「サロメ」 

2002年/スペイン


月影の舞

その妖しい美しさで義父ヘロデ王の心を奪って離さない
王女サロメは、月の光のもと、
七つのベールの踊りと引き換えに洗礼者ヨハネの
生首を所望する……。


幻想の怪奇世紀末文学 オスカー・ワールドの
傑作「サロメ」が
フラメンコとバレエの華麗な融合で甦る。


監督はスペインの巨匠 カルロス・サウラ。
サロメ役には元スペイン国立バレエ団芸術監督にして
伝説のフラメンコ・ダンサー アイーダ・ゴメス。


アイーダ・ゴメスから、舞台「サロメ」の演出を依頼された
カルロス・サウラは、並行してフィクション映画を提案して
できた映画。

舞台の単なる映像化ではなく、ドキュメンタリーも交え、
虚実入り乱れた映画。


舞台監督、振付師、衣装係、音楽家、ダンサーたちに
それぞれの生い立ちや舞台での役割や想いを
インタビューする。



三枚の大きなパネルを使い、後ろからライトをあてることで、
月や太陽を表したりする光と影の演出方法。
大きな鏡を効果的に使った大胆な演出。

衣装の色合いの意味や効果なども語られ、
舞台裏に関してはとても勉強になる。


ダンサーの練習風景、演出方法など、
言葉を使わずに音楽と身体表現だけで“感情”を表し、
物語世界を見せて行く。

それは素晴らしい肉体表現であり、
美しいダンスである。


しなやかな身体つきのダンサーたちはパレエの色合いが
強いが、長いスカートと床を打ち鳴らす力強い足さばきは
フラメンコ特有の味わい。


ダンスには魅了されるのだけど、
やはりこういうドキュメンタリー形式だと、
せっかくの幻想的な「サロメ」の物語には入り込めないのが残念。