坂本一成の「代田の町家」を見学した! | とんとん・にっき

坂本一成の「代田の町家」を見学した!


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「住宅遺産トラスト」主催の「代田の町家」見学会へ行って来ました。


設計は坂本一成、僕は彼の展覧会を見たのは二度、住宅を見るのは今回が初めてのことです。「代田の町家」は、1976年に建てられた住宅です。なんと、その住宅が建つ土地が売りに出されているとのこと、これには驚きました。あくまでも土地を売りに出しているのであり、単に「上物あり」とだけ注意書きがあるだけでのようです。たしかに住宅は個人の所有物、その継承は難しいものがあります。


「代田の町家」、図面上では「外室1」と名付けられた中庭の部分と、「主室」と名付けられた居間・食堂の部分の、空間のつながりがよく分かりませんでした。行ってみて分かったことは、この住宅の一番の特徴は、吹き抜けのある主室と、中庭の外室1と、駐車場と玄関へのアプローチである外室2との連続したつながりです。実際に内部へ入ってみると、各部屋が思っていた以上に大きく、光が満ち溢れた大らかな住宅となっています。和室もあり、収納も十分にあります。


以前購入した図録には、以下のようにあります。

「(閉じた箱)をいかに開くか」にテーマを展開させた作品。階層性をもって部屋が重なるのではなく、部屋が並列につながる隣接関係の空間配置を採っている。部屋の性格は用途ではなく部屋どうしの関係から捉えられており、室名には主室、室、間室などの名前が与えられた。内側に食い込んだ中庭も「外室」である。外観には切妻屋根の〈家型〉が登場。下屋のシルエットを少しだけ張り出させて、ファサードの虚構性を感じ取らせている。


多木浩二は「形式の概念―建築と意味の問題」と題して、以下のように書いています。

「代田の町家」は不思議な表情をもっている。一見何気なく、おだやかでさえありながら、決して素朴ではない。非常に具体的につくられた住宅のように見えながら、むしろ、驚くほど抽象的である。日常性に対する配慮は細かになされているが、この確かさの下に発見するのは、この建築をなりたたせている、ある種の強靱な否定の身振りである。(「新建築」1976年11月)


長島明夫は「《代田の町家》の危機」と題して、以下のように書いています。

坂本一成の《代田の町家》(1976)が建つ土地が売りに出されている。家角8700万円、土地面積130.63平米、坪単価220.17万円・・・。情報では売り物はあくまで世田谷区代田3丁目の土地であり、建築に関しては現況の注意書きとして「上物有り」とだけ記されている。とはいえその上物は築40年近くになっていて、もちろんそれなりに古びてきてはいるものの、竣工当時の床暖房はいまだ現役であり、住むことに大きな障害はないように思われる。住み続けてきた住人がこの家を離れるのは、また別の人生の理由によるようだ。





この見学会を主催した「一般社団法人住宅遺産トラスト」とは?

さまざまな事情により、貴重な住宅建築がひっそりとその姿を消しつつあります。どんなに優れた建築であっても、個人の所有である点で住宅の継承はきわめて難しいテーマです。しかし、優れた住宅を失うことは、貴重な技術や空間を失うにとどまらずそこで育まれ続けられてきた住まい方、地域の記憶景観をも失うことでもあるでしょう。私たちは、こうした価値ある住宅建築とその環境を「住宅遺産」と呼びます。「住宅遺産」を愛し、その継承に関心を寄せる多くの方々とともに、これを後世に継承するための仕組みをつくることを目指して、私たちは「一般社団法人住宅遺産トラスト」を設立いたしました。皆様の力に支えられて「住宅遺産」の未来を拓く一歩となることを目指します。


「一般社団法人 住宅遺産トラスト」


「代田の町家」見学会+坂本一成レクチャーご案内


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とんとん・にっき-saka4 「坂本一成 住宅めぐり」

図録

2013年5月17日発行

監修:坂本一成

制作・編集:高木伸哉+磯達男+山道雄太

    /株式会社フリックスタジオ

発行所:株式会社フリックスタジオ




saka1 「坂本一成建築展」

図録

「坂本一成/住宅」

2008年10月2日初版

編集:新建築社

    東京工大坂本一成研究室

発行所:新建築社