“なると”君が、無事飼い主さんの胸に再び抱きしめられるその直前
それはどんなシーンであるか。
それは絶対に「捕まえる」「獲る」というようなものではないはずです。
「捕獲」という言葉には、追いかけて、囲んで、追い詰めて、なんなら最後に飛びかかるくらいのイメージがありますが
でもおそらく、いや絶対に、そんな形にはなりません。
昨日5日ぶりに、飼い主さんは“なると”君の無事な姿を確認することができました。
その時“なると”君は、飼い主さんのすぐ1mそばまで近づいて来たと言います。
今、“なると”君にとって、一番近くまでいける人間、それは「飼い主さん」なんです。
また今日はこんなことがありました。
“なると”君はフェンスにもたれ、横になってのんびりしていたそうです。さすがに歩き疲れていたのかも知れません。
フェンスを背にして…ということですから、それ以上向こうには行けません。過去最大のチャンスだったでしょう。
その時“なると”君は、くっと首をあげて一旦飼い主さんと目を合わすと、ゆっくり安心したように首を下げて、再び横になったそうです。
僕も悪かったんです。
昨日まで「捕獲」という言葉を使っていました。
姿を確認するまでは「情報」が第一
姿を確認してからは「人数」も必要だろう
…そんな書き方もしました。
実際、うちの嫁はんも送り出し、合流してもらいました。
しかしやっぱり
姿を確認してからも
一番ありがたいのは「情報」でした。
今日は、昨日の目撃地点周辺をずっと捜索したそうです。
本日情報をくださったお宅は、
朝9:00からずっと庭で休んでいるよ、という連絡を15:00過ぎにくださいました…。
連絡をもらって駆けつけた時には、帰宅したお子さんの声に驚いて逃げた後でした…。
昨日の目撃場所から8kmも離れた場所です。
という嫁はんの文章には
押し殺したはずの無念が滲んでいました。
もちろん善意で情報を提供してくださった方に、何か注文をつけようとするほど、飼い主さんも、うちの嫁はんもクズではありません。
しかし、もし
もし9:00にこの情報がいただけていたら…
6時間も同じ場所にいて、じっくりと心を通わすことができたなら…
やっぱり「情報」以上にありがたいものはありません。
飼い主さんは今でもご自身を責めています。
「それは当然だ」と言れれば、飼い主さんは何の反論もしないでしょう。
たくさんの皆さんのご協力で、“なると”君の無事な姿を確認することができたんです。
飼い主さんが第一発見者ではありません。
皆さんが探してくださって、教えてくださって、初めて再会できたんです。
だから
「こうしてほしい」と皆さんにお願いばかりしてきた立場の飼い主さんが
「こうしないでほしい」なんて言うことは、とても難しいことなんだと思います。
だから僕が出しゃばって申し上げますが
皆さん
これまで通り「情報」の提供をよろしくお願いいたします。
だけど最後のところは、飼い主さんでなければできないことなんだと思うんです。
僕の嫁はんも行動を共にしてはいますが、最後のところは、僕の嫁はんにもできないことです。それをするために行ったのではありません。
飼い主さんとうちの嫁はんは、かつて職場も同じだったこともある友人です。うちの嫁はんは、“なると”君を鉾田から搬送した人間でもあります。だから、一緒にいて多少は役に立つことがあるかもしれません。
だけど最後のところは、やはり飼い主さんでなければダメなんだと思うんです。
僕は、飼い主さんと“なると”くんの2週間を信じます。
「情報だけください」などという、厚かましく失礼なお願いを、厚かましく失礼だと承知の上でさせてください。
どうかお願いいたします。
ここは“なると”君のためとご理解いただき
僕の失礼をどうか寛大にご容赦ください。
皆さんの「情報」が頼りです。
よろしくお願いいたします。
けいせつ基金 角新一