「新・自虐の詩 ロボット小雪」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

映画化もされた「自虐の詩」は私の中では、
ダントツの名作四コマ漫画。
その新バージョンが出たと某新聞の
マンガ評欄にあったので早速読む。


「新・自虐の詩 ロボット小雪」
  業田 良家:著
竹書房/2008.7.30/952円

ロボット小雪
この格差という社会のシステムは人間を幸せにするのか?
純粋な感情を持ったロボット小雪を通して描く
衝撃の未来像(ものがたり)、
鬼才・業田良家がこの国の未来を描いてしまった!!
               <帯より>



オリジナルの「自虐の詩」とはちょっとテイストは
違うけど、四コマで、ずっとストーリーとして
つながっているという形式は同じ。


近未来のお話。

主人公 拓郎の彼女はロボットの小雪。
友達の広瀬君には最新性能のロボットの彼女。
幼馴染の仁子にも彼氏ロボットがいる。


拓郎の母親は、ロボット開発もする大手企業で
働く忙しい人だから、父にも恋人ロボットを
あてがっている。


そんな世界。


前半は、拓郎と小雪とのふれあいや友達や家族、
周りとの関わりがコミカルにギャグタッチで描かれている。



拓郎の“小雪”だけが旧型で、完璧じゃないロボットで、
その不器用ぶりが愛くるしく描かれている。



そして、後半
拓郎の友人の広瀬君が、株の暴落で夜逃げする
ことになったあたりから、ダークでシリアスな
展開になっていく。


極端な格差社会、貧富の差が激しくなる世界を
描いていて、「向こう岸」と呼ばれる自己破産者ばかりが
集い、治安が悪く、劣悪な状況の地域だ。

ロボットも手放し、過酷で危険な重労働などをしいられる
人たち。


小雪はだんだんと「心」を持ち始め、
友達である広瀬君を助けるために
その「向こう岸」と呼ばれる地域へ乗り込んでいく。


そして、小雪の運命やいかに!!
ジャカジャン




やっぱり泣かせてくれるわ、業田良家。


小雪が乗り込んでいくとこからは
なぜか「金八先生」の名作『腐ったミカン』のあの回で
加藤くんが暴れだし、スローモーションになって、
中島みゆきの「世情」が流れる
っていうシーンが重なり、
涙してしまった。


どんなに高性能で、美しく自分の想いのままになる
ロボットでも、生身の人間とはやはり違うのか。


絶対に自分に反抗しない従順さは、うれしいものなのか

虚しいものなのか。

自分の恋人や配偶者がセックスも可能な魅力的な
ロボットとつきあっていたら、嫉妬するのか。


ロボットと人の共存の中で、人とロボットの違いって、
「心」を持つか持たないかだけなのかとか
いろいろ考えさせられた。



なぜ、小雪だけが、「心」を持つようになったのか。
その理由が明かされていく時はせつないほど胸に
沁み入って泣ける。



★「自虐の詩」映画の感想

http://ameblo.jp/tsukikagenomai/entry-10057338509.html



「南極1号伝説」という本を読んで、
リアルドール愛好家のことを深く知り、
人形と暮らす、人形を愛でる人にとても興味がある。


★「南極1号伝説」の感想
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10115720915.html