北の零年」★ネタバレありあり★


豊川悦司ファンなので、見方がちよっと
ヨコシマだけどつらつらと感想を。(長いっ)

よくも悪くも吉永小百合映画。
吉永さんの役どころが実に強い女。
ヒロイン小松原志乃は凛として、一途に夫に尽くし、
夫をたて、頑なに貞操を守り夫を待ち続けるという
まさに男にとっての理想の妻像だ。
しかし、あまりに強すぎて人間味が感じられない。
「自分たちの国を作るんだ」という夫の夢
を支えに必死でがんばってきた女。
しかし、男は妻子を捨てて札幌で名前まで
替え、新しい妻子をつくり政府の手下になっていた。
それどころか、戻ってきて女の育て上げた
馬をも取り上げようとする悪人になっていた。
渡辺謙の徹底した悪人ぶりがすごい。
そして「所詮、夢は戯言」と言う。
でも、女は「夢は強く願えば真になります」と。
ここは、泣けました。
使い古された台詞ではあるのだけど、苦労して
きた女がいうことで言葉の重みが増す。
信じてきた男に裏切られたとしても
その男の夢がすでに女の夢になっていたから、
夢をもっていることて強く生きられたんだと
思う。

吉永さんのおだやかな寝顔で始まるこの映画。
キスシーンあり、レイプシーンあり、過酷な
雪のシーンありと苦難に告ぐ苦難の連続をしいられ
吉永ファンにはたまらない。
キスシーンは、月明りの下で、渡辺謙が、
吉永さんを膝にのせて、ちゅゅゅーうって。
けっこう濃厚。見ているこっちが大赤面。

そして対照的な役どころが石田ゆり子。
夫を見限り、悪徳薬売りの倉蔵(香川照之)に身を売る。
男に依存するしかできない女・・・。
しかし、彼女は子どもを宿しているため
母性という意味では強いのかもしれない。
夢を追う男に対して「夢なんてしょせん夢。
私は私をお腹いっぱいにしてくれる男を選ぶ」
というようなことを言う。(ここの台詞うろおぼえ)
倉蔵は悪人だけどいい味だしてて憎めない。
それにモロイしね。
強がっている男ほどモロイのだ。
そこがかわいいのでもある。
香川照之のサービスショットはふんどし姿。


豊川さんは今回、とてもかっこいい。
ヒロインを影から見守り、危ないところで
いつも助けるというまさに正統派ヒーロー役。
ずっとアイヌ人の格好をしているが実は侍で、
ラストの方で侍姿を披露。
「この命、この地で散らす」と叫び、鉄砲隊に
立ち向かう。かっこよすぎ!!
でも、撃たれそうになって志乃に助けられる
んだけどね。
ここで志乃と気持ちが通うんだけど
台詞では言わせないとこがいい。
手の演技だけでわからせる。
「生きてください」という志乃の台詞。
「好き」とか「待ってる」とかじゃないとこがまたいい。
いいシーン。涙する。

淡路から北海道に移住してきて、開拓しながら
殿様を待つ侍たち。
しかし、廃藩置県で殿に捨てられ、愕然とする皆に
小松原(渡辺謙)が刀を振り上げて叫ぶ。
切腹するかと思いきや、マゲをざくりと切る。
「主君などいらぬわ~」って。
で、皆も続いて次々にマゲを切る。
けっこうここは緊張していいシーンなんだけど
ざんばら髪で落ち武者はちょっとマヌケ。

脇役も個性派ぞろいで、それぞれに見せ場がある。
平田満は農民の役で地味なんだけど、やはり見せ場あり。
せっかく実った田畑にイナゴの大群が押し寄せてくる
シーン。
豊川さんが「火をつけろ」ってタイマツをふりかざす。
でも、イナゴは大群なのでなかなか去らない。
で、平田が「俺の稲を~」って怒り爆発して、
桶の液体をかぶり、自分の身体に火をつけ
火達磨になって、田畑にダイブ。
いやあ、すごい「蒲田行進曲」の階段落ちシーン
ほどの迫力。
でも、桶の液体は油? それとも肥え・・・?

最初は2時間40分かあ、長いなあと思ったが
泣かせどころはちゃんと押さえていて
小さなエピソードも満載だったので
だれることなく観られた。