ガタンとかコトンとかよく覚えていないけれど。
振り返ってトトを見ると酸素室から出て、いつもの場所に伏せて寝ているように見えた。
でも違った。
駆け寄って抱き上げたトトの体にはどこにも力が入っていなかった。
人工呼吸。
心臓マッサージ。
できることは全部やった。
そして叫んでいた。
諦めるの?
ここで諦めるの?トト!
抱き上げたときのグニャリとした感触も途切れそうになる鼓動も、今もハッキリと覚えている。
あの日、ワタシはトトを失った。
トトを失ったのだ。
賢くて美しくてツンデレで、そのくせ超がつくほどの甘えん坊だった。
寝付くまで背中をトントンしてほしいコだった。
怖いことがあると真っ先に抱っこしてほしいコだった。
お散歩はいつも決まったコースしか行きたくなくて、ちょっとでも違う道を行こうとすると全身で踏ん張って拒否するコだった。
すべてが愛しくてすべてが特別なコだったんだよ。
トト。
お空で元気にしていますか。
ボクには会えた?
ウィンディにも会えた?
大好きなモカちゃんとは?
きっと楽しく過ごしているよね。
だからじゅんちゃんの夢にも出てきてくれないんだ。
もう会えない。
もう触れられない。
それは想像していたよりずっとずっと辛いことだった。
でも思い出さない日はない。
毎日お線香をあげながら話しかける。
毎日トトがいそうな場所を目で追っている。
時々ね、本当にそこにいるんじゃないかと思うくらいだよ。
あの日。
すぐ酸素室に戻していればトトは今でもここにいただろうか。
あの利発さが宿った目で見つめてくれていただろうか。
何もかもが遅い。
でも今でもそれだけが心残りだ。
明日で1年が経つ。
心残りを抱えながら迎える明日、ワタシはきっと泣くだろう。
トトが恋しくて会いたくて抱き締めたくて。
トトに申し訳なくて。
いつか夢で会えたなら思い切り抱き締めるよ。
トトに会いたい。
トトに会いたい。
今日は狂おしいほどにそう思う。
会いたいよ、トト。