同時接種について質問されたこと | ワクチン広場

同時接種について質問されたこと

 私は、いつも同時接種をお薦めしています。同時接種については行っていない医師、恐怖感を持って居られるパパやママは少なくありません。予防接種そのものについても反対されている人たちも居られるのは事実です。中には、全く知識不足、誤解に基づいて反対を唱えて居られる方もあります。情報をネットで得ようとすると、情報は確からしさに欠けるものから、デマ、から真摯に訴えているものまで様々です。私のブログもOne of themかもしれません。でも、小児科医が自分の医療機関や名前も公表して書いているのでそれなりの覚悟はしている積りです。
ところで、当クリニックに来られた方から受けた質問のいくつかと当方の回答を書いてみました。

Ⅰ;一度に沢山のワクチンを同時に接種しても免疫はチャンと出来るのですか?
 はい、一度に多くのワクチンを接種しても、単独に接種しても差がないと言われています。確かに、単独で接種をしても必ずしも100%の人に抗体が出来るとは限りません。だからワクチンによっては複数回接種をして、効果をあげようとしています。複数のワクチンを同時接種することで、抗体の出来方が悪くならないことは証明されています。アメリカのCDCのホームペイジ、ピンクブックには、general ruleとして、All vaccines can be administered at the same visit as all other vaccines.と書かれています。だからと言って、予め混合されているワクチン(日本では、ポリオの生ワクチンは1,2,3型が混合、DPT三種混合は破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、百日咳スピリットワクチンが混合、MRワクチンは麻疹と風疹の生ワクチンが混合、肺炎球菌ワクチンは7つの型のワクチンが混合、ヒトパピローマウイルスワクチン(子宮頸がんワクチン)は2つまたは4つの型のワクチンが混合されている)以外は、その場で混合して接種することは禁じられています。夫々のワクチンは1インチ、センチメートルでは2,5cm以上離して接種することにはなっています。私は、生後2ヶ月の方に、ワクチンデビューをお薦めしていますが、ロタウイルス生ワクチン、不活化ポリオ(個人輸入)、B型肝炎、肺炎球菌、ヒブワクチンの同時接種、3ヶ月で更にDPT三種混合ワクチンを加えてを接種されている方がたくさんいらっしゃいます。9月からの不活化ポリオが公的に接種されるようになるとポリオは3ヶ月になると思います。

Ⅱ;一度に沢山のワクチンを同時に接種しても害が増えるということはありませんか?
はい、大きな副反応が増えることはないと言えます。個々のワクチン接種でも局所の発赤、腫れ、熱感は観られます。頻度は高くはありませんが、発熱がみられることがあります。極まれに、ワクチンの成分にアレルギーがあれば、ショックをなどを起こすことが知られています。ワクチンの安定剤としてゼラチンが入っていた時代がありますが、その時代には、ゼラチンアレルギーの人がショックを起こしたことがありました。今は、ゼラチンが入っているワクチンはありません。ショックが起こることは事前に予測はできませんから、全てのワクチンを接種したあと一定の時間医療機関内に居てくださることになっています。適切な対応をすれば、アレルギーショックが起こっても命を失うことはありません。勿論、その対応が出来ない医師が予防接種に従事することは倫理的に許されないと思います。単独のワクチンでも起こることは当然ながら複数のワクチンを接種した場合でも起こりえます。その頻度が、複数にすることで増加することがないということです。最近、発熱の頻度が複数のワクチン接種者で僅かですが多くなると言う論文もでました。では、その発熱を呈した人が単独接種で行えば発熱がなかったかということが証明されているわけではありません。例えば、肺炎球菌ワクチンを他のワクチンと同時に接種した場合に発熱が見られた例数を肺炎球菌ワクチン単独100人接種した場合と比較したら前者が頻度が高いということになります。他のワクチンで発熱をみる場合がありますから、その合算された数になるからです。でも、個人で肺炎球菌でもヒブでも三種混合でも発熱がある人が同時に接種をすれば発熱は1回で済むことになります。私ども医師、世界の常識ではワクチン接種で発熱があるということは、あっても当然のこと、それよりもワクチンで予防できることの方が利益が大きいと理解しているのです。だから同時接種は危険な方法だとは考えていないのです。世界では、同時接種が常識的な医療行為なのです。どうか怖れないで下さい。

Ⅲ;今まで単独接種で予防接種を受けていたのですが途中から同時接種でも構いませんか?
はい、大丈夫です。ワクチンの種類によって接種回数がことなりますから、いつも同じ組み合わせだとは限りませんね。効率よく接種を受けられることにメリットがあるのですから、途中からスケジュールを変更なさっても何等差し支えはありません。

Ⅳ;同時接種を行った場合に、予防接種の間隔で注意が必要なことがありますか?
個々のワクチンで、ワクチンの間隔が定められています。ワクチンの効果がよりあがるように設定されているのです。それを短縮して接種はしないものです。インフルエンザワクチンは接種間隔を1~4週とされています。三種混合は3~8週とされています。若し、これを同時接種で2回行うとしたら、最低3週間はあけて行うということです。