この「しりとり物語6」というテーマのBlogでは、2016年1月からスタートしたFMおたる「木曜Cheers!」内のコーナー、「しりとり物語~占い処 しりとり屋」のストーリーをご紹介して参ります。

リスナーの皆様には、「しりとり」の次の言葉を考えてお送り頂き、どなたの言葉を採用するかは、抽選で決定致します。一方、私は「必ず、その選ばれた言葉が入る」という条件を満たしながら、13話完結の物語を執筆し、コーナー内でご披露する、という「参加型連載ラジオドラマ」が、この「しりとり物語」の仕組みです。

それでは、第6シリーズの第1話に参りましょう。


占い処 しりとり屋~第1話「新世界(しんせかい)」

「雅彦よ。ワシにはもう、旅立ちの時が訪れたようだ。あとの事はお前に任せる。」
「何言ってんだよ、三吉(みよし)のジイさん。大袈裟だろ。」
「大袈裟か・・・。お前の歳ではまだ、そう感じるのかもしれん・・・ゴホっ!ゴホっ・・・どうやら、新世界へと向かわねばならんようだ。」

こうなるともう、ため息しか出ない。

「はぁ・・・あのさぁ・・・大阪の新世界だろ?咳だって、昨日の夜に送別会ではしゃぎ過ぎたからだし。」
「せやねん。」
「認めるのかよ。っていうか、なんちゃって関西弁は一番嫌われるぞ。」
「いやいや、なんちゃってちゃうで。ワシ、『方言占い』っちゅー新しい占いを考えとんねん。大阪行くのもそのためやで。」
「はいはい・・・。」

三吉のジイさんは今からおよそ40年前、この街で占い師としての活動を始めた。当時から奇抜な発想と幅広い人脈を持っていたらしく、占い師たちを集め、1人で始めた占い屋を、「NFS占いモール」という施設にまで発展させたのだから、実のところ、あなどれない男だ。俺自身、このジイさまに拾われた事で、占い師としての活動が軌道に乗ったわけで、時折面倒に感じる時もあるが、邪険にも出来ない恩がある。

「ほな、行って参りますので、どうぞお元気で。」
「だから、中途半端に方言を混ぜるなって!」
「おお、忘れるところだった。お前に渡すものがある。」
「光熱費の請求書とかだったら、やめてくれよ。」
「これじゃ。」
「鍵?ジイさんの店か?」
「そうだ。」
「いない間の管理かよ?」
「まあ、それもなくはないが、ワシが考案した占いをお前に授けようと思って、全て準備して来てある。」
「勝手に授けるとか決めんなよ!」
「その名も『しりとり占い』だ。」
「いや、だから話を聞けっ・・・『しりとり占い』!?」
「はい、乗ってしまいましたね。」

またジイさんのペースに乗せられてしまった。とは言え、占いに関しては大先輩だ。興味がないと言えば嘘になる。

「でも、何で俺に授けようと思ったんだよ?」
「それは、お前の名前だ。」
「姓名判断か?」
「苗字は本間、名は雅彦。ほんま・・・まさひこ・・・見事にしりとりになっておる。おっと、お喋りが過ぎたようだ。電車の時間が近づいて来たので、ワシは行くぞ。鍵には印を付けておいたから、お前さんの気が向いたら、いつでもワシの店から必要なものを持って行くが良い。では、お達者で!」

用件だけを言い残し、三吉のジイさんは旅立って行った。巨大なバックパックと共に去り行く後ろ姿に、俺は小声で語り掛けた。

「ジイさん。俺、雅彦じゃなくて、和彦だから・・・。」

(つづく)

今週の採用ワード
命の洗濯(いのちのせんたく)