財務省主計局インタビュー05「国内で国債を消化できる年数?難しい質問です」
「国民の金融資産が『総』で、政府債務が『純』はおかしい」
鳥巣
与謝野さん(『たちあがれ日本』共同代表)は、国家財政にすごい危機感がある。
「あと100兆円」と言われた。
ちょっとヘンじゃ?
財務省
片方(債務)が「総」で、片方(資産)が「純」。
そこは、おかしいかな。
●用語解説<「あと100兆円」発言> 以下のような流れでした。 (*与謝野馨インタビュー01を参考) 与謝野 日本人の金融の純資産というのは、約1000兆なんですよね。 鳥巣 ネットがですね。 与謝野 もう900兆。 国債と地方債で。 使える純資産は、100兆しかないんです。 44兆の国債を出していたら、2年でほとんど終わっちゃう。 たぶん、そのことにみんな気がつき始める。 |
「(与謝野流だと)国内で国債を消化できるのは、あと30兆円」
鳥巣
つまり、国民の金融資産は、グロスで・・。
財務省
最新の数字では、すこし伸びて、1477兆円ですね。
たぶん(与謝野)議員が言われているのは、2008年の数字。
少し古い。
だとすると、総金融資産は1441・1兆円で、負債が365・2兆円。
鳥巣
差引、純資産は1076兆円。
「あと100兆円しかない」
という事になると、国・地方を合わせた債務を976兆円としている。
報道によっては、この数式を使っているところもある。
国・地方の総債務から総資産を引いた数字ではない。
財務省
そうですね。
今は、総負債は、1041・5兆円。
(与謝野)議員の方法だと、(家計の「純」金融資産1076兆円-国・地方の「総」債務1041・5兆円=)35兆円しかないことになる。
鳥巣
平成23年度の国債(新規財源債)発行予定が44・3兆円。
消化できないことになる。
ただ、そういう(与謝野流)計算方式をしてきた事もたしかでは。
財務省
そういう言い方をしたこともある。
「粗債務を強調して、国民を煽ったつもりはない」
鳥巣
「財務省が粗債務を強調して、国民を煽っている」という声もある。
財務省
煽ってきたつもりはない。
純債務も言ってきた。
●用語解説<“純負債”とは?> たとえば、 「地方の債務を含めると純負債(債務超過)が「700兆円を突破した」 という記事が日経新聞2009年12月30日付けの1面に掲載されています。 しかし今回、財務省主計局は、 「国と地方を合わせた『純負債』は、572・7兆円(総債務1041・5兆円-総資産468・8兆円)」 と回答。 1年の違いはありますが、 「700兆円-572・7兆円=127・3兆円」 日経の記事より、純負債が127・3兆円も減少。 この違いは何故なのかは、改めて聞くしかありません。 |
「一般政府には、社会保障基金が含まれます」
鳥巣
日経の記事には、何かが足されている?
財務省
これは、おそらくですが。
国の純債務が670兆円。
地方の純債務が100兆円。
単純に、ふたつを足したのでは。
鳥巣
計770兆円。
(770兆円-572・7兆円=)197・3兆円の差が日経記事と出た。
財務省
社会保障基金の約200兆を足すとそれくらいになる。
「一般政府」という時には、「年金特別会計」と「社会保障基金」が含まれる。
「中央政府」という時には、その2つが除かれる。
日経は、「中央政府」「地方政府」ではなく、(社会保障基金が含まれる)「一般政府」に注目したのでは。
「年金は将来、国民の皆さまにお支払していかなければなりません」
鳥巣
たしかに社会保障基金は、資産、負債、両方にとれる。
財務省
年金は将来、国民の皆様にお支払していかなければいけません。
政府にとっては負債、ともいえます。
鳥巣
年金には、国民も敏感。
知人の61歳の女性は、年金を受給しているが、
「もし受給年齢引き上げ、なんて事になったら、いくらおとなしい日本人も暴動を起こすわよ」
と言っていた。
●用語解説<「中央政府」と「地方政府」の純債務> 結果、今回財務省主計局が私に回答した「国と地方を合わせた純債務」には、社会保障基金と年金特別会計は含まれていないことになります。 日本経済新聞の記事のほうが、国民にとっては納得感があるかもしれません。 今後の記述については、検討します。 |
「国内で国債を消化できる年数?難しい質問です」
鳥巣
与謝野議員だけでなく、家計の金融資産から政府債務を引いた額で、国債を国内で消化できるのは、あと何年か?を判断しようとされる学者もいる。
財務省
しかし、指標のひとつでしかない。
それ以上でも、それ以下でもない。
鳥巣
では、今の状態のままだと、国内で国債を消化できるのは、あと何年?
財務省
・・。
難しい質問です。
(次回へつづきます)
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