この日の組香は、「水鳥香」というテーマでした。三種類のお香は、

ABCという無粋な記号ではなく、それぞれに相応しい和歌が詠まれ

ているのです。そのテーマが、水鳥なのでした。



さゆる夜の 氷とちたる 池水に 

        鴨(かも)の青羽も 霜やおくらむ

                    続千載集 637 中務卿経明親王

池水に むすふ氷の ひま見えて 

        うちいつるなみや 鳰(にお)のかよい路

                    新千載集 683 内大臣

かたみにや 上毛の霜を 払ふらむ

        ともねの鴛(おし)の もろ声になく

                    千載集   429 源親房


 即ち、鴨、鳰(カイツブリだそうです)、鴛(オシドリの雄だそうです)

が、当てるべきお香の名前になるのでした。和歌の意味は、さっぱり

わかりませんが、冬の池での鳥たちの振る舞いを詠っていることは、

何となく想像することができます。

 このような情景を想い描いて、お香の薫りを聞き(嗅ぎ)分けようと、

平安貴族たちは愉しんだのです。記紙というものがあって、そこに、

自分の名前と答えを書くことになっています。 

      

 それから、次は聞香の説明です。茶碗のような香炉を使って、私の

ような初心者にも、わかりやすく、ユーモアたっぷりなジェスチャーで、

作法や手順を実演していただきました。

 また、香炉の中に火が入っていることを忘れずに香炉を傾けて持た

ないことや、吸い込んだお香を吐くときに香炉の灰を飛ばさないこと

などの注意もありました。


[ご参考] 聞香の手順などの解説です。

http://www.yamadamatsu.co.jp/enjoys/monkou.html


 私はもう、難しい説明をうけるより、一刻も早く平安の世界に彷徨い

たくなってきました。そのような気配を察してか、それから間もなく、

たちは、いよいよ待ち焦がれた会場「弄清席」へと案内されたのです。