民主党エネルギーPT使用済核燃料等に関する検討小委員会第一次提言全文 | Making Our Democracy Work! 石井登志郎オフィシャルブログ Powered by Ameba

民主党エネルギーPT使用済核燃料等に関する検討小委員会第一次提言全文

本日開催された、民主党エネルギーPT使用済核燃料等に関する検討小委員会において、私が事務局長として取りまとめた第一次提言が了承されました。ここに全文を掲載します。

尚、本提言は第一次で、夏のエネルギーPT全体の提言に間に合わせる形で、第二次提言をまとめます。よって、本提言にはさまざま検討を要する課題について記しておりますが、その検討は次にまわることになります。いずれにせよ、引き続きしっかり頑張ります。


民主党エネルギーPT使用済核燃料等に関する検討小委員会
第一次提言

東京電力福島第一原子力発電所の事故は、原子力発電と放射性物質の脅威を広く国民に意識させ、安全対策の重要性を強く再認識させる結果となった。当小委員会は、原子力発電において最難問と言える使用済核燃料や関連する重要施策につき、現に使用済み核燃料がサイト内に大量に貯蔵されており、最終処分までの道程が確立されていない以上、原子力発電所の稼働に対して推進、慎重いずれの立場であっても、これらの問題の解決を避けて通れないことから、原発推進・脱却に偏らずに客観的事実を検証、検討した上で、課題を洗い出し、提言するものである。

≪1.政策決定プロセス、官民の役割分担について≫
原子力政策のあり方を見直し、政策決定プロセス、官民の役割分担等全般を抜本的に検討し、新大綱は使用済核燃料等に柔軟な政策選択を可能とするべき


現在、原子力委員会を中心に原子力政策大綱の見直し作業が進んでいる。一方で、使用済核燃料に関する様々な施策においては、わが国が原子力利用を始めた昭和40年代当初の見込みと、現状が大きく乖離していることが多い。個々の課題については後述するが、そもそもの基本的な政策の枠組みに課題があった可能性は強い。例えば、発生者責任の名のもとに電力会社が主体的に使用済核燃料の政策を担ってきたが、核という取り扱いが難しいものの相手を、どこまでを民間が行いどこから行政が行うのか、官民役割分担が適切であったかは、問われるべきである。同時に、国の指導・監督体制が適切であったかも検討すべきである。さらに、国民負担の観点で使用済核燃料等に対する政策・コストの検討も抜本的に行うべきである。そして、原子力政策決定プロセスそのものについても、検討が加えられるべきである。
また、原子力政策は、大綱に沿って進められるが、後述するように使用済核燃料等の課題は、相当な難問が山積している。そうした中で、前大綱では「使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本的方針」とされ、政策選択の幅がなかったが、新大綱では、将来の政策オプションの芽を摘むようなことがあってはならない。よって、新大綱の策定にあたっては、使用済核燃料に関しては柔軟な政策判断を可能とするべきである。

≪2.使用済核燃料の保管体制について≫
プールの貯蔵、特に炉内プールでの貯蔵を最小化し、安全対策を強化すべき

現在、我が国では17箇所の原子力発電所に約14,000tU、青森県六ケ所村の貯蔵施設に約2,900tUの使用済核燃料が存在する。これらは主に使用済み燃料プールと言われる中に保管され、極一部のみがいわゆるドライキャスク(乾式貯蔵容器)に保管されている。
使用済みプールでの保管は、そもそも、外部に使用済核燃料を持ち出す際の「一時的な貯蔵場所」であるはずのものが、外部への持ち出しが滞り、プールの貯蔵余地がひっ迫している。
このことで、次の問題が指摘される。第一に、仮に再稼働が始まった場合、使用済み核燃料の置き場がこれ以上なく、そのことで原子炉の稼働ができなくなってしまう点。第二に、プールの電源が喪失してしまった際に、冷却機能が失われ、想定外の有事を招いてしまう懸念。第三に、プールそのものが何らかの要因で崩壊し、水がなくなることで想定外の有事を招いてしまう懸念。これらを解消するためには、可及的速やかに燃料プール内の使用済み核燃料をより安全性が高く、電源喪失などのリスクに比較的対応できる体制に移行させる必要がある。
実際、福島第一原発では定期点検中であった4号炉の燃料プールに1,535本の燃料集合体が保管されており、運転中でないにも関わらず、プールの崩壊によって最悪の事態までもが想定され今も予断を許さない状況である。
他方、立地自治体の主張は早期の原子炉敷地外への搬出、国策による中間貯蔵体制の整備を求めているが、リラッキングに対する不安の声もあり、まずは、地元住民の安心感を増すための安全対策を講ずるべきである。具体的には、地元自治体の理解が大前提とした上で、国が現存する原子炉敷地内における更なる安全な保管体制の指針を定め、炉内プールから速やかに搬出できるよう共用プールないし乾式貯蔵の整備を促すこととする。

≪3.使用済核燃料等の全容について≫
現存分および今後の使用済核燃料、全ての放射性廃棄物について全容を把握し国民と共有すべき


使用済核燃料につき、保管体制とともに指摘される課題は、その全容が国民に十分共有されていない点である。我が国に現存する約17,000tUの使用済核燃料は、日本原燃の六ヶ所再処理工場において再処理されることとなっている。この工場は当初の見込みとは程遠い状況にあり、再処理実績はこれまで425tUのみである。そうした状況ではあるが、仮に本年より順調に稼働したとすれば、最大で年間800tUの再処理が行われる。順調に再処理が進めば発電所から使用済核燃料が搬出されるとの期待もあるが、既存の使用済核燃料を再処理するだけでも約21年かかり、仮に全国の炉が再稼働した場合、今後新たに発生する使用済核燃料は、最短でも20年以上の保管を行うこととなる。
また、日本原燃の工場は40年間で約32,000tUの再処理を行うとしているが、これは、仮に震災前の年間原子力発電量約3,000億kwhを維持したとして、年間1,000tU発生する使用済核燃料を今後15年分しか処理できない計算となる。第二再処理工場に対する言及もあるが、保管方法と併せて、様々なオプションを検討すべきである。
さらに、使用済核燃料だけでなく、廃炉となった施設の資材、発電用以外の放射性物質の処理など、総合的な放射性廃棄物の全容を国民に広く共有し、問題の重大さへの認識を共有するための取り組みを強化するべきである。具体的には、今後発生するものを含め、廃棄物の種類、放射線量の強さ、量等を網羅的に把握し、とり得る処分方法のオプションを示す等で国民の安心感を高める最大限の努力を行うべきである。

≪4.研究開発のあり方について≫
硬直した方針に沿った研究開発のあり方を見直し、これまでの研究開発の総括と研究開発体制のあり方を検討すべき

我が国の使用済み核燃料に関しては、全量再処理が前提となってきた。一方で、今般の原子力委員会核燃サイクル検討小委員会においては、全量再処理以外の選択肢も提示されることになる。世界の原発利用国を見ても、直接処分を採用している国も多く、あえて結論をWait and See(留保)する国もある。
我が国においては、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」において、第一種特定廃棄物(ガラス固化体)と第二種特定廃棄物(TRU廃棄物)のみが地層処分の対象と位置付けられており、フィンランドやスウェーデン等で進む、使用済核燃料の直接処分は想定されていない。結果として、JAEAとNUMOでは、研究開発ですら直接処分に関しては実施されていない。
一方、アメリカでは、NRCが今後300年間の長期貯蔵についても検討するとして、実際に長期貯蔵研究計画(Extended Storage Collaboration Project)が動いている。こうした想定も研究も、我が国においては全くない。
こうした世界の動向と真摯に向かい合い、同時に、各国それぞれの実情の違い、我が国の立地事情等を踏まえつつ、使用済核燃料の取扱いに関する研究開発体制を整えるべきである。加えて、国情の違いもあるが、同じく困難な問題を抱える世界各国に我が国として貢献することが可能な未来志向の研究開発として、積極的な取り組みが期待される。
また、再処理の延長線上にある高速増殖炉(FBR)の開発は、原子力黎明期より進められてきたが、明らかに当初の予定と乖離してしまった実態に陥っている。原子力委員会核燃サイクル小委員会ではFBR開発につき、「社会経済情勢の変化などもあり実現されていない」としているが、果たして「社会経済情勢の変化」だけが要因か、甚だ疑問である。現実を真摯に受け止め、まずは今日までの研究開発を総括すべきである。そして、なぜFBR一本で来たのか、研究は将来の実用に本当に結びつくのか等、ゼロベースで国家指針の持ち方や研究開発のあり方を検討すべきである。

≪5.再処理および最終処分に関する国民負担・事業見込について≫
再処理と最終処分の積立および取り崩しにつき、当初の計画や今後の見込み、国民負担や現実性の観点から適切か、事業のあり方を含め徹底的に検証すべき

わが国では、従来の政策に基づき、使用済核燃料に対する再処理および最終処分に関する積立を行うこととしている。この原資は、各電力会社が最終需要家から徴収している電気料金に含まれている。平成23年度の積立額は再処理積立金約5,008億円(取崩額2,852億円、積立金残高26,572億円)、最終処分積立金約560億円(取崩額37億円、積立金残高9,014億円)である。現行の消費者負担は、1キロワットあたり再処理積立金は0.22円、最終処分積立金は0.07円(共に九電力会社の平均)で標準的な一般家庭の負担は年間1,000円程度と試算される。
一方で、再処理も最終処分にしても、当初の計画通りに進んでおらず、将来において、さらに大きな国民負担になるのではとの懸念の声もある。日本原燃とNUMOはそれぞれ株式会社、認可法人であるが再処理および最終処分の積立金の取崩しに際しては、経済産業大臣の承認を受ける必要があり、ひいては、その内容については政治もしっかりと検証する義務がある。よって、再処理および最終処分の当初の積立金算定根拠と予定された計画、現状と見込みについて、客観的かつ真摯な検討を徹底的に行うべきである。また、最終処分地の選定に関しては、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づいて設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)が担うこととしているが、現状を鑑みるに、最終処分地選定は予定通りに進むとは考えにくい。
2007年の高知県東洋町における一連の出来事もあり、国が前面に立って自治体への申入れ実施を可能とする体制へと再編されたが、十分な国民理解が得られる状態とは言い難く、実現に向けた道筋は不透明である。将来世代に負債を残さない政策遂行のためにも、国の関与や責任のあり方を含めた戦略の見直しが必要である。
尚、これら積立金および業務に関しては、平成23年11月に行われた行政刷新会議提言型事業仕分けにおいて問題提起もあったところであり、国民に見える形での成果が求められる。

≪6.負担と受益の関係整理≫
特定の地域(立地地域)へ負担が集中していることにつき、負担と受益の関係を整理するとともに、中間貯蔵施設の設置を国も前面に立って推進すべき

原子力発電による恩恵は広く国民全体が享受してきたにもかかわらず、万が一の事故などによるリスクは立地地域を中心に負っているのが現実である。もちろん、現状の核燃サイクルコストについては電力料金への賦課により広く「受益者負担の原則」に基づいているとの電力事業者の説明は理解するが、先に述べた「不測の事態」によるリスク負担は立地地域に過度に偏重していると言わざるを得ない。福島の事故はその現実を明らかにしたといえる。こうしたリスクに対する負担と受益のバランスをとることの困難さは重々承知しながらも、現実から目をそむけずに現行施策を正面から検討するべきである。また、受益している現世代が後世に多大な負担を残すことも許されることではなく、この観点からも検討が必要である。
これまでの国の原子力立地政策は、ほとんどが発電促進であった。一方で、発電後に残された放射性物質に対する対応は不十分であったと言わざるを得ない。一部立地自治体では、使用済核燃料に独自課税をしているが、こうした地方自治体独自の取り組みを国としても参考にすべきである。また、当面緊急的に必要となる中間貯蔵施設の設置を、国も前面に立って強力に推進すべきである。

≪7.核不拡散・セキュリティの観点からの使用済核燃料政策について≫
国際的な核不拡散・核セキュリティの要請に応える政策であるか、現行施策を徹底的に検討すべき

核物質、特にプルトニウムを含む使用済み核燃料や核燃料サイクルによって生み出される物質の取り扱いに関しては、国際的な核不拡散・セキュリティの観点からも、その取扱いは最重要課題である。
わが国は、非核保有国として、核の平和利用に徹した政策を一貫してとり、2010年のワシントン・核セキュリティサミットにも参画して国際協力にも積極的な役割を果たしているとしている。
一方で、国際的な核不拡散を訴えるアメリカのNGO核脅威イニシアティブ(NTI)の調査によれば、我が国の核に対する防護体制は23位(核兵器の使用に使うことが出来る核物質を1㎏以上保有する32か国中)となっており、大変低い評価である。また、IAEAへの報告の中で余剰プルトニウムを持たないと国際公約をしているが、海外保管分約35トンとあわせて約45トンのプルトニウムを所有し、その処理にも課題を指摘されている。
核不拡散の観点から、わが国が世界標準からみて十分な対策を講じているか、ゼロベースで検証し、必要な見直しを検討するべきである。

≪第一次提言のまとめと、第二次の活動にむけて≫

第一次提言においては、すぐに着手すべき課題が多くある。立地自治体が抱える根本的問題を国民が共有しつつ、第一次提言にて示した課題に可及的速やかに対応すべきである。特に、安全対策上の炉内プール貯蔵を最小化させること、選択肢の幅を広げる研究開発の拡充、国も前面に立った中間貯蔵施設の設置の検討はすぐに対応に取り掛かるべきである。
第二次においては、第一次提言において触れた項目に対し、より進んだ具体的な方向性を示すための検討を進めていく。さらに、原子力のみならずエネルギー政策全体に対し、供給面からの議論だけでなくバックエンドからの観点も重要との認識に立ち、議論を行い必要な提言をまとめていく。

<了>