マジャン -畏村奇聞- 1巻2巻
カミムラ晋作
エンターブレインファミ通クリアコミックス

麻雀てのはな人生と同じだ
納得できないこともいっぱい起こる
良い待ちが悪い待ちに負けたり…
一生懸命打った人が適当に
打った人に勝てなかったり…
でもそれでいい それがいいんだ
そこで逃げたり止めたりしない
奴だけが…本当に強くなれる

WEB小説・コミックサイトのエブリスタにて、1日1話無料で読めます。

麻雀漫画といえば、近代麻雀漫画生活のいのけんさん。
二巻の帯には「このマンガがすごい!2013でも紹介!」とありますが、それもいのけんさんの所業ですね(笑)

そのいのけんさんをして、
「マジャンを読んでるっていう人がいたら0.5秒でガチ認定する」
「マジャンこそが最強の麻雀漫画なのではないかとかたまに思う」
とまで言わしめたのがこの作品。
それは読まない訳にはいきませんよね。

作者は、『サイカチ』『ベクター・ケースファイル』などの作画を担当したカミムラ晋作先生(余談ですが、『ベクター・ケースファイル』もレーベルがチャンピオンREDということで若干マイナーでしたが、良い漫画でしたね)。


主人公は、都会から人口3500人の山村・麻上村に引っ越してきた中学二年生・山里卓次。
ヨソモノである彼は、村の因習の洗礼を受けていく――

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麻上村では麻雀が「マジャン」と呼ばれ、村の掟を司る神聖な儀式であり、マガミサマという神様が信仰の対象に。
そして、マジャンの強さが男にとっては最高の名誉であり、村でのヒエラルキーを定められるというシステムになっています。
そんなマジャンを「たかが麻雀」と言ってしまったことにより、卓次は転校早々クラスメイトから指1本を賭けたマジャンを強制されます。


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村には麻雀牌を模したオブジェがあったり、学校の中には女人禁制の遊戯室があったり。
上手く、日本的な因習や奇祭などと絡めた独特の雰囲気作りが上手いです。
1巻の帯で「竜騎士07震撼」と書かれているのも納得です。

卓次は、ネットでレーティング2100になる程の基礎雀力は持っていますが、そこは普通の中学二年生。
異常な環境下で、自分の指を賭けた極限状況での麻雀など当然初めてです。
どこぞのチキンレースをして白髪になった、とても中学生とは思えない天才などと比べてはいけません。
どんな強者でも、平常心を失えば脆いのはあらゆるギャンブルに言えること。
そういった、精神面での駆け引きを含めた闘牌描写が、とても高いクオリティで描かれています。


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又、この「マジャン」の醍醐味は何と言っても変則ルール。
打つ前に、六曜とランダムで引いた点棒によってルールが決められます。
しかし、「勝負が始まったらルールの確認など神への冒瀆」として、そのルールはやりながら看破して行くことを強いられます。
変則ルール自体も面白いですし、卓次視点でそのルールがどのような物なのかを推察する楽しみも存在します。
果たして、謎のルール「バンサン」の正体とは……
2巻では、持ち点0スタートのサドンデス二人麻雀なども行われます。
闘牌自体もしっかりと練り込まれている物ですし、これはいのけんさんが絶賛するのも納得です。

ちなみに、ネタバレを気にしない方は、麻雀雑記あれこれさんのマジャンの変則麻雀ルールまとめという記事に変則ルールがまとめられているので、こちらを参照してみるのも良いかと思います。
又、『咲-Saki-』が好きな方はもし咲-Saki-のキャラがマジャンの各変則ルールで打ったらという考察記事も読み応えがありオススメです。


実際にこれらの変則ルールで麻雀を打ってみたい、という気にもさせてくれますね。
それは麻雀漫画として優れている証左であると思います。

ただ、2巻まではまだ序盤という感じで、醍醐味である変則麻雀も少ないです。
この後、どんどん面白くなっていくので、3巻以降も是非刊行されて欲しいです。
実は、この作品は1巻の時点で続刊が出ないとされており、2巻が出たことも奇跡的だったようです。
こんなに面白いのに! 勿体無い!
2巻は35話までで、現在は174話まで連載されているので、是非とも続きも単行本化して頂きたいと切に願います。

1日1話無料で読めるとはいえ、登録に一手間掛かることもあって絶対的な読者数も多くないようですが、これは万難を排して読む価値のある作品です。
麻雀漫画好きな方は是非読みましょう。


75点。