【ビッグ・フィッシュ】 | ついてる男たち〜きっとリターン〜

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イサオの脱鬱コラム・映画批評&アツシのイラスト。きっと週1更新。

監督: ティム・バートン
製作年度:2003年  製作国・地域: アメリカ  上映時間: 125分




【※ネタバレ含みます。知りたくない人は右上のバツを押すべし。】



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巨大魚の伝説、洞窟の巨人、桃源郷に住む桂冠詩人、運命を知る魔女、
ベトナム生まれの美人のシャム双子、妻となる女性との出会い・・・

ジャーナリストのウィル(ビリー・クラダップ)が子供の頃に聞かされた
父エドワード
(アルバート・フィニー)の英雄譚話。

ジョセフィーン(マリオン・コティヤール)との結婚式の場でも披露し、
誰よりも目立ってしまう父の姿に、成人したウィルは嫌気がさしていた。

しかし、父の症状悪化の報せを受け、実家のあるアメリカ南部で、
彼は父の人生の全容をジグソーパズルを解くように掴んでいく・・・。




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【ビッグフィッシュ】というタイトルは
『大ボラ吹き』の意味合いを持つそうですね。

ファンタジー映画と言えば?でおなじみ、ティムバートン監督作の中でも
最高傑作と言っていいんじゃないでしょうか??

でも、実はこの映画を観ている中盤あたりまでは、
心のベストテン入りするほどの傑作だとは思いませんでした。

その理由は割とはっきりしていて、
「あんなホラ吹き、もといおとぎ話ばっかりするおっさん、
 実際いたらうざくないか?百歩譲っても人気者にはならないだろ?」

成人してからのウィルのように、この父親を否定的に捉えていたのです。

ジョークを愛でる文化がない、どころか寒いとすら感じる日本人には、
序盤からこの父親を愛でることは難しいと思います。

それどころか息子の結婚式の場でも主役の座をかっさらって、
日本的に言えば、空気が読めないホラ吹き親父です。

そんな感情を引きずったまま語られていく数々のおとぎ話のような英雄譚。

これが悔しいかな、童心に返ってわくわくしてしまうんですよね。
どれもが荒唐無稽なファンタジー。あるかよそんな話!なのに。

ちなみに、桃源郷のような村に招待されて村のみんなと踊る
若き日のエドワード(ユアン・マクレガー)が、
相手と向かい合わせになって両手を取ってぐるぐる回るシーン・・・

これ、ストップモーションアニメ映画【コープス・ブライド】でも
ドートとエミリーの出会いのシーンで同じ演出が使われてましたね。

【コープス・ブライド】を観たときに「あ!」と思いました。
監督の好きな演出を観て、過去作を思い出す瞬間ってなんか好きです。

さて。

個人的な良い映画の条件の一つに、
「前後の脈絡や、話の筋は置いておいて、
 後々、ふと頭に浮かぶ“好きなシーン”がいくつあるか?」
・・・があります。

この映画にはそれが3つあります。


① 父と母の出会いのシーン

サーカスで後に妻となる女性を見つけた瞬間に時が止まる。
その中をかき分けて歩き、触れたポップコーンだけが地面に落ち、
女性のもとまであともう少しというところで、
止まっていた時間を取り戻すように、早送りで時が動き出す。

この一連のシーンが最高。美しい!


② 父と母のバスタブのシーン

服を着たままバスタブに浸かる父と、それに寄り添う母。

若い男女の恋愛映画よりも、よっぽど刺さるというか。
2人の間にある信頼と愛しさが伝わってきて、
「自分が理想とする愛の形だ!」と思いました。


③ ウィルが初めて父に聞かせるホラ話の世界

巨漢の父を軽々持ち上げて、光が差す林を抜け、
父親の話に登場したキャラクターが見守る中、
川へ向かうウィル。

このシーンのまさに天国のようなキラキラした多幸感。
自然と泣き笑いですよ。

前述したようにウィルとリンクしていた否定的な感情が
このタイミングで雪解けを迎えるという。


他にも素敵な映像が多々あるんだけど、
とくにこの3つのシーンは印象的です。

さらに!

この映画はウィルのホラ話を聞かせて、父親が死ぬという結末で、
充分に終われるお話だと思うんだけど、
父親の葬式に、彼が話してきた英雄譚のモデルと思われる人物が
続々と参列する姿が描かれるんですよね。

0から100の嘘は一つもついていなかった父親。
そして、彼が愛し、愛されてきた人々を目にして、
幸せに満ちた人生を歩んできたことを実感する。

これはただただ父親が恵まれた人生を送ったとかそういうことじゃなく、
目一杯、人生を楽しんでみせた・・・ってことだと思う。

睡蓮の花を彼女の家の前に敷き詰めて告白したエピソードも、
実際は手に持てる花束だったのかもしれない。

幸せな話、楽しい話、ドキドキする話、
大いに誇張して幸せな気持ちでずっといよう。

「面白きこともなき世を面白く」

高杉晋作は言いました。
これは自分の座右の銘でもあります。

愚痴やネガティブな感情を吐き出すことで
すっきりする気持ちもわからなくはないけど、
自分が発した負の言葉の引力は思っている以上に強い。

愛に溢れた人生を送る為には、
自分を騙すくらいに、自分にも他人にも前向きであるべきなのだ・・・

・・・と思う。オレは思う。


最後に余談。


渋谷にある【八月の鯨】(←これも映画の題名)という名のBAR。
数年前に、本当にたまたま入ったお店なんだけど、
ここのカクテルには全て映画のタイトルが付いていて、
メニューにない映画名を言ってもオリジナルで作ってくれるという
映画好きにはたまらないBARでして。

この流れからはお察しだと思いますが、
そのときにメニューにはなかった【ビッグフィッシュ】を
オーダーしたのです。そのときのカクテルがこちら・・・









あの睡蓮の花畑をイメージさせるイエロー!
粋だな~~!!

この話を今後誰かに語る際には・・・



「オレはそのとき【ビッグフィッシュ】をオーダーしたんだ。
 すると出てきたのは200cmワイドの水槽に入ったイエローカクテル。
 中には大きな鯉が一匹 優雅に泳いでいたよ。」


・・・くらい言いたいもんです。




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次回、更新予定の映画タイトルは
【桐島、部活やめるってよ】です。



桐島、部活やめるってよ
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すでに観た人、観てない人、
これきっかけで観てみ。