翻訳料 | 翻訳者の脳内

翻訳者の脳内

私の学んだこと、感じたこと、覚えておきたいことなどもろもろ

映像翻訳の翻訳料は

基本、1巻(映像10分)あたりいくら

という計算になります。


5~6年前、駆け出しの翻訳者の相場は

だいたい1巻1万円前後と言われていました。


1巻1万円だとして

60分番組、正味50分弱の映像で5万円。


最近は不況のせいか供給過多なのか

それを下回る場合も多いようです。


以前、初めてご依頼をいただいた会社から

ものすごく低い翻訳料を提示されたことがあります。


「翻訳料は1万5000円で尺は30分弱です」と言われたので、

「30分弱だと4万5000円か、悪くないな」と思ってお引き受けしました。


しかしふと不安になり、電話の最後に

「さきほどの翻訳料は10分あたりの料金ですよね?」と

確認したところ

「いえ、今回は大変予算が厳いので

30分で1万5000円です」と。


絶句しました。


ドキュメンタリーでVO(ボイスオーバー)の依頼でした。


3~4日作業して1日分の報酬?

ありえない…



この時は、初めてご依頼をいただいたということもあり

「これは報酬付きの再トライアルなんだ」と

自分を慰め、全力でお仕事をしました。


しかし予想どおりというか何というか

調べ物は大変だわ

クライアントの担当者は突然退職するわ

映像とナレーションのタイミングがズレているため

編集作業じみたことまでしなければいけないわで…


とにかく仕上げるまでに時間がかかり

最後は徹夜。


エライめにあいました。


聞いた話ですが

この会社から納得のいかない翻訳料を提示された人は

私だけではないようです。

フリーの映像翻訳者を食い物にしている会社があることを知り

大変ショックを受けました。


スクール時代に言われたんです。

「いくら仕事が欲しくても自分を安売りするな」と。


それは自分をおとしめるだけでなく、

他の映像翻訳者の立場をもおとしめることになるから。


以後、非常識な翻訳料でお仕事を引き受けるのは

絶対にやめようと心に誓いました。


やはり、やるからには誠意を持ってお仕事をしたい。


けれど自分をぞんざいに扱うクライアントに対して

誠意を持って…とは思えませんから。


この件については

グチっぽい内容になりそうだったので

書こうかどうか悩みました。


でも読者の中に映像翻訳者をめざす方が

何名かいらっしゃるようなので


「皆さまも、お気をつけください」


ということで、自戒の念として記しておきます。