日米安保はあくまでも抑止のためのもの | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

日米安保はあくまでも抑止のためのもの

我が国に対する侵略があった場合、我が国は日米安全保障条約に基づき、アメリカによって守ってもらうことになっている。しかし、実際に侵略があった場合、日米安保が機能するかどうかはよく考えておかなければならない。実は機能しない可能性も高いのだ。


日本に対する侵略があった場合、アメリカは自動的に参戦してくれるわけではない。まず、アメリカ大統領が日本を守る決心をして、米軍に対し行動を命じなければ、米軍は動くことが出来ない。また、大統領が命令を出したとしても、その命令には有効期限がある。2ヶ月である。2ヶ月過ぎると、アメリカ大統領はアメリカ議会の同意を必要とすることになる。それでは、アメリカ議会が日本を守るために米軍を動かすことをいつでも議決してくれるかというと、これは大変おぼつかない。アメリカの議会では、いわば反日法案といわれるようなものが頻繁に成立しているのだ。私は、アメリカ議会に全面的な信頼を置くことは出来ないと思う。



日米安保は、あくまでも抑止のためのものでしかない。日米同盟の体制を強固にして、いざとなればアメリカが日本を守るという体制を作っておくことは大切である。それは、我が国に対する侵略を抑止するとともに、我が国周辺地域の安定に貢献する。あらかじめ「どうせアメリカは日本を守ることは出来ない」と言ってはいけない。それを言うことは、我が国に対する侵略を誘発し、またこの地域を不安定にするからである。日米同盟体制の強化の努力は大切である。


しかしながら、例えば、尖閣諸島において日本と中国が戦争になったとしよう。このとき、日米安保に基づいてアメリカが日本を助けるために行動しようとしたら、中国はどう出てくるだろうか。中国は、中国の持っているアメリカの国債を全部売ると言うかもしれない。かつて、日米貿易摩擦の際、我が国の橋本龍太郎首相がアメリカで「アメリカの国債を売りたい衝動に駆られる」と言っただけでドルの暴落を招いたことがあった。


尖閣諸島は、我が国の海洋権益上は大変重要な島であるが、アメリカは日本のこの無人島を守るためにアメリカ国民の生活を犠牲にすることは出来ないであろう。

また中国は、もしアメリカが日本を助けるのならば、ワシントンに核ミサイルを撃ち込むと恫喝するかもしれない。その場合、アメリカは、アメリカ国民を核の脅威にさらすことを前提に、日本の無人島を守るという決断が出来るだろうか。アメリカ大統領も、アメリカ議会も、そんな決断が出来るわけがないと、私は思う。



そう考えると、我が国は日米安保という体制があっても、一歩ずつ自分の国は自分で守れるという方向に行くべきなのだ。我が国は、これまでアメリカに守ってもらうという体制から抜け出る努力をしてこなかった。自分の国を自分で守れない国は、大人の国ではない。大人になれなければ、国際社会において大人のいうとおり行動するしかない。日本が大人になって、初めて鳩山総理の言う「対等な日米関係」が構築できることになる。日本が大人になって初めて、日米同盟が世界の安定に貢献できることになる。そういう意味で我が国は、もう少し防衛費を増加し、国の守りを確固たるものにすべきであろう。