「封印作品の謎 2」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「封印作品の謎 2」
  安藤 健二:著
  太田出版/2006.3.21/1480円


封印作品2.

「失われた物語」は、まだ存在する。
あらゆる“名作”が発掘・復刻され尽くされつつあるなか、
それでもいまだ目にすることができない一部の作品たち。
彼らは、なぜ「封印」されたのか? 
「キャンディ・キャンディ」「ジャングル黒べえ」
「オバケのQ太郎」「サンダーマスク」の
4作品を取り上げる。

「禁じられた」物語たちを追って大反響を呼んだ、
シリーズ待望の第2弾!!
                <帯より>


「封印作品の謎」で綿密な取材で大反響を呼んだ
著者の第2弾。


今度は四作品と取り上げた作品は少ないが、
その分中身が濃く、取材も深いところにまで
迫っている。


前作では、作品そのものにタブーとみられる表現
があるために封印されているものが多く、
封印の原因もわかりやすかったが、今作は
作品そのものに問題はないのものや、
なぜ封印されたのかの原因があやふやなままのもの
ばかりである。
それだけに著者の探究心をゆさぶるのであろう。


「キャンディ・キャンディ」の原作者対漫画家の対立は
裁判になったもののいまだに決着されてないままなので
作品としては永遠に封印がとけない。

漫画原作に関わったことがあるだけに、この作品の封印の
経緯は興味深いし、考えさせられた。
創作者としてのこだわりと、作品への思いとは裏腹に
さまざまな問題が折り重なって、封印への道を歩む過程が
入念な取材や資料から書かれていく。


裁判への過程など、原作者のHPやネット上で、
この事件のことはずっと読んでいたが、その後改めて
著者の取材文を読んで、深いところにまで入ってることに
感心した。

特に“漫画原作システムの孕む矛盾”の章は、生々しく
迫っていて、共同で表現していくことの難しさを実感した。

「子争い」の話を持ち出して、「キャンディ」裁判と重ねていた。
確かに本当に作品を愛していたら、どうするべきかわかるはずなのだが、
愛しすぎて固執した結果、その作品が引き裂かれてしまったのだ。


「ジャングル黒べえ」に関してもまったく納得がいかない。
理由があいまいなままでの封印である。
昔、テレビで見ていただけに、なぜあのキャラが、
封印なのか不思議に思う。
他の藤子作品の中でも異例の作品らしく、
漫画よりテレビ企画の方が先だったことにも驚く。
だから、作者はテレビにあわせて描くから、
描きにくかったと語っている。
そのあたりも作者サイドにも何かあるのだろうか。
結局は明確な封印理由はここでも明かされなかった。




「オバQ」の封印理由も明確にはされていない。
黒べえと同じく「黒人差別問題」ということが
メインになっているようだが、それだけではないようだ。
キャンディ同様、出生の秘密、合作の問題がかなり
関わっているようだと分析し、その部分に切り込んでいる。

「オバQ」は知名度が高い分、関心度も高い作品なはずなのに
さまざまな問題があるようで、謎は多い。
資料は豊富だからか、漫画のキャラの作画分担表とか、
雑誌別分担なども掲載されている。



★「封印作品の謎」の感想はこちら
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10004797170.html