人間の判断は、基本的に相対的な判断である。基準より上か下かで

良し悪しを判断する。従って、何を基準とし、どういう物差しを持つかが

重要になる。人間は、価値観という、それぞれ異なる物差しを持つ。


高い志を持ち、いい物差しを持っている人や企業は、きちんと成長を

遂げていく。同じような経験をしても、物差しの違いで、その影響は

大きく異なる。成長の機会を活かすかどうかの差は大きい。


また、当事者は主観的な評価に偏り、部外者は客観的な評価に偏る。

IPOを目指す企業は、客観的な評価に耐えうる企業でなくてはならない。

雪印の社長が、不眠で頑張っていることを強調した結末は記憶に残る。

主観的な評価を強要されると、部外者は不快感さえ覚える。窮地に陥っ

た時にこそ、個人が本当に持っている物差しが露見する。


現場で働く人間のモチベーションは、主観的な評価で高められる。

人間は理解を示してもらえる人をリーダーと認める。お互いに認め

合うことが、良好なコミュニケーションを生み出し、成果に結びつく。

単なる馴れ合いは心地いいだけで、社外の理解を得られるものでは

なく、本当の成果は生み出さない。カルト集団の反社会的な行動は、

そのいい例である。集団内部の常識が、社会的には非常識になる。


主観的な評価と客観的な評価との折り合いをつけるには、志を高く

保つことが有効である。主観的な志が、客観的に高く評価されるもの

であれば、当事者の努力は部外者に理解され、協力を得られる。


ベンチャー企業の置かれた状況はさまざまである。

資金繰りに困り、月末を越せたことだけで安堵する企業もあれば、

億単位の利益をあげていても、利益率の向上を目指す企業もある。


企業の成長は、経営者の主観的な評価のレベルアップで推し量る

ことができる。そのレベルが部外者の客観的評価に耐えうるものに

なれば、IPOの有資格者といえるだろう。


高い目標を持ち、現状に満足することなく挑戦を続ける経営者を

応援していきたい。きちんとした物差しを持っているかどうかによ

って、企業成長を推進できる経営者かどうかが決まる。

2006.9.3