無駄の排除では景気回復は不可能 | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

無駄の排除では景気回復は不可能

我が国の景気に、なかなか回復の兆しが見えない。しかし、自民党時代も民主党になってからも、景気回復よりは財政再建が優先され、政治家やマスコミは各省庁の無駄の排除ばかりを声高に叫んでいる。「官僚が無駄なことばかりやるから、赤字国債が増え、国家財政が破綻に向かう」と言うのだ。官僚の生み出す無駄を監視し、政治家が思うところを実行すれば景気も回復するし、国家財政も健全になると言うわけだ。これが政治主導だ、国民の手に政治を取り戻すことだと言う。


馬鹿も休み休み言ってもらいたい―。


「官僚に牛耳られているから、我が国の景気が停滞している」わけではない。私も官僚組織の中にいたが、官僚は官邸の意向など、常に政治の動きに敏感に反応して行動する。政治が考えることを実現するために、大臣や総理がどう考えているかを可哀想なほど気にしているのだ。だから私は、官僚組織を「なんでも官邸団」と言っていたくらいだ。政治家と官僚を対立的に捉えるのは、実態とかけ離れており、国民を欺くことになる。政治の志が低くなったから、官僚の志も下がっているのだ。そのような官僚を政治家が叩くのは滑稽である。


会社で言えば、社長が「経営を重役の手から社長の手に取り戻す」と言っているようなものだ。みんなで力を合わせることが出来ない、そんな会社が発展できるわけがない。商売敵の会社から見れば、どんどんもめてくれということになる。我が国の状況も、アメリカや中国から見れば嬉しくてたまらないだろう。政治家は、官僚組織の能力を最大限に発揮させる指揮官としての能力を磨くべきだ。口を開けば自分のことを「アホだ」「バカだ」という指揮官に部下の官僚がついていけるわけがない。政治家にもう少し謙虚になってもらいたい。官僚組織の専門知識を生かすことが大切だ。



無駄の排除、政府支出の削減によって国家財政を立て直すと言って、民主党は事業仕分けなるものを始めた。事業仕分けは、民主党政権によって初めて行われるようになったと認識している国民も多いが、実はこれは従来から官僚によって実施されていたものである。8月末の各省庁の概算要求の提出から、12月末の政府案の作成まで、4ヶ月かけて徹底した事業仕分けが行われてきたのである。民主党の実施した事業仕分けは単なる政治的パフォーマンスに過ぎないのだ。しかも、2回に亘り実施した事業仕分けで1兆円も出てこない。事業仕分けによってとても900兆円にも及ぶ借金を返すことは出来ない。それに無駄はゼロにはならない。1%くらいの無駄はしょうがないとすれば、100兆円の予算なら1兆円の無駄が出ることになる。民主党も2回の事業仕分けを行ったことにより、我が国の予算をマクロで見れば官僚組織がそれほど大きな無駄ばかり作っているわけではないことに気がついたのではないか。つまり、無駄の排除最優先の予算編成では景気回復も財政再建も出来ないのである。


いま我が国では、デフレの状況が進行中である。この状況下で無駄を無くすと言ったら、デフレ傾向は一層加速することになる。借金は永久に返せない。改革とか、効率化合理化、無駄の排除などはインフレ対策である。景気が悪い中で効率化に、より今まで10人でやっていた仕事を5人でやるようにしたら、5人の人たちは仕事がなくなるのである。こんなときには公共投資を増やすしかない。しかし、公共事業が悪だと信じている人たちには、それば出来ない。これ以上、赤字国債を増やしてどうなるということになる。しかしそれならば、無駄の排除によって赤字国債が無くなるのですかと質問したい。無駄の排除と言いながら赤字国債は増加し続けたのではないか。政治主導になれば無駄がなくなるのですか。子供手当てや高校の授業料の無償化などは無駄ではないのか。


我が国は、GDPを伸ばすためのデフレ対策を急がなければならない。世界のGDPはこの20年間で2倍になっているのに、我が国のGDPだけがほとんど伸びていない。さらに我が国は、いま国の「守り」が危ない状況になってきている。軍事力の増強が必要である。私は、いまこそ自衛隊の主要装備品の研究開発にお金をつぎ込めばいいと思う。国産戦闘機の開発などは、デフレ対策としても極めて有効であると思う。戦闘機の開発には7,000社くらいが参加することになる。我が国産業界は、大いに活気付くことであろう。子供手当ての10%もあればおつりが来ると思う。



しかし、軍事力増強は「悪」だからこれも出来ないか。早く我が国政治が、自虐史観から開放されてもらいたいものだ。