インターネットを検索していたら次のようなジョークを見つけました。


  Nothing is better than my wife. (妻よりいいものはない)
  1 Yen is better than nothing.  (1円でもないよりまし)
  Therefore, 1 Yen is better than my wife. (1円の方が妻より良い)


愛妻家であるが故に、妻が1円より劣るというパラドックスです。


日本語で考えるとこのジョークは成り立たないのですが、英語だと形式的に成立してしまいます。


形式論理上、A>B かつ B>C ならば 必ず A>C です。
もし、C=妻,B=Nothing,A=1円とし、そして ”x>y” という表現を ”xの方がyより良い” と表すものとします。


すると 

  A>B は 「1円の方がNothingより良い」
  B>C は 「Nothingの方が妻より良い」
  A>C は 「1円の方が妻よりよい」
となります。


形式論理的に、「1円の方が妻よりよい」ということになってしまいます。これはこれで正しいのです。
「A>BかつB>Cならば、必ずA>C」というのは常に正しいのです。形式論理の各記号に意味はなく、それぞれの記号にはなにを当てはめても成立します。
問題は、各記号の意味の解釈を途中で勝手に変えてはいけないということです。この場合は、"Nothing"の意味に問題がありそうです。


「Nothing is better than my wife. 」は本来 「x>妻となるXは存在しない」と解釈すべきなので、「Nothing>妻」とは全然意味が違います。
しかし、Nothingを「0円」と解釈すれば、それはそれで意味が通じます。


その場合は、
  「1円の方が0円より良い」 ( A>B ) かつ
  「0円の方が妻より良い」  ( B>C ) ならば 
  「1円の方が妻より良い」  ( A>C ) となります。 

この場合、それなりに意味が通じています。ただし、愛妻ではなく憎妻というべきでしょうが……。


御坊哲のおもいつくまま-ユニオンレイク
ユニオンレイクのカナダ雁 (シアトル)