今朝起こった、ちょっとしたトラブルの顛末記です。結論

としてはハッピーエンド、「めでたし、めでたし」なのですが、

何ともお粗末の自作自演に、自嘲の意味も込めて、記録し

ておくこととしました。


 まだ暗い時間に、私の出勤(?)は始まります。玄関の

ドアを開けると、冷たいけれども爽やかな早朝の空気が、

私の身体を包み込んでくれるのです。これが、室内にいる

時間が多くなった私の、朝一番の楽しみになっています。

 少し歩き始めてから、私は、何気なくポケットに手をやり

ました。これはサラリーマン時代からの私の癖で、無意識

に定期券の在り処を確かめているのです。

 けれども、ポケットには何もありません。それでも私は、

まったく動じることなく、おもむろに、カバンから財布を取り

出しました。たいていは、財布の中に仕舞っているのです。

改札の準備で、ポケットに入れておこうと思ったのでした。


 ところが、財布にも定期券はありません。私は少し慌てま

した。そして、前日の行動を想い出そうとしました。ポケット

に入れたのか財布に仕舞ったのか、それとも・・・。

 もう、時刻表に合わせて家を出たことも意味がなくなりま

した。私は家に戻って、カバンをひっくり返し、服を脱いで、

定期券を探します。そして昨夜の行動を繰り返したのです。

でも、努力の甲斐もなく、定期券は見つかりませんでした。


 すっかり私は落ち込んでしまいました。私が金品を落とし

たのは、小学生の頃、両親と一緒に行った祇園祭が最後

です。当時、テレビドラマで江戸の町人が浴衣の袖に巾着

を出し入れするのに憧れて、その真似をしたのです。

 

 「そんなところに入れたら落しちゃうよ。預かっておくから。」


 私は、両親の言葉を無視しました。その挙句、大事な財布

を落としてしまったのです。祇園祭りの雑踏の中では、もはや、

巾着を探すことは不可能になっていました。