冒険なのですが、少し背伸びをして、文学と音楽への心を

同じ窯で焼き付けてみたいと思います。どうして、そのような

ことを考えたかというと、先ごろ、石川啄木についての講座を

受けて、突然、シューベルトが胸に浮かんだからです。


 東海の小島の磯の白砂に

 われ泣きぬれて

 蟹とたはむる          (「一握の砂」冒頭歌)


 私が啄木と再会したのは、この有名な短歌によってでした。

印象的に「の」を繰り返すのは、啄木が得意としたフォーカス

だそうです。映像を思い浮べると、小さい存在の「われ」が、

社会から疎外されている様(さま)が明確になります。

 これに続く歌を鑑賞していると、啄木の怨念や諦観とともに、

人生の哀歌を感じてしまうのです。そして、その感覚を通じて

思い起こされるのが、シューベルトの「冬の旅」でした。


 二人とも、困窮に苦労しながら夭折したという共通点があり

ます。けれども、二人を結びつけるのは、それだけではありま

せん。もっと内面的な人生の中で、伝える媒体は違っていても、

二人が伝えたかったことは同じではないかと思ったのです。

 そこで私は、この二つの名作を比べながら、二人の魂に迫り

たいと思うようになりました。二人についての知識が、ずいぶん

私には欠けているのですが、これを機会に勉強したいと思って

います。無謀な試みかもしれませんが。


[ご参考①] 「一握の砂」青空文庫です。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000153/files/816_15786.html

[ご参考②] 「冬の旅」ディースカウ、ブレンデルです。

http://www.youtube.com/watch?v=3tIbJviHGMI