赤瀬川原平の「個人美術館の愉しみ」を読んだ! | とんとん・にっき

赤瀬川原平の「個人美術館の愉しみ」を読んだ!

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いつか、島根県へ行くことがあったら、庭がきれいな「足立美術館」へ行ってみたいと思ってました。田んぼの中にあるという、高松伸が設計した「植田正治写真美術館」も、一度は行ってみったいと思ってました。京都に行ったら、「何必館・京都現代美術館」や、「細見美術館」へは、必ず行こうと思ってました。真鶴の「中川一政美術館」へは必ず行きたいと思ってました。埼玉県蕨市にある「河鍋暁斎記念美術館」にも、行ってみたいと思ってました。藤森輝信の設計した「秋野不矩美術館」にも行ってみたい。まだまだ行ってみたい美術館は、たくさんあります。


赤瀬川原平の「個人美術館の愉しみ」(光文社新書:2011年10月20日初版第1刷発行)を読みました。赤瀬川原平の著作は、ずいぶん昔から、よく読んできました。ざっと思い出すままに上げると、「東京ミキサー計画ハイレッド・センター」、「超芸術トマソン」、「新解さんの謎」、「老人力」、「ルーブル美術館の楽しみ方」、「我が輩は施主である」、等々があります。尾辻克彦のペンネームで、「文學界」1980年12月号に発表された短編「父が消えた」で、1981年、第84回芥川賞を受賞します。藤森輝信、南伸坊らとの「路上観察学会」もよく知られており、藤森の建築を手伝う「縄文建築団」もあります。自邸の「ニラハウス」は藤森輝信の設計によるもの。山下裕二との「日本美術応援団」もあります。


本のカバー裏には、以下のようにあります。


個人美術館とは、一人の作家だけの美術館と、一人のコレクターによる美術館と、二通りの意味を持つ。秋野不矩、植田正治、小磯良平、ベルナール・ビュフェ、熊谷守一、香月泰男、河鍋暁斎、イサム・ノグチ、安野光雅、猪熊弦一郎、杉本健吉etc.。個人美術館の愉しみは、近現代を彩る芸術家たちの足跡を眺められるjこと。もう一つの愉しみは、その作品の山を築くことになったコレクターの、熱情を見ること。大金を投げ出して手に入れた人の熱情が並ぶと、その熱を通して見えてくるものがある。日本にある、魅力ある個人美術館を厳選。赤瀬川さんが紡ぐ46の物語。


「あとがき」によると、東海道新幹線のグリーン車には、座席の前の椅子の背に「ひととき」という雑誌が挟んである。この本はその雑誌に「個人美術館もにがたり」として4年近く連載していたものを、まとめたものです。出てくる46の美術館のうち、僕が行ったことのある美術館は11カ所、半数以上はあると思っていましたが、意外に少ない、やや驚きました。まあ、数ではありませんから、それはそれでいいのですが・・・。どうして46(45)なのかはわかりません(番外編として存在していない谷内六郎美術館が書かれているので、実在する美術館は45)。もっとたくさんあるように思いますので。たとえば、長野にある「水野美術館」、あれはいい美術館でした。


僕の場合、仕事柄、美術館と設計者の関係で見ることが多いのですが、面白かったのは秋野不矩美術館の項。天竜市が秋野不矩美術館を建てることになり、設計を藤森輝信に頼んだ。美術館がほぼ出来上がった頃不矩さんが見に来た。藤森が入口から主要展示室までを案内した。藤森が展示室の中心の一番大きな壁面を指して、「ここが『渡河』を展示する場所です」というと、不矩さんは「そうですか」とだけ言ったそうです。でもその日、京都に帰ると、俄然スケッチを始めて、大作「オリエッサの寺院」を描き始めたという。藤森が用意した横12メートルの壁面には『渡河』ではやや小さいと思ったからだという。「画家の意志とエネルギーが、最後まで燃え続けていた」と赤瀬川は書いています。


また、僕の興味をひかれたのは、群馬県桐生市にある「大川美術館」。松本竣介の展覧会があるというので、つい最近、知った美術館です。ある会社の社員寮だった建物を改修して美術館にしたという。日本の近代美術史に出てくる画家の作品が何かしら入っている。西洋絵画も充実している。が、しかし、美術館の柱になっているのが松本竣介の作品だという。戦後すぐに36歳で夭折した画家です。この美術館の改修を手がけた建築家は、松本竣介の次男、松本莞さんだという。美術館の建物は5階建てになっているという。ぜひとも訪れて見たい美術館です。