投資先を成長させるには、強みを活かしきることが重要だと思う。

ドラッガーも「強みをフル活用し、弱みを気にしない」組織を薦めて

いる。他方、ベンチャー育成の現場では、弱みの矯正だけが行な

われ、出資をした見返りに罰を受けろと言わんばかりに、したくない

ことを強要する場面が多い。そういう扱いには、血気盛んな起業家

といえども、すぐに骨抜きにされる。


したくない事を強要されて、人間がやる気を起こすものだろうか?

弱みが矯正されただけで、本当のやりがいを感じるのだろうか?

やらされる立場を経験したことがあれば、答えは明白である。

もともと、起業したりベンチャーで働く理由は、したくない事をやり

たくなかった訳であり、保身重視のサラリーマン・キャピタリストの

理屈で投資先を指導するのは、明らかな間違いである。


投資先の成長にとって必要なことは、投資家の包容力である。

問われるべきは、起業家の資質ではなく、投資家の信念である。

信頼して投資をしたのであれば、確固たる信頼でなければいけ

ない。信念を貫くためにも、起業家を全面的に支援していく必要が

ある。そういう関係性の中でこそ、真っ当な成長戦略が共有できる。


成長するには、嫌なこともしなければいけない、と物知り顔で語ら

れることもあるが、本当の成功法則を知らないだけである。

苦労は買ってでもしろ、ということが適切な場面は限られている。

強みに磨きをかけることが成長の近道であり、したくない事でも

やってくれる人を集め、組織化するのが、成長させる王道である。


戦略の「略」は省略の「略」である。

やらないことを決めることこそが戦略のポイントとなる。

したくないことが何かで、起業家の持つ本当の価値観は表される。

2006.3.5