尖閣諸島における中国漁船の体当たり | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

尖閣諸島における中国漁船の体当たり

尖閣諸島で、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突をしてきた。海上保安庁が撮影したビデオなどによると、わざと体当たりをしてきたようだ。日本も舐められたものだと思う。我が国は、絶対に銃撃はしないということを読まれてしまっているのだ。この漁船は、恐らく中国政府の意を受けて行動しているに違いない。元来、中国人は臆病で政府の後ろ盾もなく巡視船に体当たりなど出来るわけがない。「お前、行ってこい。どうせ短時間拘留したら日本はお前を釈放するはずだ。帰ってきたらボーナス弾むから」などと言われて来ているのではないかと私は思う。


我が国の問題は、このような事態に国際法に基づいた対応が出来ないことである。国際法によれば、軍の指示に従わず領海侵犯を繰り返すような船は、銃撃され沈められても止むを得ないのである。我が国が国際法に基づいた対応をする国であれば、中国はあのような挑発行動には出ないと思う。ところが、事件後の我が国の対応は中国の出方を見ながら、中国の言うことも少し受け入れて落としどころを探ろうとしているだけである。だから中国はだんだん居丈高になってくる。何か我が国のほうが問題を起こしたとでも言わんばかりだ。しかも、菅総理はこの件について全く他人事のようなことを言っている。中国が意図的に我が国の領海を侵犯し、巡視船に体当たりしているのだから、総理が極めて不愉快であるというくらいの意思表示をしてもよいのではないか。中国は相手が逃げ腰になっているとどんどん出てくる国である。我が国政府は、国際法に基づいて毅然とした対応をすればよいのだ。


これに対し、我が国では「あんまり興奮せずに大人の対応をすべきだ」とか、「エスカレートして戦争になったら大変だ」とか、我が国が中国の傍若無人を許した方が良いとのテレビのコメンテーターなどの意見が多い。私は相手が泥棒をしているのに、泥棒をする理由があったのだろうと理解を示すような、このような対応が戦後の日本を駄目にしてきたと思っている。我が国においては、総理大臣でさえ目の前で問題を起こさないことが最優先なのである。事なかれ主義も極まれりである。総理が問題を回避しようとすれば、官公庁も財界も戦うことが出来ない。軍事力を行使してでも国民を守る、国益を守るという総理のその意思が我が国に対する挑発を抑止するのだ。世界中のあらゆる国が、自分の国を守るために国際法に基づいて行動している。国際法に基づいて行動してそれが戦争に発展することはあり得ない。



国家の指導者が戦争を恐れていては、国益を守ることは出来ない。



さて、日本と中国の軍事力は一体どうなっているのか。今では中国有利にどんどん移行しつつあるというのが実態であると思う。この20年以上、中国が二桁以上の軍事力拡張を続けてきた結果である。20年前の冷戦崩壊時我が国自衛隊の海軍力、空軍力は、中国のそれを圧倒していた。中国に対し「やれるんだったらやってみろ」という態勢が出来ていた。しかし、中国が大幅な軍拡を続け、一方で我が国は軍縮を続けた結果、20年前の状況はひっくり返り、今では中国の軍事力が我が国を圧倒するようになってしまったのである。中国が軍事的に自信をつけてきたために、最近では我が国周辺で中国の軍事的な示威行動が頻繁に起きるようになってきている。それでも、中国が簡単に我が国自衛隊を一ひねり出来るほどの戦力差は今のところはない。我が国が今後、中国との軍事バランスをとる方向で努力をすれば、日中間の問題は話し合いで解決されるであろう。しかし、いまのまま我が国が軍縮傾向を続ければあと5年、7年経ったときに日本が中国と対等な外交交渉をすることが困難になる。我が国がいつでも一方的に中国の言い分を呑まされることになってしまうだろう。


我が国では、軍事に関する国民教育がほとんど行われないので、国民の多くは軍事について無知である。政治家や高級官僚や財界の指導者たちといえども、その例外ではない。多くの人は軍事力は戦争をやるためのものだと思っている。しかし、もう大きな国同士が戦争をやる可能性は極めて低い。軍事力は、外交交渉の裏側にあって対等な話し合いをするための道具なのである。話し合いで平和的に問題を解決するためにこそ軍事力が必要で、周辺諸国との軍事バランスを取ることが必要なのである。我が国の政治は、経済問題ばかりではなく政府の専権事項である国を守ることについてもっと真剣に考えてもらいたい。