僕は、JFL(Jリーグの4部組織)に属するFC大阪にこれまで2度面接に伺ったが、J3昇格のための課題というのを、先日面接の時にお世話になったH氏から教えていただいた。

 

FC大阪はガンバ、セレッソに次ぐ大阪3番目のJリーグクラブを目指しているが、J3に昇格するためには、JFLで好成績(基本年間4位以内)を挙げたとしても、Jリーグの準会員「百年構想クラブ」を申請・認定を受け、そのうえでJリーグライセンス(J3)の申請をパスしなければいけない。

 

現状FC大阪は、年間2位(前期も流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎に次ぎ2位)という好成績を上げているが、J3ライセンスはおろか、ライセンスを申請するに必要な大前提となる準会員資格も申請していないため、今年このままの成績を上げたとしてもJ3昇格はできない。

 

クラブの目標は2017年のJ3昇格(当初は2016年を目指していたが、準備に手間取ったため1年延期という形にはなった)としていたが、J3ライセンスを申請するには、6月中に準会員申請とJ3ライセンスを同時申請しなければならず、加えて準会員の承認を得なければならないため、その承認をパスしなければ来年のJ3昇格は完全になくなる。

 

H氏いわく、クラブは現在運営費用の工面・ねん出が厳しいと伺った。リーグに加盟するには、加盟料というのが必要になるが、JFLでは1000万円(これに地域リーグから昇格する場合の入会金として100万円必要なので、初年度は1100万円)で済むが、J3に昇格する場合は加盟料で1500万円、これに初年度のシーズンの入会金500万円で都合2000万円と倍の加盟料を払わないといけない。これがJ2になると加盟料・入会金とも2000万円の計4000万円、J1ともなるとそれぞれ4000万円と6000万円で計1億円がかかる。

 

さらに選手の人件費(試合給、勝利給)やスタジアム・練習場の賃貸料を含めても、J3で1億円規模、J1に昇格すると10億円もかかるということで、これまで広告代理店「アールダッシュ」を母体としているがゆえ、選手の生活面を支援するために各種企業・公共団体に派遣して、そこで仕事に従事しながらサッカーに取り組んでいるのだが、それでも予算の工面がなかなかいかないという。

 

僕は企業・公共団体だけでなくNPOやワーカーズコープなどにも派遣させて、Jリーグの理念である地域密着・地域市民との交流の場という公共性をより追求してはどうかという提案もして、実際僕が通所している就労移行支援作業所を初めとする各種団体にも何らかの形で派遣すべきであるという提案をしたのだが、今の状態ではとてもではないがそういったボランティア的なものへの派遣は難しいとご指摘いただいた。

 

現状は先述の「アールダッシュ」が運営するサッカー部であるため、将来的にJリーグを目指すクラブとして定着させるには、アールダッシュの子会社、ないしはそれが関与するNPOなどにクラブ経営を委譲する必要がある。Jリーグに加盟するにはNPOや公益法人(財団・社団法人)を含めた、サッカーを中心軸に構えた法人格を登記する必要がある。

 

昨年までNPO・武蔵野スポーツクラブが運営し、横河バイオニックスが事実上企業チームとして受け入れていた、横河武蔵野FC改め東京武蔵野シティーFCも、今年J3昇格を念頭において、クラブの自立を図る観点から、トップチームとユース・ジュニアユースに関しては事実上NPOに母体を委譲して市民チームとしての定着を図ることになった。

 

それと同じで、ユースなどについては従来通りアールダッシュ側で運営を行うことは可能であるので、現状維持はできると思うが、トップチームは運営母体となる別法人をこしらえる必要性が迫られる。その別法人からアールダッシュを介して企業・団体へ派遣するという事実上広義の「社員選手」という従来の形を取り、市民からはNPOへの寄付金や募金・クラウドファンディングといったカンパを寄付してもらい、そのNPOがトップチームの運営、さらにアールダッシュ側が行う育成チームの運営に充てるというやり方が理想だろう。

 

それに加えて、今年はホームスタジアムがキンチョウスタジアムでほぼ安定していたところが、キンスタ、ヤンマー長居スタジアムを含む長居公園一体を、セレッソ大阪の関係団体である(一社)セレッソ大阪スポーツクラブなどを含めたグループが指定管理者として管理・運営することになったので、昨年6試合のところが1試合だけに減らされた。(他の長居公園内のスタジアムにおいては、ヤンマー長居フィールドが2試合から5試合に増え、ヤンスタは3試合から2試合と微減。全体で見てもこれら3スタジアムで昨年11試合だったのが、今年は8試合と3試合減ってしまった。他は服部緑地、Jグリーン堺、万博記念競技場で数試合ずつやっている。特にガンバが万博競技場から吹田スタジアムに移転した影響もあり、FC大阪はその万博の空いたところに日程を新たに埋めているという感じになってしまった)

 

キンスタはご存じのとおり、来年から大規模増築計画が予定され、セレッソの森スタジアム構想を本格的に立ち上げる。セレッソが指定管理者となったのもその流れからであり、今後はキンスタ・ヤンスタでのセレッソ主管公式戦は利用料負担の軽減や様々なホスピタリティーなど「公設民営」ならではの特色のある展開がなされていくことになるが、FC大阪がこれらのスタジアムを使うには、セレッソに使用料を払わないといけなくなるため、その負担という点も考えないといけなくなる。

 

スタジアムはJ3はおろかJFL加盟に際しても最も必要な項目である。JFLとJ3では最低でも5000人以上収容できるスタジアムの確保を求めている。最もそのJ3・JFLのキャパに近い身の丈に合ったスタジアムとして考えられる鶴見緑地球技場は、以前は天然芝だったが、2010年から芝生の管理負担を減らすという目的で人工芝球技場となったため、現在の段階で鶴見緑地球技場を使用することは認められていない。

 

僕としては、セレッソがJ2に降格している間は、J1の開催は無理としても、横浜FCやFC東京などが特例で西が丘味の素フィールドや江戸川、夢の島といったJ2基準を満たしてないスタジアムで開催した事例を参考とした特例を認めて鶴見で開催してほしいと考えていたが、それも実現に至らなかった。今後人工芝の経年劣化による天然芝への回帰という話があれば、FC大阪の誘致を元・鶴見区民として提案したいが、現状で天然芝への復帰は難しく、FC大阪はおろかJリーグ・JFLで使う見込みは立たないことになる。

 

現状、大阪市内でJリーグの開催ができるという点でいえば、このキンスタ、ヤンスタぐらいしかない(ヤンマーフィールドはJ2までは開催可能だが、J1に昇格する場合は増築が必要。ただ、ヤンマーフィールドはあくまでも補助スタジアムであるため、本気でJ2以上昇格を希望するのであればヤンスタ・キンスタが望ましい)。

 

また大阪府一円という点ではこれに吹田スタジアムと万博記念競技場というガンバ大阪のテリトリーの2か所を含めた4か所がJ1基準を充足しているが、いずれにしてもクラブが指定管理者という状況、またFC大阪の準本拠とされる堺市も、現状ではJリーグ基準を充足するスタジアムの予定がないことを考えると、FC大阪の自前のスタジアム、本拠地となるべく使われるスタジアムの確保は難しい状況にあるのは確かなのかもしれない。

 

そこで、僕は、2019年ワールドカップラグビーの会場となる東大阪市の花園ラグビー場の活用も検討に入れてはと考える。ホームタウンを東大阪市・大東市などの河内地域と、練習に使われるJグリーン堺のある堺市を含めた泉州地域を中心として展開することを考える。

 

花園ラグビー場も今後市営化するにあたり、ラグビーの国際試合の誘致に適合した座席の増築やナイターの設置などのホスピタリティーの改善が進められることになっていくが、花園ラグビー場周辺にはサブグラウンドが3面(うち1つは高校ラグビーにも使用される試合用のコート、もう2面も練習場として使用可能なフィールドがあり、そのうちの1面は人工芝である)ラグビー以外のスポーツにも使用できるとある。

 

さらに陸上競技場の「トライスタジアム」というものもあるので、現状特定の練習場を持たないFC大阪にとっては試合・練習を一体的に取り組める環境が提供される場であるといえるかもしれない。もちろんラグビーの国際大会・国内リーグとの日程調整が必要になるので、特にシーズン終盤は芝生の管理の観点から、例えば、土曜日にラグビーをして、日曜日にFC大阪のJFLやJ3を開催するといったやり方も考えてもいいかと思う。もちろん平日に振り替えてもいいだろう。

 

ラグビー一辺倒だと、少なくとも9-2月ごろぐらいしか使われる機会がない(現状はスーパーラグビーの時期にも開催されることがあるが、今年は秩父宮1か所にとどまった)。そう考えると管理・維持費用のことを総合的に考えた時、東大阪市をFC大阪の拠点地域と位置付けて、「ラグビーの聖地にサッカーとは何事か」と揶揄されるかもしれないが、ラグビー・サッカーというフットボール兄弟の共存共栄を図ることで、第3のJクラブへの定着を図るというのも選択肢に入れてみてはと考える。