パナソニック汐留ミュージアムで「ミケランジェロ展 ルネサンスの至宝」を観た! | とんとん・にっき

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パナソニック汐留ミュージアムで「ミケランジェロ展 ルネサンスの至宝」を観てきました。観に行ったのは、7月5日、約1ヶ月前のことでした。今回の「ミケランジェロ展」、数年前に国立西洋美術館で開催された「ミケランジェロ展―天才の軌跡」と同様、作品の主たる出所はフィレンツェの「カーサ・ブオナローティ」ということのようです。「カーサ・ブオナローティ」については、「ミケランジェロ展―天才の軌跡」にちょっと書きましたが、一部下に載せておきます。


「パッツィ家礼拝堂」のある「サンタ・クローチェ教会」には2度も訪れているので、カーサ・ブオナローティはその存在を知らなかったこともあり、まさに「北へほんの少し歩いて」まで行っていたのが悔やまれます。ミラノのスフォルツアの城へは3度行き、スフォルツァ城美術館へは2度行きましたが、ミケランジェロの未完の遺作「ロンダニーニのピエタ」にあと壁一枚というところまで肉薄しましたが、なぜか引き返してしまったたこともありました。


他の本を調べてみる余裕はないのですが、最近の本には当然の如く「カーサ・ブオナローティ」が出てきたので、僕は知らなかったので驚いたというわけです。例えば池上英洋の「神のごときミケランジェロ」(とんぼの本:2013年7月30日発行)にはカーサ・ブオナローティ所蔵の「ケンタウロスの戦い」や「階段の聖母」が当然取り上げられています。また木村長宏の中公新書「ミケランジェロ」(中公新書:2013年9月25日発行)にも、「ケンタウロスとラピタイ族の戦い」と「階段の聖母」は、ミケランジェロの初期の傑作として取り上げられています。ケンタウロスは群像浮彫(レリーフ)で「高浮彫(オ・ルリエフ)」、もう一方の「階段の聖母」は「浅浮彫(パ・ルリエフ)」と、木村は解説しています。

国立西洋美術館で「システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡」を観た!


僕の場合ですが、建築をやっているので、ローマやフィレンツェへ行くのはミケランジェロの作品を観ることと同義です。とは、ちょっとオーバーですが、上に書いたようにミケランジェロの作品で観られなかったものも多々ありますが、同様に観てきたものも多々あります。


今回の「ミケランジェロ展」、「建築家としてのミケランジェロの全貌を紹介!ミケランジェロの建築的偉業を本格的に紹介する展覧会は日本で初めてです。」とあります。これに即して、観たことのあるもの、ないものを、以下に列記してみます。


システィーナ礼拝堂へは2度行ってるので、礼拝堂の天井画も礼拝堂の壁画も観ています。天井画の修復ドキュメントを記した青木昭著「修復士とミケランジェロとシスティーナの闇」(日本テレビ放送網発行、2001年4月20日初版)も入手し、読んだこともあります。ローマの「サン・ピエトロ大聖堂」、いろんな人が関わっているのでミケランジェロがどの部分を設計したのか、詳しいことはわかりません。システィーナ礼拝堂と繋がっています。それにしても驚くほど大きな建築です。建築よりも、ミケランジェロの若き日の傑作「ピエタ」があることでも知られています。


サン・ロレンツォ聖堂のファサード計画は、何年か前に住民投票にかけるという新聞記事をブログに掲載したことがあります。話は飛びますが、最初にフィレンツェに行ったときに見逃したものとして、ブルネレスキの「旧聖器室」と「ラウレンツィアーナ図書館」があり、10年前(2度目)にフィレンツェに行ったときにサン・ロレンツォ聖堂を訪れました。ブルネレスキの「旧聖具室」は観ることができましたが、「ラウレンツィアーナ図書館」は修復中という張り紙があって、図書館の入口まで行きましたが、扉ひとつで中へは入れませんでした。もちろん、最初にフィレンツェへ行ったときに、ミケランジェロの「サン・ロレンツォ聖堂新聖具室」は観ています。言い訳になりますが、これらはみんな繋がっているのですが、なかなか一度に観ることができませんでした。


「カンピドーリオの丘の広場計画」、磯崎新が「つくばセンタービル」の広場でカンピド―リオ広場を引用したのはよく知られています。観に行ったのは最初にローマへ行ったときでした。「フォロ・ロマーノ」の近くにありました。この広場は、ミケランジェロの都市計画ということで、よく引用されます。広場の中心に置かれた「マルクス・アウレリウスの騎馬像」は、僕が行ったときは修復中で現地には置かれていませんでした。話は変わりますが、今回の展覧会の特別展示コーナーには、ちょっと猪突に、磯崎新の「つくばセンタービル 廃墟」が展示してありました。


ミケランジェロ最後の作品「ポルタ・ピア」、近いところまで行ったのですが、残念ながら時間切れで引き返したことがありました。そうそう、ローマの「ファルネーゼ宮殿」、ローマの街中を一人で歩いてやっと見つけました。どうも最初は裏側へ出たようで、ぐるりと廻って広場側へ出た時、そのファサードを観て感激しました。現在フランス大使館が使っている、なかなか端正なルネサンス建築ですが、ミケランジェロは2階から上部を設計したと言われています。以下は「ファルネーゼ宮殿」の別項です。


僕はローマには3回行きました。そのうちの一回、カンポ・デ・フィオーリの前にある「ファルネーゼ宮」を一人で訪ねました。この建築は、枢機卿アレッサンドロ・ファルネーゼが、1515年にアントニオ・ダ・サンガッロにファルネーゼ家の威信を示すために、宮殿を建てることを依頼したことに始まります。枢機卿は1534年に法王に選ばれ、アントニオの初めの案は、法王にふさわしいものへと変更する必要に迫られます。軒先のデザインが決まっていないため、競技設計により選ばれたのはミケランジェロの案でした。1546年にアントニオは没した後に、ミケランジェロがこのファルネーゼ宮の建築家になりました。従って、3階建てのこの建築、1層目はサンガッロ、2層目はサンガッロとミケランジェロ、3層目と大きな軒先はミケランジェロのデザインとなっています。ローマのルネサンス建築というと、このファルネーゼ宮が真っ先にあげられ、現在はフランス大使館として使われていますが、僕はそのために観に行ったというわけです。僕は実は広場側から先に行ったのではなく、先に行ったのはテヴェレ河側にあるの庭園の方から行ったので、なかなかこの建築が見つからなくて大変な思いをしました。

国立西洋美術館で「コロー 光と追憶の変奏曲」展を観た!


手元にある「日本建築宣言文集」(彰国社:昭和48年11月10日第1版発行)には、丹下健三の「MICHELANGELO頌」という10数ページの論文があります。羽仁五郎の「ミケルアンヂェロ」(岩波新書:1968年4月19日発行)もずいぶんむかしに読みました。そういえば、思い出しました、チャールトン・ヘストンがミケランジェロに扮した「華麗なる激情」(キャロル・リード監督:1964年)、これはユリウス二世とミケランジェロの人間ドラマ、システィーナ礼拝堂の天井画を描き上げるまでを題材にした作品、必見です。


木下長宏の「ミケランジェロ」(中公新書:2013年9月25日発行)に、以下のようにあります。

ミケランジェロの建築は、すべて未完成である。他者との合作、つまり他者が作った部分を改築する仕事(そのほとんどがそうだが、たとえばサン・ロレンツォ聖堂、カンピド―リオ広場)。自分が構想設計したものを他者に委ねてしまわねば完成しなかったり(サン・ピエトロ大聖堂)、いろんな事情で、最初の構想が変更していったもの(ユリウス二世墓廟)。素描や絵画で描いただけだったり(システィーナ天井フレスコ画、フィレンツェの要塞城門スケッチ、サン・ロレンツォ聖堂ファサード)、木製のモデルをつくった段階で止まっていたもの(サン・ロレンツォ聖堂ファサード)、・・・と、構想・設計・建築という工程を一貫してミケランジェロが処理し完成させた建築物はない。なお、設計者や建築主任が設計途中で亡くなり、別の人に継承されていくというのは、中世やルネサンスでは常時あることである。


今回の展覧会のキャッチコピーは、以下の通りです。


天才なる者を信じない人、

天才とはどんなものかを知らない人は、

ミケランジェロを見るがいい。

ロマン・ロラン


展覧会の見どころは、以下の通りです。


1.システィーナ礼拝堂の下絵を始め、ミケランジェロの真筆の素描35点が出品。自らの家柄に誇りを持っていたミケランジェロの邸宅は子孫に受け継がれ、現在はゆかりの資料を公開する美術館となっています。そのカーサ・ブオナローティが所蔵する真筆の素描が多数展示されます。

2.建築家としてのミケランジェロの全貌を紹介!ミケランジェロの建築的偉業を本格的に紹介する展覧会は日本で初めてです。

3.ルネサンス期イタリアの建築が分かるフィリッポ・ブルネレスキに始まり、ドナート・ブラマンテ、ラファエロ、アントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ ジョーヴァネといったミケランジェロの作品とかかわりのあったルネサンス期イタリアの建築家たちを通して、ルネサンス期の建築が分かります。


展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 ミケランジェロ・ブオナローティ
第2章 ミケランジェロとシスティーナ礼拝堂
第3章 建築家ミケランジェロ



第1章 ミケランジェロ・ブオナローティ



第2章 ミケランジェロとシスティーナ礼拝堂




第3章 建築家ミケランジェロ



「ミケランジェロ展 ルネサンスの至宝」

イタリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロ・ブオナローティ(1475‐1564)は、彫刻、絵画、建築という視覚芸術の3つの領域において、他の追随をゆるさぬ卓越した人体表現と深い精神性を示しました。人々は彼を「神のごときミケランジェロ」と称えました。
ダヴィデ像に代表されるような、石の塊のなかから彫り出された完璧なまでの造形、そしてヴァチカン宮殿のなかのシスティーナ礼拝堂に描いた史上最大の天井画は、まさに超人技といえましょう。
その葛藤に満ちた活躍の舞台となったフィレンツェとローマには彼が手がけた建築が、今も都市の景観を形作っています。フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂新聖具室や附属のラウレンツィアーナ図書館、ローマのカンピドリオ広場やサン・ピエトロ大聖堂ドームの設計の仕事には、同時代の人々を驚嘆させた、新しい装飾の表現形式や空間の取り扱いが不滅の輝きを放っています。
本展はカーサ・ブオナローティの所蔵する作品を中心に、ミケランジェロ本人による真筆の素描および書簡約35点を含めた作品およそ70点を展観いたします。加えて建築模型や写真、映像も用いながらミケランジェロの建築に光をあてます。そして、特別コーナーでは日本を代表する建築家たちが、この巨匠に寄せた畏敬の念を、400年後に自らの作品のなかでどのように展開したかごらんいただきます。

「パナソニック汐留ミュージアム」ホームページ


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木下長宏の「ミケランジェロ」を読んだ!
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ミケランジェロに関する手持ちの本


とんとん・にっき-mike 「ミケランジェロ」

中公新書

発行:2013年9月25日

著者:木下長宏

発行所:中央公論新社





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「神のごときミケランジェロ」
とんぼの本

発行:2013年7月30日

著者:池上英洋

発行所:株式会社新潮社




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「フィレンツェ美術散歩」
とんぼの本

発行:1991年1月30日

著者:宮下孝晴、佐藤幸三他

発行所:株式会社新潮社

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「イタリア ルネサンスの旅」
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、
ラファエッロ 美術三国志

著者:田中穣

発行:1996年12月1日初版発行

発行所:JTB日本交通公社出版事業局





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建築巡礼5「ミケランジェロのローマ」

昭和63年8月30日発行

著者:長尾重武

発行所:丸善株式会社



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「ミケランジェロの建築」

著者:ジェームズ・S・アッカーマン

翻訳者:中森義宗

発行:昭和51年8月10日第1版発行

発行所:株式会社彰国社