新庁舎建設の凍結&第二庁舎取問題についてのまとめ~新庁舎問題はこれからがスタート | いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

第一子誕生をキッカケに地域に目を向け色んな「縁」のおかげで地域に生きる“日常の豊かさ”を実感。2013年市議会議員初当選。2017年市議選でトップ当選、再び市政の最前線へ。2022年11月27日市長選挙75%の得票、当選!市長となる。




昨日、2014年9月30日、全員協議会の場で市長が第二庁舎買取の補正予算議案を撤回しました。

その前日に議長から議案取り下げの進言を受け、内部調整を踏まえて議案の取り下げを行政決定したということです。

市長の発言は以下の通りです。

「議長からの進言を重く受け止め、改めて内容を精査する必要性があるため、議案を撤回します」

それに対して議員から「議案だけなのか提案も含めて撤回するのか明確にどこまでが撤回なのか示して」という質疑もありましたが、市長より「現段階での提案を取り下げます」という内容でした。すなわち、「新庁舎建設事業の凍結」と「第二庁舎取得」は一旦白紙に戻りました。この提案前の「凍結も視野にあらゆる方策を検討する」に戻ったというわけです。



▼「新庁舎建設事業の凍結」と「第二庁舎取得」問題による影響

この提案は突如、何の前触れもなく発せられました(少なくとも市長応援団ではない私たちには寝耳に水でした)。

<第二庁舎取得問題の一連の流れ>

8月25日(月)平成26年第3回定例会用議案の送付 ←当然ココには第二庁舎の議案は含まれておりません
9月 1日(月)平成26年第3回定例会初日 ←普通に定例会がはじまりました。
9月10日(水)夜中に非公式にある議員から電話でこの一報が入る
9月11日(木)共同控室(5会派7名)向けに市長から非公式に説明
9月12日(金)会派代表者会議にて説明
9月17日(水)全員協議会開催①(資料説明のみで終わる)
9月19日(金)予備日の予定を変更して、全員協議会②
9月22日(月)議事整理日(休会)の予定を変更して、全員協議会③
9月24日(水)本会議(各委員会で審査した陳情や議案の最終採決)、第二庁舎買取の補正予算上程される
9月25日(木)休会の予定を変更して、全員協議会④
9月26日(金)決算特別委員会(第1日目)の予定を変更して、全員協議会⑤
9月29日(月)決算特別委員会(第2日目)の予定を変更して、全員協議会⑥
      →ここの冒頭で議長から市長へ「議案の取り下げ」を進言し、調整のため休憩
9月30日(火)午前中暫く調整が続き、11:40全員協議会⑥が開かれ、市長が議案の撤回を表明した
      →最終的に午後の本会議で議案の撤回を全会一致で承認

細かく書けば色んな出来事が起こったのですが、とても全てを書ききれるものではありません。
今回のこの提案によって、「予備日」「議事整理日」「休会」「決算特別委員会(3日間)」の日程を変更せざるを得ませんでした。


また、子ども・子育て会議や、公立保育園運営協議会の予定もこれによってリスケせざるを得ず、他方面に影響が出ています。



▼この提案は何だったのか?


<市の説明>

・基本計画通りの新庁舎建設は社会情勢的な事情により財源確保が困難である
・新庁舎建設を15年間凍結し、第二庁舎を取得する
・9月16日の総務企画委員会で行政報告をして、19日にでも補正予算を本会議に上程する
・9月24日の本会議で議決していただきたい

<そのメリット>

・新庁舎建設を凍結せざるを得ない状況において、第二庁舎を取得し賃借契約を解消することは、財政効果が大きい
・その財政効果は15年間で約18億円にものぼる<賃借をずっと継続することと比較しての試算>

<なぜ、このような急な提案なのか>

・(上記の財政効果に含まれるが)9月24日までに決めれば、都の振興協会から民間より1%安い金利でお金を借りることができる
・第二庁舎の土地建物所有者が信託銀行と結んでいた第二庁舎の信託契約が8月18日に解除されたことで市が取得する条件が整った
・第二庁舎の土地建物所有者が「売ってもいい」という意向があり、9月9日に内諾を得た
・これらの条件が整ったのにこの提案を出さなかったら、「不作為」だと言われてしまう


▼調査・検証を踏まえ議会で明らかになったこと

問題点① <そもそも、凍結の根拠が曖昧>

市の説明及び今回の提案にあたっての資料によると、財源確保が困難ということが理由になっていますが、その背景としては最近の建設工事における資材高騰・労務単価の上昇が様々な事例やデータを持ち出して解説されています。元の総事業費約55億円であり、そのうちキャッシュ(一般財源)で必要な額は9億円でしたが、上記の社会情勢により総事業費が約70億円にも跳ね上がり、同じくそのうちキャッシュが約17億円も必要になり、その財源確保がより困難、という説明でした。

ただ、質疑で判ったことは、そもそも元の事業費で必要とされたキャッシュ9億円の財源自体が確保できない、ということでした。社会情勢を理由にして、計画通り財源を確保できないことをごまかしていたといえます。また、残念ながら何度質問しても、財政見通しは示されません。財政見通しがないのに、なぜ「財源が確保できない」といえるのでしょうか。ここに大きな矛盾があります。



問題点② <“実質財政効果約18億円”にはマイナス要因が加味されておらず>

市が財政効果と謳う比較一覧表には「賃借契約をこのまま15年間借り続ける」ことと「いま第二庁舎を取得すること」のコストの比較となっています。ただ、ここには以下の項目がコストとして加味されていません。

①第二庁舎を取得することで市の所有になるため、元の所有者が支払う固定資産税や都市計画税が減額になります(年間約2,000万~2,500万円)
②第二庁舎を取得することで本庁舎を並行して使用し続けることになるため、本庁舎の耐震工事が必要になります(メニューによって2億~10億円程度)
③併せて、本庁舎隣の西庁舎の耐震や補強工事などが必要(価格未定)
④第二庁舎は既に20年が経過しており、10年後には築30年となり大規模改修が見込まれる(億単位)

これらのコストも調査・検証することなく、借り続けるよりは「安い」と言えるのでしょうか。
そもそも、本庁舎は本体法的に耐震診断が定められていましたが、H30年に新庁舎が建設されることから耐震診断自体を市長自らの判断で見送っていた経緯があります。耐震診断の結果によってどこまでの工事が必要か決まるため、せめて耐震診断の結果を待ってからトータルのコストを考えるべきではないでしょうか。




問題点③ <公共施設再配置は後付けの印象>

仮に第二庁舎を取得するとすれば、これは公共施設再配置全体の関わる計画になる。なぜなら、既に24年3月に作成した「施設白書」では「公共施設を今の規模のまま維持はできない」「総量の抑制が必要」と書かれてあり、本来なら新庁舎とトレードオフ(完全ではないが)でいまの本庁舎と第二庁舎を無くす、という方針から新庁舎と第に庁舎の両方が存在する、ということになるからです。





また、第二庁舎の活用について他の施設を集約させる公共施設マネジメントの起爆剤にする、という主旨のことも述べられていたが、既にこのまま維持できないうえに余計な6,000㎡の床を持つということがどういうことか、市は先のことはあまり考えのないようでした。もし6,000㎡分の施設を第二庁舎へ集約しても、白書の段階に戻るだけであって、総量の抑制になりません。予定以外のものは増やしてはならないのです。特に、具体的な公共施設再配置の組み立てがあるなら話は別ですが。




問題点④ <後年負担は想定せず>

公共施設の件にも通ずることですが、結局は床が増える分の維持管理・修繕費用が毎年必要なコストとなり、後年負担が増えます。市はそこまで試算していないばかりか、そこを想定せずに直近の15年間だけで財政効果と称していました。



ビルを取得すれば解体したり売却しない限り、維持管理と経年的及び定期的な大規模修繕は避けられません。そのコストも加味すべきです。


問題点⑤ <市民への説明は事後>

議会にすらこういう唐突の提案ですから、市民への説明は当然後回しです。何かにつけて「市民、市民」というのも最近気持ち悪くなってきましたが、今回は特に背景事情が違います。
この新庁舎建設プロジェクトは30年近く前からの構想にはじまり、数々の陳情書、市民フォーラム、1万人アンケートを経て、基本構想、及び基本計画、といずれも市民が関わって創り上げてきました。

その最終形の基本計画には平成30年竣工のスケジュールが書かれてあります。当然、諸事情により変更することはあり得るでしょう。財政面の厳しさを当初からにおわせていたことも事実です。ただ、それにしても15年もの凍結が前提となるプランを、市民特にこれまで関わった方々へ説明もなしに第二庁舎取得ありきで提案してくる姿勢にはいまだに納得がいきません。


問題点⑥ <中古の大型物件を取得するノウハウがなく、調査不足>

議会でのやりとりで判ったことですが、取得する物件の構造も確認することなく、いずれ中央図書館を入れるなどの構想にも触れていました。建設に詳しい議員によると、構造上重さが耐えられず(強度というのかな)、図書館にはできない物件だとのことです(やるなら大規模な改修が必要とのこと)。

改めて考えてみると、これまで市は自前で設計から関わり公共施設をつくってきたものの、大型の中古物件を取得することは経験がなく、庁内にノウハウがありません。建設関係に詳しい私の知人からは、不動産投資などで言われるデューデリジェンスなどやったほうがいいのでは、という声もありました。

現況だけではなく、様々な角度から投資にするに値する物件かどうかリスクを洗い出す綿密な調査のことらしいですが、担当の課長はこの言葉すら知りません(これは民間の投資コンサルが使う手法らしく、自治体レベルでどの程度浸透しているかは分かりませんが、少なくとも不動産鑑定以外の調査はしておりません)。


問題点⑦ <市長が単独で動いている点>

今回のこの第二庁舎取得について、市長が単独で動いていることが解りました。本来なら、土地は都市整備部、物件は総務部の所管ですが、都市整備部は全くこのことの関与していない様子です。また、第一副市長も関与せず。市長と総務部長のみで動いていたことがわかりました。中古物件の取得のノウハウがないことは述べましたが、そういう中でも市長と総務部長のみで先方とやりとりをするのはリスクが高すぎるのではないでしょうか。


問題点⑧ <市の最上位計画との整合性>

最後に、小金井市は地方自治体です。どの地方自治体も10年単位の「基本構想・基本計画」が最上位計画として位置づけられ、それに沿って具体的な施策へ落としていき、それを実現するための事業が存在します。この小金井市第4次基本構想・前期基本計画「小金井しあわせプラン」には、新庁舎事業の推進が書かれてあります。新庁舎事業を推進し、第二庁舎の賃貸契約を解消する、と書かれてあります。ということは、新庁舎事業を凍結することは、この基本計画を反故にすることであり、その時点で変更することを市民に知らしめないといけません。第二庁舎取得云々はその次の話となるのではないでしょうか。

計画を変更すること、もしくはできない事業があること、など理由があるなら仕方ありません。ただ、まずは最上位計画のことができない段階で丁寧に説明をすることや、その代案を選択肢を持って示すなどあるべきでしょう。

最上位計画の変更をするにあたって、2週間で議決せよ、という市長の姿勢は、もはや計画的行政の破たんといえます。



▼当初からの私の姿勢

私は当初から、第二庁舎を取得することを頭ごなしに否定はしませんでした。ただ、プロセスの審査と取得するプランの審査は分けて考えさせて頂きました。プロセスについては言うまでもありません。こんな大切なことを前触れもなく議会の途中で投げ、市民は介在させずに2週間で決めて、ということは納得できるものではありません。

残念ながら、こういう進め方をすることで、お金には代えがたい市民の信頼という損失を出し続けていることになぜ気づかないのでしょうか。

その想いはありながらも、ぐっとこらえて冷静に、提案されたプランを審査しましたが、結果は上記に幾つか書きだしたプランそのものの大きな問題点があります。進め方のことを言う以前に、プラン自体が酷いものだったと言えます。



▼議長の市長への「議案取り下げ進言」について

急展開で驚きました。私は土日で新たに資料を作成(30年と50年のスパンでのコストシミュレーション)していたので、関連質問で冷静にこれまでと違う指摘をしようと思っていた矢先でした。ただ、すぐに事情を理解してそれを受け入れると同時に、これからの仕切り直しがとても重たく、どう取り組んでいくかで頭が一杯になりました。さほど喜んでいる暇はありません。




▼そして、これから

市長が議長の進言を取り入れ議案と提案を撤回しましたが、報道によればまだ市長は諦めていないようです。もし提案してくるなら、今回問題として指摘された様々なことをクリアにして欲しいですが、今回みたく第二庁舎ありきで提案をしてくる理解の無い市長ではないことを祈ります。

それ以前に、議会側で今後の協議の場が必要だと感じています。今回は市長の提案を妄信している議員も数多くみられ、審査もせずに「市民にとっていいことなんだから」と議場でつぶやく議員がいたことは残念でした。その議員の立場といってしまえばそうかも知れませんが、本来議会は執行部の提案を審査するダブルチェックの役割りが主です。それを忘れてはならないと思います。

個人的には今の市長は行政経営には向いていないと思っていますが、その稲葉市長だから「応援する」「反対する」ではなく、冷静に提案が将来の小金井市のためになるかどうか、審査することが議員の役割りではないでしょうか。皆がそういう意識にならない限り、様々な複雑な課題に対して最適解を見出すのは困難でしょう。


いずれにしても、これからがこの庁舎問題のスタートです。


(長文失礼いたしました)


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