菅義偉官房長官は10日午前の記者会見で、世界各国の政界関係者や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用を示した「パナマ文書」に日本の企業や個
人名が記載されている件に関し、「適正、公平な課税の実現に努めるべきということは全く変わりない。今後も適切に対応していく」と述べた。
菅氏は「政府としては個別の事柄について答えるのは控えたい」と言明。その上で、「課税当局はあらゆる機会を通じて情報収集を行うとともに、問題の取引が認められれば税務調査を行う基本姿勢は全く同じだ」と強調した。
菅義偉官房長官は10日午前の記者会見で、タックスヘイブン(租税回避地)に関する「パナマ文書」に記載された企業・個人名が公表されたことについて、 「個別の事柄に答えることは差し控える」とした上で、「課税当局はあらゆる機会を通じて情報収集を図り、問題のある取引と認められれば税務調査を行う。適 正、公平な課税の実現に努め、今後も適切に対応していく」と述べた。
河野国家公安委員長は10日、閣議後の記者会見で、「パナマ文書」が公開されたことについて、「警察としても、犯罪収益移転防止法など法令に違反するようなことがあれば、厳正に対処していかなければならないと思っている」と述べた。
民進党は10日、世界各国の政界関係者や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用を示した「パナマ文書」問題に関する調査チームを、党国会対策委員会内に設置した。同日午後に初会合を開く。
座長に緒方林太郎国対副委員長を据え、日本の法人や個人が文書に含まれていないかなどを精査する。
麻生太郎財務相は10日の閣議後記者会見で、タックスヘイブン(租税回避地)をめぐるパナマ文書問題について、日本企業を含む法人・個人の利用者名が公開されたことに関し、「問題のある取引が認められれば税務調査を行う」と述べた。
国際的な租税回避・脱税の防止では、「日本が議長を務める先進7カ国(G7)でも議論をしていかないといけない」と語り、今月開かれる仙台市でのG7財務相・中央銀行総裁会議や、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で議論を深める意向を示した。
公明党の山口那津男代表は10日午前の記者会見で、世界各国の政界関係者や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用を示した「パナマ文書」に日本の企業や個人名が記載されていることを踏まえ、日本国内で適切な課税をしていくべきだとの考えを示した。
「わが国では、タックスヘイブンを利用することについても適切な課税ができる法制度を作り、実施している。今後、効果を上げるようにしていくべきだ」と述べた。
同時に「どこまでが事実なのか判然としていない」と指摘した上で、文書に挙がっている企業や個人に対しては「わが国の税法との関係も含めて、適切な説明をすることを期待したい」と注文を付けた。
日本の国税当局は近年、富裕層や企業による租税回避地(タックスヘイブン)を使った脱税や資産隠しがないか監視を強化している。「パナマ文書」にはこうした調査の端緒になる資料が含まれている可能性があり、国税当局も必要な情報収集を進めるとみられる。
国際課税に詳しい国税OBは「タックスヘイブンとつながる顧客や仲介業者がまとまって記されている資料は貴重で、各国の税務当局とも喉から手が出るほど
欲しい」と指摘する。ただ、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が今回公表した情報には、国際的な資金の流れが詳細に分かる資料は含まれていない
とされる。
国税幹部は「タックスヘイブンでの口座保有や会社設立自体は違法ではなく、合法的な手続きを取っているはずだ。金や資産の動きを追跡しないと白黒つけが
たい」と説明する。文書に名前がある法人が現在も存続しているかもはっきりせず、別の幹部は「文書に記された個人や企業と接触できるかどうか精査が必要」
と慎重な姿勢を示す。
一方で、日本は海外諸国と租税情報の交換を進めている。今後、パナマ文書に名前がある日本の企業や個人に関する情報が他国から提供されれば、資金の流れの解明が進む可能性があるとみられる。
ICIJのデータに記された日本関連の個人名や企業名は300を超える。「名前を公表された富裕層や企業はたとえ違法行為がなくても社会的ダメージが大きい。説明責任を果たす必要があるのでは」との指摘も出ている。【松浦吉剛】
民進党は10日、タックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人に関する「パナマ文書」について、調査チーム(座長・緒方林太郎衆院議員)を設置した。日本企業や経営者らによる租税回避の実態を調べ、国会などで追及していく構えだ。
初会合では調査チームの議員が国税庁に対し、公開された文書のリストに記載されていた企業や個人について、税務調査の対象になるのかを質問。国税庁の担
当者は「個別にどのような対応をするかは言えないが、(パナマ文書に)関心は持っている。一般論として問題があれば対応する」と述べた。調査チームの議員
は「世界的にも大問題になっており、それでは国民も納得しない」と調査を求めた。
調査チームは11日にも会合を開いて担当省庁から聞き取りを続けるほか、チームで文書の解明を進めるという。安住淳国会対策委員長は10日の会見で「安
倍政権は法人税減税を行ったが、恩恵を受けた企業が租税回避をしていれば、国民にとって割り切れない話だ」と述べ、アベノミクスで恩恵を受けた企業と税の
公平性の問題を追及していく考えを示した。
各国の首脳らによる課税逃れの疑惑を告発した「パナマ文書」には日本人とみられる個人名や日本に所在する法人名も多く並んでいた。10日公表された情報
などを基に関係先を訪ねてみると、存在が確認できない会社や個人も多く、租税回避地(タックスヘイブン)の不透明な実態を浮かび上がらせた。【隅俊之、福
島祥、松浦吉剛、伊藤直孝】
東京都江戸川区にある6階建ての古いマンション。近くの駅前は多くの中国人が行き交い、あちこちから中国語が耳に飛び込んできた。
カリブ海に浮かぶ英領アンギラで設立された法人の株主などとして中国系とみられる2人の名前が挙がっていた部屋のインターホンを押すと、中国人留学生の男性(20)がドアを開けた。
「パナマ文書? そんなお金持ちの人がこんなところに住んでいるはずがない。名前も知らないです」。半年前から暮らしているという男性はあっけにとられ
た表情で話した。「前はどんな人が暮らしていたのか。その名前の人宛ての手紙も届いたことはない」という。部屋は2間ほど。富裕層が暮らすイメージとはか
け離れていた。
「パナマ文書」に記載されていた個人の住所は、高級住宅街の豪邸や家賃の高い超高層マンションから下町のアパートまで千差万別だ。建物が取り壊されてし
まっていることもあり、記載されていた住所そのものが存在しないケースもある。仮に法人設立時に記載した住所が正確だとしても、引っ越してしまえば居場所
をたどることは難しい。
英領バージン諸島の法人に出資していたとされる中央区の海運会社では、外国人らしき男女数人がパソコンに向かったり、大声で中国語で話したりしていた。法人登記によると、1999年に設立され、海上運送事業や機械販売などを手がけているという。
女性従業員に文書に記載された法人について尋ねると「社長がいないので分からない。社長は今、海外にいて、いつ日本に来るか分からない」と話した。男性従業員は「どこでそんな情報が公開されているのか」と驚いた様子で尋ねてきた。
サモアの法人に出資していた貿易関係とみられる会社は、荒川区の高層マンションの1533号室にあるとされている。だが、受付の男性に尋ねると「1532号室までしかありませんよ」と困惑した様子で語った。
文書の記載が正確だったケースもあった。パナマ文書に名前がある千代田区の弁護士事務所は、関連があるとされる英領バージン諸島の法人について「顧客の
依頼でうち(事務所)が管理している会社だ」と認めた。その上で「詳細は言えないが、企業の戦略上必要と判断して設立したものだろう」と説明した。
タックスヘイブンでの法人設立や資産運用が全て不正というわけではない。国際税務に詳しい太陽グラントソントン税理士法人(港区)の浜村浩幸税理士は
「日本の富裕層はノウハウにたけた外資系金融機関から、いいとこ取りの提案を受けているのでは」とみる。「『何となく節税になる』『リスク分散になる』と
いう程度の意識で、運用方法の中身や国際課税の仕組みを十分に理解していない顧客が多い印象を受ける」といい、「税逃れの意図や違法性の認識を見極めるの
は容易ではない」と話す。
世界各国の政界関係者や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用に関する資料「パナマ文書」に日本企業や個人名が記載されていたことについて、政府・与党からは10日、適正な対処を強調する発言が相次いだ。
菅義偉(すがよしひで)官房長官はこの日の記者会見で「適正、公平な課税の実現に努めるべきだということは全く変わりない。今後も適切に対応していく」と述べた。
自民党の谷垣禎一幹事長は記者会見で「そういう手段を活用できる人が利益を得て、競争し合うようなものは抑えていく必要がある。いっぺんに解決することは難しい。国政としても取り組まなければいけない」と指摘した。
公明党の山口那津男代表は記者会見で「わが国ではタックスヘイブンを利用することについても適切な課税ができる法制度を作り、実施している。今後、効果を上げるようにしていくべきだ」と語った。
一方、民進党は調査チームを設置し、日本企業や個人による課税逃れの有無を精査する。安住淳国対委員長は記者会見で「復興特別法人税廃止や法人税減税の恩恵を受けた企業が租税回避でもうけていたなら、国民にとって割り切れない話ではないか」と批判した。
一方、回避地法人の株主連絡先に義姉が代表取締役を務める会社名が記載されていた加藤勝信1億総活躍担当相は記者会見で、自身の関わりを否定。「直接関与しておらず、実態も承知していない」と説明した。
自民党の二階俊博総務会長は10日のBSフジ番組で、世界各国の政界関係者や富裕層のタックスヘイブン(租税回避地)利用に関する資料「パナマ文書」に日本企業や個人名が記載されていたことに関し、党としての調査に前向きな考えを示した。
二階氏は「われわれ政治家は何にでも関係がある。一応、党としても勉強というか調査をやってみたい。おのずから限界はあるが、一応、関心を持つべきだと思っている」と述べた。
民進党は10日、タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を示した「パナマ文書」の詳細が公開されたことを受け、党内に「調査チーム」を設置し、国会内で初会合を開いた。
国税庁などの担当者にパナマ文書との関連が疑われる日本企業などを調査することを求めた。