チベット文化の死生観 ~理塘の鳥葬~
みなさんは『鳥葬(または天葬、英語では空葬/Sky burial)』という言葉を知っていますか?
“葬”という字が付くように、死者の埋葬の仕方の一つである。
日本では一般的には火葬、欧米では土葬となっているが、
ここチベットの高山地域では、鳥による埋葬を伝統的に行っている。
鳥葬とは、簡単に言ってしまえば、僧が弔いをした後、
死者の肉体をハゲタカに食わして、生態系の自然循環に組み込むことをいう。
チベットの人々は、死者の肉体と霊魂を鳥が天まで運んでくれると信じているという。
まあ、一説には高山のため薪の確保が困難なためという話もあるが、
どちらにしろ、チベット人の間では今も続く大切な宗教行事である。
この鳥葬を理塘(リタン)では見れると聞き、稲城からやってきた。
理塘の町は4,000mの高所にあり、
町の規模は稲城よりは大きいが、それでも街中は歩いて全て周れてしまう。
理塘は昔から屈強&信仰心の強さが有名な町で、チベット蜂起の際には過激な暴動が起きたり、
中国侵攻時に最後まで抵抗したゲリラ組織「チュシ・ガントゥク」の総司令官の出身地であったりもする。

理塘の町
鳥葬は月・水・金のいづれかの日に行われるらしいので、
僕はそれに合わせて木曜日に理塘の町に到着した。
ただ、正直それに合わせて来たのものの、『鳥葬』を見るかは少々迷っていた。
みなさんも容易に想像つくかと思うが、いくら観光客も受け入れているとはいえ、鳥葬とは埋葬である。
そんな埋葬を見ず知らずの興味本位だけの観光客が見に行くことには、少々の抵抗がある。
さらに、その埋葬の仕方にも、抵抗が・・・。
死者の体をナイフで切り裂き、鳥が食べやすいようにしてから、鳥に与えるという。
これを見た友人の話では、『人とはタンパク質の塊である』と述べた。
どちらにしろ、鳥葬は到着の翌朝の予定だったので、
とりあえず、到着日は町の北側にあるゴンパへ行くことにした。
町のメインストリートから歩いて20分ほど。
町を見下ろす高台に、ゴンパは建っていた。

理塘にすむ人のほとんどはチベット人

ハット集団

手持ちマニ車は、散歩の必需品

今までの町の中で、一番マニ車率が高かった

子供が食べてたアイスが気になる・・・

僧が日常にいる生活@ゴンパへと続く道

ゴンパの入口にあったマニ車

マニ塚と白塔
ここのゴンパは門から一足入っただけで、今まで見てきたゴンパとは違うことに気づく。
このゴンパからは、生活感が漂っているのだ。
今まで見てきたゴンパは、信仰の対象としての役割が大きいように思えたが、
理塘のゴンパは、まず門を入ると僧たちの住居があり、本殿奥には学校もあった。
そう、まるでゴンパの中が一つの村になってるような感じだ。
ゴンパにいる僧たちは僕を温かく迎えてくれ、早速本殿の中を案内してくれた。
本殿に入ると、すぐ目に飛び込んできた、とある写真・・・
中国国内では崇拝を禁止されている“あの御仁”の写真だ。
『いいの?』と聞くと、『私たちはいつも繋がっている。大丈夫だ』と言っていた。
本殿の中は、今までのゴンパ同様色鮮やかで、ちょっと草臥れているところが、また良かった。

ゴンパの本殿
本殿見学の後も、僧の生活を教えてくれたり、ゴンパの奥まで通してくれたり、
終いには、若い僧が部屋まで招待してくれ、お茶までご馳走になった。

本殿前の住居

僧の一日の生活を教えてくれた

奥へと続く道

奥にあった住居。雰囲気的には寮みたいな感じだった。

若い僧は3人部屋。部屋にも“あの御仁”の写真が飾ってあった。

色々情報を知っていて、好きなスポーツはバスケ、好きな選手はコービーと語ってくれた若い僧

あなたはほんとに僧か??キャップとかストールとか、色々アイテムを持ってた
ここまで生活感のあるゴンパは、ほんと初めてだった。
案内してくれた僧にお礼を言い、軽やかな気持ちでゴンパを後にした。
ゴンパを後にした時、自然と『鳥葬』を見るか否かについて、心の中で決まっていた。
『見るのは自粛しよう』
今まで、何事も経験だと思い、様々な宗教行事やイベントを見てきたが、
今回だけは、経験するより尊ぶことを選んだ。
見ないと決めた後、町の食堂にいたチベット人とも話したが、
あるチベット人は、鳥葬の時に観光客が節操もなく写真を撮る姿に憤りを感じると言っていた。
本来、鳥葬は写真を撮ることは禁止だが、実際はそんなことお構いなしの観光客が多い。
特に酷いのが漢民族で、自分も一緒にフレームに入って、記念撮影する人もいるとか。
さすが、漢民族っ!!
そういわれた後、たぶん僕も『現場にいたらカメラを出してたな』と思った。
ただ、よくよく考えれば、逆の立場だったら、たまったもんじゃない。
なぜ、見ず知らずの観光客に写真を撮られ、
終いには顔や体は写らないにしても、ネットで公開されなければならないのか・・・。
(↑たぶん、見てたら何枚か写真を撮って、グロくないものをUPしてたと思う)
自分だったら絶対にヤダ。
改めて見ないことを心に誓ってから、翌朝理塘を後にした。
※『鳥葬』について知りたい人は、こちらをクリック!!
今まで自分の埋葬方法なんて考えもしなかったが、『鳥葬』だけは絶対ヤダなと思った・・・

ヤクのステーキ。肉は意外と美味しかったが、衣の油がいかんせん多かった・・・
≪鳥葬について≫
『鳥葬』は町の北西にある丘の中腹で行われる。
町からタクシーで10分20元、徒歩で1時間弱。
一応、月・水・金に行われると言われているが、もちろん状況次第。
開始時間は、7時という人と9時という人がおり、実際は日によるらしい。
ただ多くの場合、予定より遅れるらしいので、それなりに待つ覚悟で。
≪稲城→理塘≫
この間だけを結ぶバスはなく、康定や雅安行きバスを途中下車する。
ただバスの時間は朝早く(6時のみ)、チケットは当日でしか買えないなど、不便が多い。
しかも多くの場合、朝行っても『メイヨー(ない)』と言われる。
よって、この区間で便利なのが乗り合いタクシー。
所要2時間半で、料金は50元だった。

バス出発時間の6時ちょっと前。まだ暗いし、眠い・・・。

結局、僕も当日のバスチケットは取れず、乗り合いタクシーで移動した。

稲城のバスの時刻&料金表
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