は、「2018年までの最新情報も踏まえた上で、改めて青健法の解説を行おう」という趣旨の特集です。

 

【山田氏】「でこのー、(対照表の)上が改正案を纏めたもので、下が今の現行のですね、子ども・若者育成支援推進法。この推進法の名前を変えて青少年健全育成基本法と、いうものをつくろうということなんですね。で、何度もこれ私街宣活動なんかでもいってるんですが、問題だよと思うのはここなんですよ、(中略)これどう読むかっていうと、まずこれ線がびゅーって入ってると思うんですが、線が入ってるっていうのは変更っていう部分なんです。入ってないところは変更なしなんですけど、殆ど(条文が)変更。8割変更」(中略)

【山田氏】「それからすごいのは、理念のところががぽーっと、こう落ちてたりとか、ないんですよここ、(中略)で纏めちゃうとですね、簡単にいうと、何が起こってるかというと、これですね、もともとはえーっと、子どものですね権利を(中略)守ろうと、えーいうものが、だから子どもの個々人の権利を守ろう、でどういう権利を守ろうっつってるかっつうと、非行の問題だったりとか、あとは貧困の問題なんかもあると。でこの法律を作る時に、前提となったのは国連の子ども人権条約かな?それを受けるということで、えー作ったんだけれども、えー、という意味ではどちらかというと個人法益を目指してたはずなんですよこれは、『子どもひとりひとりを助けていこう』と。で子どもが『ヘルプ』っていった場合には助けましょうってことだった。それが(青健法では)なんになっちゃったのかっつうと、『健全な社会環境整備』になっちゃったと。どっちっかっつーと、まあだからよくいわれて批判があるてかいてあるのは『上から目線』てよくいわれるんだけど、なんか、『秩序を作りましょう』って話になっちゃったと。だから個々人の子どもを助けるんじゃなくて、健全という、こういうものが子どもにとって健全だよっていうものをデザインして、そっからはみでちゃった様な社会はやめにしましょうと」

 

・青健法は、有害図書を指定する条例の親玉

【山田氏】「で、もう一つ、すごく今回大きな変更になってるのは、『保護者の責務』ってのがついたんですよ。で『保護者の責務』ってのは何かっていうと、『青少年の人間形成は大事だ』と。『青少年の人間形成をするのは保護者であるから、保護者がしっかりやらなければいけないよ』ってことを作ったと」

【坂井氏】「五条だから結構前の方ですね」

【山田氏】「ということで、大体そうすると何をしたいかって分かるよねと。しかも、これ(青少年健全育成基本法)と同じ名前を掲げてるのが、『青少年健全育成条例』というものが各県にあって、で青少年健全育成条例ってのは実際には何を取り締まってるかっていうと、青少年が、あのこういうものみちゃいけないとか、ね、こういうものふれちゃいけないとか、まあそういったことを一生懸命定義したりとか、それからそういうマンガ・アニメ・ゲームというものを、いわゆる区分陳列という形で、まああの、指定していく、で指定されちゃうと結局はなかなかそれ区分するのも大変だからってことで出版元でもなかなか販売しにくくなっちゃうね、と、まあこういうものに繋がっていくと。

だから、簡単にいうとこれ(青健法)は、明らかに、今ある青少年健全育成条例の、まあ親法(おやほう)(※2)にあたる、と。

 

※2:2014年の山田氏の解説によると、親法とは「他の条例を上書きすることが出来る法律」のことを指します。要するに青健法は、「『青健条例(≒有害図書を指定する条例)』の親玉的な存在」ということです。後述部分も参照願います。

 

・青健法成立が急がれている理由①「全国規模で規制したいから」

【山田氏】「でなんでこんなものを早急に作らなきゃいけないのかというと多分幾つかのポイントがあるんですね。えーわかってるのはこれまず何かっていうと、えーと一つはですね、青少年健全育成条例ってのは県の条例だから、県をこう跨いじゃう様な話に関しては対応ができませんと。で今、例えばマンガ・アニメ・ゲームでもどういう状況になってるかっていうとオンラインとか出てきましたと。LINEマンガとかもうけっこう過激なものがありますと。そうすると、じゃあ青少年健全育成条例の都道府県単位で取り締まれるかっていうと取り締まれませんと、穴だらけですと。オンラインゲームまさにそうですと。そうなると、それを多分取り締まるものってのが、『要るよね』っていうので、『時代が変わってきたんで、国レベルでこういう(規制のための)ものを作らないとダメなんじゃないの?』と、それが一つと」

 

・青健法成立が急がれている理由②「オリンピックが近いから」

【山田氏】「でもう一つは、まあ多分(2020年の東京)オリンピックをはじめとして、えー日本がですね、『エログロ暴力マンガ・アニメ・ゲーム輸出大国』といわれたくないと。まあ明らかにもう五輪の影響ってゆうのはあるな、と、これ急いでるってのはまあそういうことなんじゃないかな…多分、外国人がバーッとこうやって来てメディアがですね、今でもまあBBC(注:BBC(英国の公共放送局)の偏向報道直近事例はこちら参照)とかなんとかそうなんですけども、まあ『秋葉原ってのはとんでもねーわ』…(中略)そう、『KAWAII文化』とかなんとかいっちゃって、『子どもに全部いろんなことさせてる』、と。でいい方悪いけども、前もいいました『(名探偵)コナン』なんかにですね、『子どもにですね、殺人現場に行かされてあの推理探偵やらせてるのはおかしいじゃないか!』その『労働』『虐待だ』『おかしいじゃないか』って。それからですね、『エヴァンゲリオン』だってですね、子どもが闘ってるんだからね、死にそうになって、『あんなもん虐待だ!』ってね、えー、ゆう、まあ『KAWAII文化』否定と、いうことにもなるわけだけども、まあそうなった時に多分言い分が必要で、『いやいや日本は青少年健全育成基本法ってのを作って、今一生懸命対応してますから』、と、まあいう風にいいたいんじゃないかと、いうのが、まあ透けて見えるというかですね、多分その2点なんじゃないかな、と思っていまして、かなりそういう意味では通す側は本気です、と」

 

・青健法は、子ども自身の意見を一切聞かない法律

【山田氏】「でしかもですね、条文の構造ってのは先程もいったんですが、PTAや国がその基準を決めていくといっているんですよ。で、子どもの議論ってのは全くない

【坂井氏】「子どもの権利ですね、まあだからいろんなものを楽しむ…」

【山田氏】「子どもが『こういうものがほしい』とか、子どもが『こういうのが幸せなんだ』という子どもの意見は一切聞かないんですよ、このシステムは。それで本当に、子ども幸せ?っていう、そう自分たちが普通に今まで見ていて何の問題もなかったものが、たとえばですね、取り上げられちゃうとまあいう様なことがあって、本当にそれで(子どもは)幸せですかねえ、とまあいうことなんだと思います」(中略)

 

・青健法は、ほぼ審議なしで成立可能

【山田氏】「で、えっと、(子ども・若者育成支援推進法から青少年健全育成基本法への)変更点として幾つかあげられるのを、少しずつ見ていきたいと思いますが…まさにですね、名称がヒドイと。これ、普通はですね、名称を変えたら、これどう見ても、あのあれでしょ、あの新法を作るべきでしょと。で、よくいうんですけどなんで新法にしないのかってのが僕はいやらしいと思っていて、新法にすると、手続きが大変なんですよ。『立法事実』って『そんな法律必要なのか』ってところから始まって、国会でも衆参合わせていろんな委員会をたくさんの時間を使わなければならないと。でも修正であれば、修正案だから、修正案として、あのー、まあ長くても4~5時間コース、1日ね、ひどいと『委員長採決』(注:正しくは『委員長提案』。解説はこちらという奴で、衆参本会議だけで通るといわゆる各…野党、党が全部反対しなければ、と。委員会開かず通しちゃうと。まあこういうことが出来るんですよ。

ということなんで、僕は、いや、本当にね、青健法が必要だというんであれば、まあ別にどんな法律を出すってことだって民主主義だから、僕は悪いことだとは思わないんだけれども、もし本当にこれが必要だっていうんだったら、ちゃんと、新法として、堂々と時間をかけて国会で議論するべきだという風に思うんだけど、なんとなくですね、これをですね、法律名を変えて、前文を変えて(注:正しくは、前文は改正案における「新設」項目)、目的まで変えちゃった…普通目的変えたら、目的変えたらこれ、新法だろぉ!? 普通…目的変えちゃ…」

 

・青健法は、現行法の「目的」を100%改変
【坂井氏】「目的は…これでもこれはねえ…見た方がいいですよ」

【山田氏】「目的はぁ…」

【坂井氏】「目的の変え具合」

【山田氏】「変え具合。全部変わっちゃったんだよ」

【坂井氏】「ここに、ここ(注:条文の第一条)に『目的』っていうのがあるんですね?でこれ(対照表の)上が新しい奴で、下が古い奴なんですけど、えー、上の目的は全削除、下の目的が新設(注:正しくは逆。「下の(現行法の)目的が全削除、上の(改正案の)目的が全て新設」)。」だからその『健やかな育成を見守る』(という趣旨)のから、『健全に育成させよう』っていう(趣旨)のに変わっちゃったっていう…」

【山田氏】「ちょっとこれはねえ…どうかなあと」

【坂井氏】「やりすぎ…」

【山田氏】「やりすぎです、はい」

 

・青健法の理念は、マンガ・ゲーム・アニメ規制に直結する

【山田氏】「で次に、もう一個大事なのが、ちょっとすごい、チョーポイントなのがここなんです。理念の2項の第三条(注:正しくは「青健法第二条の3項」)というとこなんですが、条文にはですね、えー『青少年の健全な育成については~』とあって、『特に、』ここからです、あのー出しましたが『十八歳未満の青少年に対しては、良好な社会環境の整備が図られるよう配慮されなければならない』と。もうまさに何をしたいかってのがはっきりしてると、ねえ、十八歳未満の青少年に対する、えー、社会環境整備って何かって簡単だよねと。マンガ・ゲーム・アニメの、今の、あの、青少年健全育成条例に、基づく内容を、法律でもやりますよってこと以外、ないんだもん。(中略)十八歳未満に対する対象って、実際に、具体的にこれ書いてないけど、なんなのかっていったらば、同じ、あの、ねえ、条例なのか法律なのかっていう名前を貰ってるものの、実績から見たらば、マンガ・アニメ・ゲームを、あのー、精査しようってことでしょ?結局は」

【坂井氏】「まああとはブルセラと、あと銃とか、なんかそういう奴です」

【山田氏】「銃って何?偽物の銃?」

【坂井氏】「いや本物の銃(中略)本物の銃ってのはアレですよあの、えー、BB弾とかが入ってる奴(エアガン)。ああゆうのを規制しようって、まあ、そういう奴」

【山田氏】「ということで、あの基本的にこの理念の、えー二条の3項ってのは、もうかなーりヤバイな、と」

 

・青健法は、マンガ等の規制基準を最高レベルに引き上げる?

【坂井氏】「(午後)九時以降はカラオケ行っちゃいけないとか、そういう…」

【山田氏】「ああ、そういうのも(規制対象になる可能性が)ある」

【坂井氏】「親と一緒でも(午後)十時以降は行っちゃいけないとか…」

【ゆさめぐ】「が、追加されるんですか?」

【坂井氏】「元々、(一部の都道府県の)条例には(有害図書・ブルセラ・エアガン・深夜カラオケに関する規制が)あるんですね。まあそういう奴を、こう」

【山田氏】「全国で。で今は、都道府県で(規制の基準が)バラバラだから、それが、ぜーんぶ厳しいものに当たる可能性もある、と(※3)」

 

※3:2014年の山田氏の解説や、今回の山田氏の解説(後述)を聴く限り、ここで山田氏がいいたいのは、「各都道府県の青健条例の規制基準のうち、もっとも厳しい基準を青健法では採用する可能性がある」「そうなった場合、青健法は全国の青健条例の『親法』なので、全国の青健条例の規制基準が上書きされてしまう」ということであると読み取れます。

 

【山田氏】「で厳しすぎちゃいけないっていう京都方式みたいなのもあったんだよね、問題がある場合には事前に『問題があるよ―』っていって取り締まっちゃうんじゃなくて、それで、えーと自主的な、あの対応を求めるっていうことも、全部ダメになっちゃうからねこれで。だからすごく配慮をしていた都道府県に対しても、変に(基準がバラバラに)ならない様に、あのそういうものも全部一律になってしまうという可能性があるということで、ちょっと何ともいえない」

【ゆさめぐ】「あ、今はバラバラなん…」

【山田氏】「バラバラなんですよ、(基準の)レベルが。だから一番厳しいといわれてるのは長崎県ね、あのー、から、一番まあ最近作ってゆるいといわれてる長野県…」

【坂井氏】「まあ長野県はあまりマンガとか…」

【山田氏】「ない。ないに等しいです。えー、ゆうところも含めてですね、これ一律になる可能性があるし、多分取り締まる側は一番厳しいところにあってっちゃうんだろうね、ということです」

 

・青健法は、親から虐待される子どもの環境を悪化させかねない

【山田氏】「はいじゃあ次(中略)、青少年健全育成基本法の変更点なんですけども…(中略)五条。ちょっとこっち見て下さい」

【坂井氏】「五条ここにあります、『保護義務』(注:正しくは『保護者の責務』)って奴ですね」

【山田氏】「これがねすごい、いいですか、『親権を行う者』云々(その他の)『青少年の保護者は、青少年の人間形成にとって基本的な役割を担うことに鑑み、』と。基本的にこの法律は、『親が対応します』と。裏を返すと、『親の責任・義務』が強くなるんですよ。親の発言権が強化されると。親が青少年に対して『人間形成にとっては重要だから、どんどんやりなさい』といってるんですよ」

【ゆさめぐ】「ダメ親だったらもっとダメになる…」

【山田氏】「そうなんですよ、そうなんですよ。だから、僕は、『親』という前に『社会』がっていう風に、僕あの児童養護やってきてるからね、で虐待の問題なんかもやってきてる、結局虐待するのは親ですから、子どもに対して、ね、それが何万件という風にある訳ですから、ね、全ての(親が)まっとうな親とはいい切れない訳で『社会が』という風に文脈を作るべきだってのが児童養護の専門家からすると、文脈なんですが、なんとなくやっぱり『親』のっていう、非常に、こう、なんか、ちょっと思想的というか、すごくこの『家庭』前提みたいなものの回帰っていうのを、まあ感じざるを正直得ないなと。まあいい悪いはいいませんよ?うん…でもそういうことはあるのかなあ」

 

・青健法は、各種の規制・抑圧を本気で行うつもり

【山田氏】「それからですね、じゃあちょっと条文の順番ごとにですね網羅的に見ていきますが…あとこの辺がヤバイです、十三条の1項と2項なんですけども…えーとですね、十三条の1項は、えー『国』とか『地方公共団体(=地方自治体)』は『青少年の健全な育成に関し』て、えー、要は、対応しろと。なんかしろと。活動しろと、積極的に。つまり、国もともかく、『都道府県も、これについてやれよ!』ってのを法律で定めちゃうと。次にもっとすごいのが、これ(2項)です。えー『国は、』それ(1項の規定)を前提とするどうのこうの『を推進するものとして、青少年の健全な育成に関する強調月間』、まあ簡単にいうと強化月間、『強調月間』を設けると。なんかプロジェクトをやってどんどんどんどん前に進めようということで、かなり強力にやる気満々というものなんですよね」

 

・青健法は、国連等の「外圧」を受けた規制を積極的に推進する

【山田氏】「それから次、十六条もヤバイね。これはねえ、もうかなりヤバイですよ。どっかの団体を、意識してるんじゃないかってくらい笑えないくらいすごい。十六条、『国際的な協力のための措置』。いいですか、これはびっくりしますよ、いいですか、『国は、外国政府又は国際機関との情報の交換』と、『その他青少年の健全な育成に関する国際的な相互協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする』、と、これはヤバイですよ…」

【坂井氏】「『国連勧告のヤバい奴を受け入れろ』(※4)、って簡単にいえばそういう話…」

【山田氏】「そう。これは、ヤバイですよ、これは…で、これは『努力するものとする』ってのは『やらなきゃいけない』ってのが憲法の解釈からもきてますから、『努力するものとする』『努めるものとする』ってのはこれは強制なんです、法文用語では。『やらなきゃいけない』。だから、あのー、国際的に議論されたものについては日本は別に、条例条約を守ってなくても(注:文脈的に、正確には「条例条約に規定がなくても」?)『相互』の『協力の円滑な推進』のためには(規制や抑圧を)やるんだよ、と」

 

※4:国連をはじめとする海外の諸機関から、日本のマンガ・ゲーム・アニメは「規制すべき対象」として狙われ続けています。直近では2016年に「日本はマンガ・ゲーム・アニメを規制すべき」という意見に繋がる国連勧告が出される寸前のところまで行きました。この辺りの事情については2017年に山田氏が詳しく解説しています。

【山田氏】「だから、今までで国連とか外圧(国外からの圧力)ってのが大問題だっていわれてたんだけど、その文脈が法律に入ってくるっていうことですよ。これから。いいですかこれは…もうね、大変なんですよこの十六条は、とんでもないと。だって、日本の…僕はいいたい、日本の青少年の健全な育成ってのは日本人が考えればいいじゃん

【ゆさめぐ】「うーん…」

【山田氏】「なんで諸外国と連携しなきゃいけないの?諸外国と(日本では)考え方が違うじゃん、青少年のあり方が。ねえ…だって、まだ、日本、未成年・成年の、あの(年齢等の)議論もしている最中だけれども違う訳でしょ、価値観や考え方が。なのに、なんで外国政府とか国際機関との…まあ、別に情報交換くらいはいいけど、そんなこと書くのは大きなお世話だと、だけど、『円滑な推進』のために『必要な措置を講ずる』ってなったらこの条文一個でどんどん(表現等の規制・抑圧を)やられます。こ、れ、は、大変ですよ?今まで僕は外圧でどんだけ(規制を防ぐために)闘ってきたかってことが、全部法律で、(規制して)OKになっちゃうんですよ、この条文だと」

【ゆさめぐ】「ううーん…」

【山田氏】「別に、あの、『憲法通りにやる』っつったって(注:自民党会議にて「青健法は憲法をひっくり返したりはしない」「青健法は憲法上保護されている権利を侵すものではない」旨の説明がなされたことを念頭に置いた内容と思われます)、別に憲法通りですから、これ…ちょっと細かく見てほしいんですよね…」

 

・青健法は、条例制定等の地方自治にすら介入する

【山田氏】「で、いきます、これもそうです。十八条、十九条も、えー…ヤバイです。十八条は、『地方公共団体は、』えー云々と、『青少年の健全な育成に関する』措置を『総合的に推進する』と。これ大きなお世話だと。地方自治なんだと思ってるんだ!?と。法律で、『都道府県は積極的にやりなさい』って書いちゃったって珍しい法律ですよ」

【坂井氏】「あんまりない…」

【山田氏】「ないです。ないです。ないです。これは。で次がですね、これも、これがすごいなと思ったの。十九条。極めつけです。(『地方公共団体は、』)『青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止に関し、』ここですよ『条例の制定その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする』、と。これは…ヒドイよ。なんで青少年の健全育成のことだけが、いわゆる条例でちゃんとやらなきゃいけないって国から法律事項として書かれるんじゃいと…普通条例は条例で各都道府県のあの専管事項じゃないの?と。じゃあ都道府県議会は何になっちゃうのよ!? と。という…こと…だと思いますよ、これは…だから条例も、整備しようっつってる訳。つまり、これは、分かるよね、(全国の)青少年健全育成条例を直すってことです、この親法に、もうそれが準備されてるんですよ…わかります?はい…」

 

・青健法の施策は、国により強力に推進される

【山田氏】「えー…まあここまででもう…ものすごいんですけども…まだあります。ちょっと色付けました(注:手に持っている対照表に蛍光マーカーで線を引いている)けども二十条は、えー青少年健全育成に関する事業を『センター』みたいなのを(地方公共団体が)作って、推進するという…中心母体ができる、と。でこれは、まあ、総理大臣を本部長(※5)として、作るっていうことだから、まあいわゆる政府の、強い権限が与えられるんだけれども、一体誰がやるか?ですよ、これを。『どんどんやれちゃう』ってことですよ(※6)、どんどん。ねえ…」

 

※5:ここで山田氏が言及したのは、青健法第三十四条~第三十八条で規定されている「青少年健全育成推進本部」のことだと思われます。このうちの第三十四条と第三十五条の要点を抜き出すと、以下の様になります。

 

1.内閣府に「青少年健全育成推進本部(以下、本部)」という部署を新設します

2.本部は「青少年の健全な育成」を推進します

3.本部の長(本部長)は内閣総理大臣が務めます

4.「青少年健全育成担当大臣」という役職を新設し、本部の副本部長に就けます

 

「国の部署を新設する」「総理がその部署の長を務める」「大臣も新設する」という気合の入れ方に、「本気で国に『健全な育成』のための施策を推進させるつもりだ」というやる気の強さが見て取れます。

 

※6:2014年の解説で山田太郎氏は、「(青健法には)何はしちゃいけません、かにはしちゃいけませんというのは、基本的にですね、書いてないんですね(文字起こし原文ママ)」という点を問題視しています。国や地方自治体が「これは『青少年の健全な育成に関する』措置・施策として行うことなんですよ」といえば、どんな政策でも通せてしまう根拠法となるのがこの青健法です。

 

・青健法は、「表現規制をするよ」と宣戦布告している

【山田氏】「それから、これもすごいよね、なんかどっかの児ポ法で見た様な話ですよ…えー、いわゆる、(青健法第二十二条の内容を指して)『国及び地方公共団体は、社会環境が青少年に及ぼす影響に関する調査』その他の…えー研究をやれ、と。ね。何だこの研究は…と。『マンガ・アニメ・ゲーム』って書いたらもう(2013年の児ポ法改正案附則第二条)そのままの条文なんです、これ(※7)」

 

※7:2013年に提出された児童ポルノ禁止法改正案の附則第二条1項には、「マンガ・ゲーム・アニメと児童の権利侵害の関係を調査する」と言う内容がありました。山田氏は、「児ポ法の附則第二条1項と、青健法の第二十二条の内容は実質的に同じことをいっている」と指摘しているのです。

なお、児ポ法改正案附則第二条2項には、「調査結果と関係なく、法改正の三年後にはマンガ・ゲーム・アニメの表現規制措置を講ずる」という意味の内容もあり、もしこの法律が通ればマンガ・ゲーム・アニメは壊滅的被害を受けるところでしたが、山田太郎氏をはじめとする多くの方々の反対運動が功を奏し、「附則第二条」は実際の法律に採用されることなく削除されました。その時の経緯はこちらをご確認下さい。

 

【坂井氏】「児ポ法と一緒ですね」

【山田氏】「で、これがもう極めつけです。ここがすごい。二十三条。なんて書いてあると思います?この法律をやるにあたっては、いいですか、『言論、出版その他の表現の自由を妨げることがないよう配慮しなければならない』

【ゆさめぐ】「はい」

【山田氏】「これは、どういうことか…『(表現規制を)やるよ』っつってるんですよ。…つまり、」

【坂井氏】「(表現規制を)やらないつもりなら書かないですからね」

【山田氏】「そう。表現の自由に抵触しそうなことについてもし全く触れないとするんだったら、『気を付けなさいよ』とは書かない。あともう一つは、『やっちゃダメ』とは書いてない。『配慮』すりゃ(表現を規制しても)いいんですよ。配慮しなさい、と…ね。この二十三条は、僕は宣戦布告だと思いますよ。これは、えー、『言論・出版その他の表現の自由を妨げることがないよう配慮』、『妨げることがないように』、『配慮』じゃなくて、『やっちゃダメなんです』と、『妨げちゃ(ダメ)』、『配慮』じゃないよ…と。これはねえ、あの法律用語で、永田町文言では、二十三条は『配慮してるんだから』、あのー、そういうマンガ・アニメ・ゲームをけして、えー『この法律は制限するものではないですーっ!』っていう風にいいたいがために入れてるとしかいい様がないの、これ」

【坂井氏】「本当に(表現規制をするなって)書くなら、『配慮』じゃなくて、『妨げてはならない』って書けばいいだけの話…」

【山田氏】「そう、そう。これはーねえ…あのはっきりいって、『図書館戦争』(注:国家による検閲が法制化された架空の日本を舞台にした小説)ですよ、本当に。これは…」(中略)

 

・青健法は、マンガ・ゲーム・アニメの自主規制を推進させる

【山田氏】「あのー…かなーり、これが通ると多分、結局はどういう風になってくるかっていうと、自主規制なんですよ。この法律でもって云々っていう前に、こういうもの(作品)が(政治家や役人に睨まれて)通りにくそうだ、問題になりそうだってなると、なんか『出版したあとから止めれても面倒くさいから、まあ自主規制しましょう』っていう様な、流れに繋がる。そうすると、自主規制したいのが、基本的には、メディアなんですよ。正直いって。それ(作品)を出してる…そう。だから、メディアは、この自主規制に繋がる様な、こういうもの(法案)に関して、最初から反対する***(聞き取れず)、結局『自主規制するのはお前らだろ!』ってブーメランが戻ってきちゃいます(※8)から、あの結局はこれ、あのー、なんつうんだろうねえ…えー、誰も反対できない構図が、このままで続いちゃうのかな、と…」(中略)

 

※8:山田氏は2017年にこの「自主規制」の問題に触れた際、「実はマンガやアニメが本当に規制される相手は民間対民間」と述べ、「作り手自身や出版社が萎縮してしまったり、あるいは流通業者(Amazon、Yahoo!、Googleなど)やメディア、そういったところが、視聴者をはじめとしたさまざまな人たちからあーだこーだと言われたくないから伝えない複雑な問題があります」と切り出しています。この詳しい解説については下記記事をご確認下さい。

 

 

・青健法の問題を、まず「知って貰うこと」が大事

【山田氏】「皆さんもですね、あのー…まあ、『こういう問題がある』ということを、まず知って貰うと、冷静に。ギャーギャーワーワー、あの…イデオロギーチックにやっても潰せないので、まずしっかり、えー、マンガ・アニメ・ゲームを守るために、あのー…こういう、これ(青健法)の何が問題なのかっていうことを、しっかりですね、えー…そう、伝えるっていうことですよね…そう…で、そうなんですよ、マンガ・ゲーム・アニメだけじゃなくて青少年の健全育成に、なんとなく、資することのない、不良っぽいもの(注:先述のブルセラ、エアガン、深夜カラオケetc)は、みんな引っかかっちゃう可能性あるんですよ、これ誰かがいえば。こん中(=青健法の仕組み)を構成する、多分組織の委員が、取り上げればそういう世界になってちゃう、下手すると。それがやりやすい様なもん(法律)なの。だから、BL(ボーイズラブ)みたいなものなんてまずは一番最初に取り掛かってくると」(中略)

【坂井氏】「まああとでじゃあ、この…取り敢えず、この『新旧対照表』っていうか変更点一覧みたいな奴、これ山田さんの奴(アカウント)でURLはツイートしておくんで」

【山田氏】「はい、はい、そうゆう風にしときましょう。でこれをみんなで見れる様に、えーまあこの変更点の纏めた奴ってのを、ちょっとなおした奴をね、上げときたいという風に思っています、はい」

【ゆさめぐ】「twitterではどんどんもう皆さん自分の言葉で『知って下さい』っていう風には書いて大丈夫ですか…」

【山田氏】「そうそうそうそうそう、はい、そういう風に思ってます」

【ゆさめぐ】「ぜひ皆さん宜しくお願いします」

【山田氏】「はい。ということで、えー、まあなんとか、あのー、がんばってやっていくしかないと…思います。あとは、えーと、かつてですね、えーと、虹乃さん(注:2014年に山田氏の青健法解説を文字起こしした虹乃ユウキさんのこと)が纏めてくれた『二次元規制問題の備忘録』(というブログ)の中にも、えー条文解説が細かく、文字で(起こされている)

【坂井氏】「あ、そうですね」

【山田氏】「自分もね、何が問題だったか忘れちゃうのよ、たまに(笑)。そうすっと、これを、あの、昔喋った奴を、自分が喋った奴を、文字にして貰ってるのがあるので、これもセットで、あの、見て貰うとですね、あの分かりやすいと思いますので、はい」(後略)

 

―文字起こし以上―