私は無宗教なのですが、ひょっとすると、ユダ以上の

とんでもない裏切り者かもしれません。何しろ、命乞い

の願いを叶えてもらいながら、宗教を一切拒んでいるの

ですから。

 ずいぶん昔の話です。私は小学生でしたが、低学年

だったと思います。小学校から祈りながら帰ったシーン

が焼き付いていますが、まだ、太陽が真上にある真昼

だったように思うからです。


 当時の我が家には、小さな猫がいました。チロという

名前のトラ猫を飼っていたのです。初代のチロが賢くて

可愛い猫だったので、代々、その名を継ぐことになった

のです。

 今となっては、その時の猫が何代目のチロだったのか、

記憶が定かではありません。けれども確か、初代だった

二代目ぐらいだったと思います。

 この猫はメスでした。そして、子猫を三匹生んだのです。

子猫は、特別に可愛いものですね。兄弟のいなかった私

には、特に愛らしく、愛おしく思えました。それで毎日私は、

子猫たちとふざけ合っていました。

 子猫の兄弟にも、個性があるものです。元気一杯の子猫、

わがままな子猫、優しい子猫。特に、その中の一匹は力も

弱く、どこかとぼけていて、私の愛着も一入でした。


 その日私は、自分の正面に三匹を置いて、子猫たちに

呼びかけながら後ろ向きにひっくり返る遊びを繰り返して

いました。子猫たちの反応が面白かったのです。

 何度目だったでしょう。私は背中に違和感を覚えました。

何と、私は、背中で子猫を踏んずけてしまったのです。


                          次回に続きます