「デイジー」
  2006/韓国

デイジー

デイジーの花を毎日届けてくれる人を運命の人と
信じ、待ち続ける画家のヘヨン。
彼女の前に現れた素性を隠した捜査官と、
彼が追う暗殺者の男。
この三人の愛がからまっていく悲恋もの。


「私の頭の中の消しゴム」で夫役を演じた
チョン・ウソンが今回は暗殺者役で、またも
泣かせてくれる。
彼のいたずらっ子のような微笑みが魅力的。

主人公の女の子は画家。
その画家であることで、「絵」が小道具として、
いろんなモチーフや伏線になっていて、
シナリオ的にうまいなあと勉強になる。



ヘヨンが言う「あなたの顔はもう見ないでも描けるわ」
って言うのが、なんか、いい。


最初は画家のヘヨンの視点、そして、捜査官の視点で
語られ、最後に暗殺者の視点が語られていく。

カメラワークや設定がそれぞれに活かされていて
複雑にからみあっているところがおもしろい。


舞台はオランダ。
緑の草原にデイジーの花が咲き乱れる
田舎の美しい風景もいいけれど、
18世紀の建築物が並ぶ趣のある町並みすてき。
骨董品店やアトリエなどもとってもいい感じ。


暗殺者という非現実的な設定で、ツッコミどころは
あるのだけど、素直な気持ちでベタな流れに
身を任せるのもいいかも。

しかし、韓国映画ってモノローグが多い。
わかりやすいっていえばわかりやすいんだけど、
何でもかんでも説明しなくても……。


シナリオ講座で学んでると、モノローグ多様はダメって
言われるのにね。
死んだ後でモノローグ入るから、
自殺してて、遺書でも朗読してるのかと思ったり、
ラストでエンドロール流れて、
今度は歌詞でも語る。語る。


タイトルの「デイジー」はお花のデイジーの意味。
デイジーの花言葉は“秘めたる愛”。
もうこれだけで、せつなさ倍増。


影からそっと見守るだけの男。
一歩間違えば一方的なストーカー愛だけどね。

「僕は、子どものように彼女を喜ばせたかった」とか、
「僕は、彼女に一度も見返りを求めたことはなかった。
 ただ、彼女のそばにいられるだけでよかった」
とか
の台詞をはく暗殺者男。
そんなアガペな愛を貫く彼に自分を重ねてしまう。


いやあ、韓国の悲恋ものだから、
ベタだけど、途中から感情移入しすぎて、
涙がとまらなくて、ラストでは号泣。

メイクがくずれて、鼻が真っ赤……。


パンフにあった脚本家がこの脚本に込めたメッセージ。
「傷つくことを恐れて、恋すること、愛すること、
 誰かを想い続けることをためらわないで。
 だって未来は自分の手でいくらでも変えられるのだから」