上野の森美術館で「肉筆浮世絵 美の競艶」を観た! | とんとん・にっき

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上野の森美術館で「肉筆浮世絵 美の競艶」を観てきました。観に行ったのは会期末のせまる1月15日のことでした。さすがに会場はたくさんの人で混雑していました。


アメリカの収集家ロジャー・ウェストンのコレクションの里返り展で、すべてが初公開です。展示されている約130点は、一点物の肉筆浮世絵です。髪の生え際や唇の紅のぼかし、着物の文様など、女性の美しさを引き立てる繊細な表現は目を見張ります。どれもこれも素晴らしい作品ばかりなのですが、つたない僕の選択眼で目に止まったものを、下に載せておきます。


話題性のあるものとしては、美人と猫の組み合わせが面白い葛飾北斎の「美人愛猫図」、中国の伝説上の仙女を描いた喜多川歌麿の「西王母図」などが挙げられます。第6章上方の復活で取り上げられた祇園井特の「文読む芸者と三味線を持つ芸者」は、唇は黒く塗られ、二つの絵がバランスが取れているような取れていないような、妙な感じがします。


僕が特に興味を持ったのは、歌川豊国の「時世粧百姿図」です。豊国が文化13年(1816)に描いたもので全24図あり、上は官女や御殿女中から、下は最下級の遊女である夜鷹、船饅頭まで描かれています。身分、階級、職業などによって着物や髪型、化粧なども違って描きわけられています。もちろん、色彩の美しさは肉筆画ならではです。さまざまな階層の女性たちを描き集めた、豪華絢爛な肉筆画帖です。


最後に出てくるのは河鍋暁斎の「一休禅師地獄大夫図」です。地獄大夫は、一休宗純が教えを授け、また好んだとされる堺の遊女です。自ら地獄と名乗り、地獄を描いた着物をまとっていたというが、この図では珊瑚や吉祥文、七福神などが着物に描かれています。大夫の周りを一休が骸骨とともに踊ります。暁斎の傑作の一つで、弟子であったジョサイア・コンドルが所蔵していたとも言われています。


展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 上方で展開した浮世の絵

第2章 浮世絵の確立、江戸での開花

第3章 浮世絵諸画派の確立と京都西川祐信の活動

第4章 錦絵の完成から黄金時代

第5章 百花繚乱・幕末の浮世絵界

第6章 上方の復活

第7章 近代の中で



第1章 上方で展開した浮世の絵



第2章 浮世絵の確立、江戸での開花



第3章 浮世絵諸画派の確立と京都西川祐信の活動



第4章 錦絵の完成から黄金時代



第5章 百花繚乱・幕末の浮世絵界



第6章 上方の復活



第7章 近代の中で



「肉筆浮世絵 美の競艶」

アメリカ・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏所蔵の肉筆浮世絵は、個人コレクションとしては世界有数の規模と質を誇っています。本展では、その千点以上のコレクションの中から約130点の作品をご紹介します。勝川春章、喜多川歌麿、歌川豊国、葛飾北斎、河鍋暁斎など50人を超える絵師たちによる多彩な作品を通して、江戸初期から明治にいたるまでの肉筆浮世絵の流れを知ることができる、またとない機会です。量産される浮世絵版画に対して、一点物の肉筆浮世絵は大変貴重であり、大名や豪商からの注文を受けて描かれることもありました。絵師たちが腕をふるった肉筆浮世絵には、女性の髪の生え際や華麗な衣装の文様まで精緻に描かれている作品が多く見られます。ウェストンコレクションの優品が日本に里帰りし初公開される本展は、東京会場が最後となります。華やかな美人たちの競艶をぜひお楽しみください。

「上野の森美術館」ホームページ

niku11 シカゴウェストンコレクション
「肉筆浮世絵 美の競艶」
2015年4月20日初版第1刷発行

監修:永田生慈

企画・編集協力:日本経済新聞社

編集・校正:内田和浩・小川智史(内田事務所)

編集・発行:小学館スクウェア