先日、ベンチャー企業でCFOをされている方の話を聞いた。

曰く、CFOの役割とは、CEOに対して「ダメなことをダメと言う」こと

であり、CEOが抱く経営戦略の「イメージをロジックでサポートする」

ことだ、と極めて論旨が明快だった。


彼自身CFOになるのに役立った経験として、飲食店舗での皿洗い

や店長などの現場経験、コンサルティング経験、幅広い業種・企業

での実務経験、事業会社での研修(財務・経理など)を挙げていて、

「無駄な経験はなかった」と今になって実感している、とのことだった。


入社3年で3分の1が辞めるとか、第二新卒というキーワードで転職

を奨励する人材ビジネスが席巻しているが、同じ会社が新卒採用や

社員の定着率を上げる為のプログラムも提供していたりする。


自分自身は、まともなキャリアを歩んでいる訳ではないが、今になっ

て思うことは、目の前の仕事にベストを尽くした経験によって、少しづ

つスキルが身につき、今の仕事に確実に役立っている。


高い目標を持ち、キャリアを積み上げていくことは人生の充実感を

得る上でとても重要なことである。しかし、気をつけなければいけな

いのは、成功者も最短ルートを辿っている訳ではない、ということで

ある。明らかに遠回りであっても、目の前の仕事を天職として使命

感を感じ、ベストを尽くすことが、唯一の成功法則だったりする。

特に30代前半までは、目の前の仕事との関わり方が重要だと思う。


ベンチャー企業に転職してくる人の定着率は低い。サラリーマン

根性が染み付いた月給取りが働き続けることは、到底無理である。

月給取りの思考特性・行動特性は、志の低さに集約される。

志の低さとは、セコイことであり、単純に損をしたくないだけである。

本人自身は、被害者気取りだが、その実のところはどうだろうか。


月給取りは、働きに見合った報酬かどうかを常に気にする。長期的

に見れば、バランスは取れているのだが、報酬以上に働いた瞬間を

とらえて貧乏くじを引いた、と叫び回る。ほとんどの時間を会社に食

わせてもらっているのに、借金は忘れ去り、貸しだけを覚えている。


月給取りは、会社の中で他人より損をしたくない。根拠もなく、自分

が一番厚遇されるべきだと信じている。長期的に見れば平等なのだ

が、被害者意識は旺盛である。他人に対する高い評価は嫉妬の対

象となり、足の引っ張り合いが発生してしまう。長時間労働は、自分

だけが働いている、という唯一の拠り所になる。


月給取りは、働いて身につけたスキルを無駄にしたくない。会社の

おかげで身につけたスキルなのだが、その恩は忘れている。スキ

ルを無駄にしたくないので、同業での転職になる。同業で競合し、

元の会社に損害を与えることは視野に入らない。


月給取りの価値の尺度は、常に外にある。自分の内面に「志」

という基準を持っていれば、外のことは笑い飛ばせるはずである。

やりたいことを仕事にしていれば、他人の事は気にならない。

初志貫徹していれば、過去の経験に無駄なことはない。


キャリアの効率を求めて転職してはいけない。無駄と思える仕事で

も一所懸命に取り組めば、スキルの積み上げに繋がり、キャリアを

アップさせていく。カメがウサギに勝てた秘訣はキャリアにも通じる。

2007.4.15