予告のすずちゃんの足が動かなくなる絶叫場面で、
何度も泣きそうになってしまったので、
きっと本編を見たら泣きっぱなしかなと、思っていた。
ネタバレ以外のレビューをいくつか見ると、
どうやら原作を知る人にとっては面白くないらしいという、
予備知識だけを持ってスクリーンに向かう。
すずちゃんが演じるかおりの登場は、
公園の明るい陽光の下、
『ブレーメンの音楽隊』からの『いたずらな風』、
そしてあまりにもハイテンションな演技。
とてもバランスが悪くてチグハグで、
こんなんで大丈夫なの?というスタートだった。
なるほどレビューの言う『駄作』なのかも知れないかな、
と思ってしまったけれど。。。
だが、それは大きな間違いだった。
大きな病(病名は明らかにされない)を抱えて、
入退院を繰り返す日々の中で、
もう生きていられる時間が僅かかも知れないと悟り、
かおりは自ら生き方を変える選択をした。
それはコンタクトレンズであり、
髪型であり、
そしてヴァイオリンであり、
憧れだった有馬公正とそのピアノだった。
「君は自由そのものだね」
と公正がかおりに言う場面では、
僕だってまだそう思っていたよ。
「私は自由じゃないよ。自由なのは音楽だよ」
とかおりは答える。
答えを知れば、この言葉の意味はとんでもなく重い。
もうひとつ、
リスクの高い手術を希望するシーンでの、
「生きられる可能性がわずかでもあるならば、
それに『すがります』」
という言葉も心に残った。
最後の手紙に、
ひとつ『嘘』をついたとあったけれど、
嘘は全然ひとつなんかじゃなかった。
かおりは、沢山の嘘をついていた。
友達にも、好きな人にも。
その嘘の上にだけ存在することが出来た、
本当に短い短い時間。
その僅かな時間を、精一杯に駆け抜けたかおりが、
エンディングで走馬灯になる。
チグハグに見えたピースが、
みんな綺麗に嵌った気がした。
ヴァイオリンやピアノのシーンは、
音楽をやっている人にとっては違和感もあるのだろうが、
ドラマとして見る分にはそんなに気になることはないし、
やっぱり音楽はいいなと思うだろう。
ラストの公正のピアノに、
かおりの嘘を重ねて、
そして、実ることはなかったけれど、
一生忘れることのない短い恋に思いを馳せて欲しい。
きっと貴方の心にも、
誰かの為に、
沢山の嘘をついた恋の記憶が、
甦ったりするんじゃないだろうか。
誰にも話すこともないし、
顔を背けて忘れてしまいたいだけの嘘は、
いつも泣きたくなるくらいに透き通った空色で、
胸の奥の方がギューッと痛くなるものだということを、
僕も知っているから。
涙もろいオヤジは、
後半からエンディングにかけて涙がこぼれて仕方がなかった。
あまり似合わない「かつら」と、
わざとらしさ満載の演技のせいか、
すずちゃんの可愛らしさパワーはちょっとダウンしていたが、
橋からのダイビングに象徴される
『どうにでもなれ』的な捨て身の演技は、
ちはやふるより良かったんじゃないかと思う。
次は『怒り』。
これは結構楽しみにしている。
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