湯枯れたまふことなかれ 晶子ゆかりの宿再開へ | 堺 だいすき ブログ(blog)

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<熊本地震>湯枯れたまふことなかれ 晶子ゆかりの宿再開へ

 歌人の与謝野鉄幹、晶子夫妻ゆかりの温泉旅館として知られる熊本県阿蘇市内牧の「蘇山郷(そざんきょう)」が、熊本地震による営業中止を乗り越え、本震から3カ月となる7月16日の再開を目指している。本震後は温泉が枯れていたが、新たな泉源を掘り当てた。3代目館主の永田祐介さん(43)は「阿蘇大橋の崩落やJR豊肥線の一部運休などで状況は厳しいが、1人でも多くの方にお越しいただきたい」と意気込んでいる。

 蘇山郷は昭和初期に永田家の自宅として建てられた。1932年8月には、永田さんの曽祖父で和歌に通じた故己平(みへい)さん(享年82)の招きで与謝野夫妻が同家に滞在。夫妻は、樹齢1000年の杉の木1本で造られた「杉の間」に宿泊し、阿蘇の大自然や「杉の間」を詠んだ歌を残している。

 53年に自宅から温泉旅館に替わったが、与謝野夫妻の短歌が記された直筆の色紙は今も保管され、「杉の間」は会食場として利用されている。地震前は多くの外国人観光客らが訪れ、雄大な阿蘇の自然の中でトレーニングする長距離走や自転車の選手の合宿所としても人気だったという。

 熊本地震では、4月16日未明の本震で外壁にひびが入るなど大きな被害を受けた。温泉もくみ上げることができなくなり、業者に依頼した調査で地下約50メートルで地盤がずれ、温泉をくみ上げる配管が断絶した可能性が高いことが分かった。永田さんは新たな泉源を求めて掘削作業を依頼。6月18日にようやく地中の配管から砂に混じって温泉が湧き出て胸をなで下ろしたという。

 与謝野夫妻が泊まった「杉の間」は、梁(はり)が少したわんだ程度で大きな損傷はなかった。永田さんは「旅館のシンボルである『杉の間』が助かったことが、災害を乗り越える大きな力になっている。営業再開に向けて急ピッチで内装工事などを進めており、万全の態勢でお客さまを迎えたい」と話している。【野田樹】

 ◇ことば「与謝野鉄幹、晶子夫妻」

 鉄幹(1873~1935年)は1900年発刊の雑誌「明星」を主宰した歌人で、石川啄木や北原白秋らの才能を開花させた。晶子(1878~1942年)は「明星」などで活躍した日本を代表する女性歌人。01年に鉄幹との恋を歌った初の歌集「みだれ髪」を発表して話題となった。02年に結婚した。