シ モ ー ヌ(6点) | 日米映画批評 from Hollywood

シ モ ー ヌ(6点)

採点:★★★★★★☆☆☆☆
2003年9月15日(映画館)
主演:アル・パチーノ、レイチェル・ロバーツ
監督:アンドリュー・ニコル


 久しぶりに見終わった後に心に爽快な気分が広まった作品です。


【一口コメント】
 現代ハリウッドを上手く描写した現実と虚構の狭間での人間ドラマです。

【ストーリー】

 アカデミー賞ノミネート経験を持つ映画監督タランスキーはここ10年ヒットにめぐまれていなかった。トップ女優ニコラを主演に起用し、再起を図るがニコラのわがままに振り回され、結局製作中止に追い込まれる。
 別れた妻かつ映画会社のトップであるエレインはタランスキーを解雇する。映画を諦めかけた彼の元にハンクという男が現れ、CG女優を作るソフトを彼に渡そうとするが、タランスキーはそのソフトを受けとらなかった。しかしハンクが死に遺言によって、そのソフトが彼の元に届く。最後の手段としてそのソフトでCG女優シモーヌを作成し、映画を完成させる。
 映画は彼女のおかげで予想以上に大ヒット。エレインとも再契約し、新作も決定。しかし世間が待っていたのはタランスキーの新作ではなく、シモーヌの新作であることに気付く。新作の完成後に事実を公表しようとしていたが、世間がそれを許さない状況になってしまう。
 衛星回線によるインタビューを受けたり雑誌に出たりするようになる。しかしマスコミに衛星回線の放送がでっちあげだという脅しを掛けられ、コンサートをすることを決意。さらにアカデミー賞にもノミネートされ、タランスキーは危機的状況に陥る。
 なんとかその状況を切り抜け、シモーヌを殺すことを決意し、ウイルス感染させてシモーヌは消滅した。そんな彼にシモーヌ殺人の容疑がかけられ、絶体絶命のピンチになってしまう・・・。

【感想】

 今のハリウッドを皮肉りながら、ハリウッドの先端技術を描いている。女優のわがままが皮肉の典型だとすれば、シモーヌの存在が先端技術の典型である。
 "CG女優"といえば、現在はいないけど、近い将来登場するであろう存在。ひょっとしたら、今現在も活躍しているかもしれない。日本にはCGアイドルが存在するのだから・・・。本当にいるかも・・・。なんてことを思ってしまいながら、ある1本の映画を思い出していた。
 「
トゥルーマン・ショー 」という映画を。
 見終わった後の自分の心の爽快感がとても似ているなと思っていたら、「
トゥルーマン・ショー 」の脚本家が監督・脚本を手がけた作品ということで納得。「トゥルーマン・ショー 」と今作に共通しているのが、"現実に起こりそうだが、今のところ起こっていない"という点とハッピー・エンドという点。特に一つ目の共通点はなかなか面白く、言われてみれば本当にあるかも?と思わずにいわれないほどのリアリティがある。そして今作はCGという現代の映画には欠かせないテーマを取り上げ、そこにマスコミの過熱報道も絡み、今のハリウッドをうまく描写していると思った。更に壊れてしまった家族愛も描かれており、人間ドラマとしても成り立っているので、感情移入もできた。

 感情移入するもう一つの要素として欠かせないのがオスカー俳優アル・パチーノ。アル・パチーノのコミカルな演技とシリアスな演技に引き込まれてしまった。周りを固める共演陣も素晴らしい。もう一人の主役、シモーヌ役の新人、レイチェル・ロバーツは演技らしい演技をする場面がなかったが存在感は素晴らしく、ハリウッド・スターとしてのオーラのようなものが出ていたと思う。またアル・パチーノの娘役の子役が素晴らしかった。離婚した両親を何気なく気遣い、寄りを戻させようとする演技がとても自然で将来が楽しみです。

 現実と虚構の狭間の世界、そしてそこで起こる人間ドラマ。これを描かせたら、監督アンドリュー・ニコルの着眼点は非常に興味深く、今後注目していきたい監督の一人になった。