重電カルテルで欧州委、日本へ通報怠る | 2018-2020

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重電カルテルで欧州委、日本へ通報怠る…公取は数十億円取れず

 三菱電機や東芝など日本と欧州の重電メーカー10社が昨年1月、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会からEU競争法違反で計約1200億円の制裁金を命じられた変電装置の国際カルテルで、欧州委からの通報がなかったために、公正取引委員会がカルテルの調査に入れなかったことがわかった。違反とされた行為は独占禁止法に抵触するが、公取委はカルテルの実態を解明する機会を失った。欧州委による日本企業の調査は今後も続くことが確実で、公取委は通報態勢の改善を求めた。

 通報があれば、公取委は再発防止を求める排除勧告を出し、カルテルに加わった企業に数十億円の課徴金を科せた可能性がある。

 日本とEUは2003年7月に、カルテルや企業合併の調査で連携することを定めた「独占禁止協力協定」を締結した。協定には、相手の利益に影響する違反行為の調査などを相互に通報する規定が設けられている。欧州委は通報しなかった理由を「忘れていた」などと弁明しているが、公取委は京都市で14日に開会した「国際競争ネットワーク」年次総会出席のために来日した欧州委幹部に通報態勢の改善を求めた。

 問題とされた装置はガスの圧力で電流を調節するガス絶縁開閉装置(GIS)で、欧州委は、スイスのメーカーABBから04年3月にカルテルを結んでいたとする申告を受理。2か月後に立ち入り検査に着手した。

 調査の結果、三菱電機、東芝、日立、富士電機ホールディングス、日本AEパワーシステムズの日本5社とシーメンスなど欧州6社が1998年以降、日本企業は欧州の、欧州企業は日本の市場にそれぞれ参入しないなどの市場分割に合意したと認定。07年1月に日本5社に約400億円、申告したABBを除く欧州5社に対し約800億円の制裁金を命じた。

 検査着手から制裁金決定までの約2年8か月間、公取委には通報がなく、制裁金の発表でカルテルの存在を把握した。カルテルは日本市場にも及んでおり、調査の対象になるはずだったが、排除勧告の時効は過ぎ、課徴金納付命令の期限も約4か月後に迫っていた。

 調査会社によると日本のGIS市場は約500億円と推計され、制裁金を科せられた5社が上位を占めている。公取委の調査でカルテルが裏付けられれば日本企業への課徴金だけで数十億円になった計算だ。